えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第99話 柿をもらってテンションマックスになる田舎娘なマリーさん ~ご令嬢がそろそろ消失寸前~
第99話 柿をもらってテンションマックスになる田舎娘なマリーさん ~ご令嬢がそろそろ消失寸前~
季節は11月へ。
もう朝晩が冷え込むどころか、普通に寒い。
我が家ではとっくに石油ストーブとファンヒーターが稼働中。
茉莉子が寒がりなので、これは仕方がない。
この冬の暖房費、すっげぇことになりそう。
「おじさぁぁん……。コタツっていつ来るんですかぁ?」
「んー。まだ発送準備中の表示が変わってないな。なにせ、限定特価の目玉商品だったからなー。もしかすると、タッチの差で品切れになってるのかもしれん」
今はスマホがあればコタツが注文できてしまう時代。
免許はあるが車がないので、近くのホームセンターとかでコタツを買うと俺がリング抱えて歩いて来る戸愚呂弟みたいな絵面でご近所に新しい姿を披露することになってしまう。
「コタツが恋しいですぅー!! ストーブはダメです!!」
「そうだな! 密着し過ぎて、喜津音女学院の制服のスカート焦がしたもんな!! あれはマジで泣けた!! ねぇ、まりっぺさ。君のスカート買うの、何回目だと思う?」
「だ、だって! 寒かったんですもん!! ファンヒーターは当たり判定が厳しいんですよー! しかも、くっ付いてたらエラーとか言って止まりますし! 壊れてるんじゃないですか!?」
「正常だよ!! 正常に安全装置が働いてるんだよ!! 危ないからね!!」
御亀村は山の中。
標高が高いため、11月中旬になれば雪もガンガン降る。
そんな環境で育った俺は比較的寒さに耐性があるため、冬は警備員のバイトなどで大活躍できる稼ぎ時。
それなのに、茉莉子は超のつく寒がり。
最近は朝、この子を起こすだけで1時間はかかる。
すげぇ力でベッドにしがみついて、引きはがそうとしたら腰痛めたからね!!
「おじさんに胸を鷲掴みにされました」
「そうだな! 腹も尻も肩も鷲掴んだよ!? 掴めるところは全部掴んだ!! 最終的に、腹が一番持ちやすかった!! 遅刻してないのが奇跡みたいに思うなよ!? ただの努力だ! 俺の!!」
最近は午後6時でも外は暗くなる。
吐く息は白くなるし、冬が来たんだなと実感させられる。
早いもので、茉莉子と同居を始めてもう半年以上が過ぎたってことか。
と、感慨に浸っていたら、呼び鈴が鳴った。
「おじさん!! ヨドバシカメラでは!!」
「いや、発送準備中のままだってば。はーい」
丸岡先生がいらっしゃった。
「やあやあ! 親戚から柿をもらってねー! ものっすごい量! 今、その辺を配って歩いているんだよ。小松くん、今は茉莉子ちゃんもいるから結構食べるでしょ? 箱いっぱい置いとくから! じゃ、次の家に行くよ!!」
挨拶もそこそこに段ボール箱いっぱいの柿をおすそ分けしてくれた丸岡先生。
そういえば、毎年この時期になると自治会のテリトリーで柿配りの領域展開してるなぁ。
「残念だったな。茉莉子。柿が来た」
「柿ですか!? 柿!! 柿が来たぁー!!」
御亀村では柿の木が数えきれないほど生えており、渋柿は干して、普通の柿は気が向いたら適当にもぎとって食うのが習わし。
小松茉莉子。15歳。
特技は柿を干すこと。
そして、柿を食べる事。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほあああー!! これは良い柿ですよ! 艶が違います!! 昨日、桃さんがしてた見せブラと同じくらい鮮やかな良い柿です!!」
「大興奮だな」
「もちろんですとも!! あたし、柿って大好きなんです! 知ってる癖にー!! そだ! あたしも柿とお揃いの下着を買って来ましょう! おじさん! お金ください!!」
「ダメだ! お前! 喜津音女学院のスカート買わなきゃならんのだぞ! 小春ちゃんにスペア借りたらサイズオーバー過ぎて穿けないし!! 萌乃さんがいて良かったわ!!」
ちなみに小春ちゃんのスカートはファスナーがぶっ壊れた。
謝罪しに行ったら「いえいえ! 良いんです! そっかぁ! 私とマリーちゃん、こんなところに活路がありましたか! ふふふっ!!」と上機嫌で、お土産に漬物もらった。
「おじさん! ひん剥いてください!!」
「言い方が酷いな! 分かった、待ってろ」
猫がマタタビを見つけたみたいな興奮っぷりの茉莉子さん。
これが可愛いんだ! うちのまりっぺ!!
