えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第100話 コタツでくつろぐマリーの会 ~クリスマスはもうそこまで~
第100話 コタツでくつろぐマリーの会 ~クリスマスはもうそこまで~
ついにコタツが届いた。
ありがとう、ヤマト運輸のおじさんたち。
こんなデカいコタツを送料無料で届けてくれるなんて、ヨドバシカメラもありがとう。
現品処分とはいえ、8人用のコタツが布団付きで1万とちょっと!
最高のタイミングでウェブサイトを開いた俺の豪運に惚れ惚れしちゃう!!
「おじさん! 柿ください! 柿!!」
「へいへい」
「さーせん! 麦ティーのおかわり、うぃっすか!」
「わたしのスマホも取ってー。充電終わったっぽいんだよ」
「ぬくぬくですね。暖かいですし。これがコタツ」
「もし! 誰かある!! 大至急、本家にコタツを量産させてください!!」
「なんで全員が揃ってうちのコタツに入ってんの?」
遊びに来てくれたのは良いけど、俺をドローン扱いしてお遣いマンにするのヤメろよ!!
とりあえず、柿を6つほど剥いて皿に盛り付け、麦茶とコップも人数分用意して、俺の充電器に刺さってる新菜のスマホを回収して、小春ちゃんに「ゆっくりしていってね!!」と笑顔を見せて、天井から降って来た黒服さんから1万もらった。
「お前らな。全員が干物女の素質見せてくるとかどういう事!? ここは俺に嫁力を見せるところじゃないの!? 自分で言ってて、なにいってんだこいつって思うけども!! 誰ひとりとしてコタツから出てないじゃないか! もう2時間!!」
「だってー。せっかくぬくぬくしてるのに、外に出る意味ってありますー?」
「おじさんは君らの指示に従って10分に1度はコタツから離脱してるんだが!!」
「秀亀さん! ウチが秀亀さんの献身に報いる最高のプランニングを差し上げニングするっすよ! もう、ビンビン物語確定っす!!」
「聞きたくねぇな!! 桃さんはね、2人きりの時が1番いい子なの! 群れを成すと途端にダメの一番槍になるんだもん!! そして今、まさに群れになってる!!」
「お、おうふ……。口説かれてぃーんすけど。マジすか。ウチ、マンツーマンで真価発揮する、ディフェンスに定評のあるピーチだったんすか」
「そうだよ。桃さんは常にマッチアップして欲しい。で? 何の話だっけ?」
桃さんがピンと人差し指を立てて自信満々に言った。
「今! コタツの中はワンダーランドパラダイスっす!! ささっ! 顔を突っ込んで堪能するとうぃーすよ! 皆さん、足を自然な感じで開いてくだしぃー!!」
もう俺の提唱した仮説が秒で立証されてるんだよな!!
バカだなぁ! レアぴっぴ!! 結構可愛いバカだなぁ!!
小春ちゃんが控えめに手を挙げた。
そうだ、言ってやれ! バカな年上女子に言ってやれ!!
「すみません……。私、今日レギンス穿いて来てしまいました……」
違う、そうじゃない。こはるん、そうじゃない。
「あっ! ごめん、秀亀! わたしなんかジーパンだった! チラる隙もないや!」
「もえもえはスカートですよ、小松さん。ロングスカートですので、至急ウエストを支点に巻きあげますね」
この子たちはそんなしょうもないネタをどこで覚えてくるの?
俺が知らないだけで、日本の性教育ってエンターテインメントに振り始めてる?
例によって茉莉子だけ沈黙してるパターン!
これ、絶対に「あたし短パンですけど! 今の間に脱ぎました!!」とか言い出すな!!
(おじさんのばか)
声が! 頭の中に直接響く声が、弱弱しい!!
なんか既視感があるぞ、これ!!
(おトイレに行きたいんですよ、あたし。もう30分前から。柿食べたら、なんかトドメ刺されたっぽいです。女子に恥ずかしい思いさせて、今どんな気持ちですか)
バカで可愛いなって感想しかないけど!?
柿食ったらトイレ近くなるよって話、俺さ、一昨日したよね?
と言うか、その話だと柿食う前からトイレ我慢してるじゃん。
それなのに平然とみんなの雑談に混じってた胆力に関しては俺、ちょっと尊敬してる。
(あ゛っ)
行けよ! 早く!!
嘘だろ、お前!! コタツとトイレを天秤にかけて、しかも結構いい勝負してんの!?
「うぐぐぐぐっ! トイレに行ってきます!! あたしの場所取らないでくださいね!! そこ、良い感じに茉莉子ゾーンとして仕上がっているので!!」
うちのバカな子がやっとトイレに旅立って行った。
「うぃっす。ぼっち警察に報告っす。茉莉子さんがついに茉莉子って言い出してぃーんすけど。これはどうフォローしたらうぃーすか?」
「とりあえず、世を忍ぶ仮の名前が出ちゃってるぜ! って感じで、話を合わせてあげとこうか。まりっぺ、学校で上手くやってんのかな?」
「あーね。それマジ気になりまくりまクリスティーっすね。元お嬢の群れで過ごしてたウチの私見だと、周囲のお嬢たちって外敵に敏感なはずなんすけど」
「レアぴっぴは外敵なんかじゃないぜ!! わたしのズッ友だ!! たまたま学校が合わなかっただけだ!! わたしは大学が合ってないけど!!」
「新菜さん!! パナップっす! ボインと器は比例するんすね!!」
「おうよ!! レアぴっぴ! 早く入学しておいで! 秀亀が休むとぼっち警察がぼっちになるんだぜ!!」
茉莉子の話題が終わりやがった!!
いや、まあそれだけ茉莉子がみんなに馴染んだってことだ。
随分と友達も増えて、御亀村から出て来た時はどうなるかと思ったけども。
「もえもえ先輩。ぬくぬくって擬音ですか?」
「こはるるーさんは1年生ですから習っていないんですね。ぬくぬくは大人の隠語です。3年生の保健体育で習います」
「そ、そうだったんですか……! 私、さっき言っちゃってました……! はしたない!!」
「いえ、良いんですよ。こはるるーさん。大人の階段を上るのはいつも突然です」
副詞だよ!!
おすまし顔で嘘教えるんじゃないよ、もえもえ!!
君も大概なバカだなぁ! クール系バカお嬢様だなぁ! 割と可愛いなぁ!!
「ただいまですー! おじさん!!」
「いじってないぞ。茉莉子ゾーン」
「違いますよぉー。あのですね! 芳香剤がひっくり返りました!! 良い感じにラベンダー畑の中にいるみたいな状態ができてます!!」
ちょっとトイレでラベンダー刈り取って来るわ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
トイレの掃除をして戻ると、俺の座っていた場所に新しい柿と麦茶が置いてあった。
「おつっす! 柿、ずる剥けにしといたっす!」
「マジか! ありがとう! 桃さん、黙ってたらもう完璧に良妻なのに!!」
「麦茶はね、わたしの飲みかけをプレゼントだぜー」
「いや、新しいのくれよ!」
「なくなったよ?」
「くそっ! 誰も補充してくれない!! 台所の棚の左から2番目にティーパック入ってるってみんな知ってるだろ!!」
「おじさん! ティーバックってなんですか!!」
「尻に食い込むパンツだよ!! そして俺が話題にしてるのは麦茶出してくれる方!!」
「もえもえ先輩。お尻に食い込むことで一体何が起きるのでしょう?」
「とても開放的な気持ちになれます。そして解放されます。ダブルミーニングですね」
よく知らんけど、多分それは合ってる気がする!!
コタツに入ってダラダラする季節が来たという事は、そろそろクリスマスとやらが呼んでないのにやって来るということで。
俺は男として、何かをやらなければならない気が少しだけしている。
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