柿くらいね、いくらでもひん剥いちゃう!!
「ほれー。剥けたぞー」
「はむっ! はむっ! はむっ!! なるほど! 固めのタイプです! そして甘さは控えめな子ですね! ですが、ジューシーなお汁出す子です!! 小松家公認の子にしましょう!! はい、次の子をひん剥いてください!!」
晩飯前に柿を食いまくるのを叱るべきなのか。
それとも、晩飯食いまくるよりもカロリー低そうだし、敢えて食わせるべきなのか。
なんか久しぶりにハムスターマリーさんを見て、俺もテンションが上がってしまったので、気付いたら柿を7つ食わせてしまっていた。
よく食えるな、同じものをそんなに。
「あ! おじさん!!」
「さすがにもうヤメとけ!! 柿って確かカリウムだかが多くて利尿作用あるから! 夜中にトイレ行きたくなるぞ!!」
「まーた女子に向かっておトイレの話をするんですからー。ちーがーいーまーすー!!」
「おう。マジか。じゃあ、何だった?」
「ブラウスに柿汁がぶしゃーしてるんですけど! 気付きませんでした!!」
「マジかよ!! 最悪じゃねぇか!! だから帰ったらすぐに着替えなさいって言ってるでしょう!! 寒いですー! とか言って、風呂入るまで部屋着にならないからぁ!!」
ちなみに、喜津音女学院の指定ブラウスは俺のファミレスの日給より高い。
仕方がないので晩飯を後にして、茉莉子を風呂に叩き込む。
俺はブラウスの染み抜きにチャレンジしたが、柿はシミ汚れ界の中でも強者で知られており、気付いた時には黒ずんでいる悪魔的シミ。
頑張って落としても、薄くなるだけで心霊写真みたいに残り続ける。
漂白剤にぶち込みまくると今度は服の生地が傷む。
(んふふー。分かってるんですよー? さてはおじさん! 茉莉子の脱ぎたてのブラウスを必死でいじっていますね!! やらしー!!)
必死でいじっとるわい!!
何なら匂いも嗅いでるよ!!
(えっ。そこまでは想定していませんでした……。おじさん、犬になったんですか?)
洗面所の電球が切れてて暗いの!
被害の実態把握のためには、もう嗅覚に頼るしかないの!!
(あのー。おじさん?)
なによ!!
(今の時代に電球って、逆に浪費してませんか? いい加減にLEDに変えましょうよー)
はまらねぇんだよ! 古い電球しか!!
ばあちゃんに文句言ったら「ヒジキくん? そうやって古いものを否定するのはとっても気持ちの良くない事なのよ? くぅー!! スマホ3台持ちでソシャゲのイベント周回、つれぇー!!」とか、もう反論が無意味な事だけは分かる返答を頂戴した。
「あ。おじさん。まだいたんですか」
「普通に裸で出てくんな」
「寒い! 脱衣所が寒いと、バーニングアタックとか言うヤツになるんですよ!!」
「ヒートショックな!! 良いから服を着なさい!!」
「用意するの忘れました!!」
「くそ! 取って来る!!」
「あー。おじさんが! 女子高生の下着を収納した引き出しに手を突っ込んで、自分好みのものをあたしに着せようとしてきますー!!」
柿のせいでずっとテンションの高い茉莉子。
それは可愛くて良いのだが、ブラウスまでお亡くなりになった。
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