えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第98話 ひできのかんがえたさいきょうのくりすます ~全否定されました~
第98話 ひできのかんがえたさいきょうのくりすます ~全否定されました~
みんなが帰って行ったので、俺は食器を洗っている。
どの子もご飯粒ひとつ残さない食べっぷりはさすがマリーの会。
育ちの良さが分かるね。
おや。1つだけ、お椀にワカメ残してるヤツがいるな。
「茉莉子!! お前ぇ!!」
「うああー! もぉー、ビックリするじゃないですかぁ! やっとマリーさんからおうちモードの茉莉子さんに戻ったんですよー? リラックスし始めていきなり大きな声出さないでください!!」
いや、もう昨日の夜はずーっと茉莉子だったよ?
特に風呂から上がった後とか、髪はおろしたままだし、そもそもカラーコンタクトは付けてすらなかったし。
素肌にタンクトップと短パンを直で着て小春ちゃんに怒られてたし。
まさか、あれで地中海からやって来たマリーさん演じてたおつもり?
「おじさん、おじさん。マリーさんは演じるものじゃないのです。茉莉子はもう、マリーさんと同化しているのですよ!! どやー!!」
「だから、それもう茉莉子じゃん!! ピッコロさんですら神様と同化してすげぇ穏やかになったのに!! お前、マリーさんの要素を茉莉子が食い尽くしてるじゃん! 同化じゃなくて、マリーさんがМ&Aされてんだけど!!」
「んーと。よく分からないですけど! М&Aって、あのちょっと腹立つ顔のキャラがニタニタしてるチョコレートですか!!」
それはМ&Мじゃい!! よく食ってるのに、マスコットの悪口言うな!!
まったく、よりにもよってワカメ残すとか。
おじさんは悲しいよ、ヒジキとしてさ。
同胞が茉莉子に食ってもらえないなら、俺だって食ってもらえないじゃん。
「えっ!? おじさんってもうヒジキになることにしたんですか!? 赴任先とか決まってます!? 御亀村には海がないので、お引越しですね!? 準備します!!」
「あれ? 俺、今何を言ってたんだろう? やべぇ! 俺は俺で、秀亀とヒデキがヒジキにМ&Aされようとしてる!! 自分の名前がよく分かんなくなるとか、これ末期だぞ!!」
食器を洗え終わると、ようやく俺もソファーに着陸。
まりっぺ、ちょっとそっち寄って。
「むー。この茉莉子の太ももを邪魔者扱いしようと言うのですかー! 不敬ですよー!!」
「あらやだ、また難しい言葉を覚えちゃって。どういう意味が知ってる? あと、今は太ももに用はない。そぉりゃい!!」
「むぎゃっ!! ひどい! おじさんが女子高生を虐待しました!! 不敬の意味なんて知ってます!! お父さんとお兄さんのことです! つまり、おじさんの主成分ということです!!」
「今日も茉莉子は可愛いなぁ! せめて婦警さんが出て来るかと思ったら、独自解釈がすごい!! じゃあ、名前書いといて。太ももに」
「おじさん……。恋人に自分の名前のタトゥーいれさせるタイプですか?」
「このネタ元は分かる。レアぴっぴか」
小春ちゃんが定期的に持って来てくれる、300グラムで俺のファミレスの時給をいくつか掛け算しないといけないお茶を頂いて、ホッと一息。
みんなして「朝まで遊ぶぞー!!」とか盛り上がってたのにさ。
気付いたら3時くらいには起きてるの俺だけだもん。
暇と寂しさ持て余して、茉莉子のための手編みマフラーがかなり長くなったよ。
「もぉぉ! なんでそーゆうのバラすんですかぁ!! サプライズにしてくださいよ!!」
「じゃあ思考読むんじゃないよ!! 言っとくけどな、俺が慣れただけで世界では思考読まれていきなりご意見拝聴させられる方がよほどサプライズだぞ!!」
茉莉子は「はいはーい」と言って、お茶をズズっと啜る。
俺に付き合っているうちに緑茶が飲めるようになったうちの子。
ふふふ、可愛かろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ところでさ、俺のクリスマスプレゼンのターンが回ってこなかったんだけど?」
「おじさん、言ってたじゃないですか。半額チキン買って、コーラ飲んで、やっすいケーキしゃぶりながらお馬さんの出産シーンをねぶるように見て興奮するんでしょ?」
それは去年だけだよ!!
おじさんが変質者みたいな言い方するのヤメてくれる!?
俺にだってあるわい!
クリスマスプランくらい!!
「ほほーう! 聞かせてもらおうじゃないですか! あたしだけの独占情報として!! んふふー! 同居の役得ですなぁー! 役得ってなんですか!!」
「まずな、雪山に登山する」
「あ。もういいです」
「聞けよ!! 聞いてくれないなら、せめて思考を読んで!?」
急に茉莉子が冷たくなった。
「はいはい。じゃあ、続けてどうぞー」とか言われたので、続けちゃう。
「山頂を目指すも、急に天気が悪くなってだな。茉莉子を守るように手を引いて、ビバークできる場所を探すんだ」
「……あの、茉莉子を一緒に遭難させないでください」
「そして見つけた山小屋! だが、何年も人の手が離れているせいで何もない! 少しの食糧と水、ランタンしかない!!」
「うぇぇぇ……。地獄じゃないですかぁー」
「そこでしばらく食料を分け合って、飢えと水分不足をどうにかしのぐ。だが、外は吹雪が止む気配はなく、少しずつ俺たちの体温は下がり始める」
「へー。……んにゃ!! 分かっちゃいました! あたし、分かっちゃいましたよ! おじさん!! もう、そこに到達するまでがまさに童貞って感じで、ちょー回りくどかったですけど!! そーですか、そーですか!! つまり、そこに至るまでのシチュエーションだったんですね!! あたし、おじさんを見直しました!!」
急に目をキラキラさせ始めたうちの子。
やっぱりね、一緒に住んでると価値観も似てくるんだよ。
心理学の講義で習ったもん。
「でな! 俺は服を脱ぐ!!」
「来たぁー!!」
「そして全てを茉莉子に着せる!!」
「……ほえ?」
「茉莉子が、このままじゃ、おじさん死んじゃいますよぉ! あたしだけ生き残っても意味ないですよぉ!! と叫ぶ」
「……はい」
「そこでな! 俺が言うの! 茉莉子。お前は俺の人生そのものだった。だからね、俺が見られなかった景色をたくさん見て、その時が来たらおじさんのところへおいで? 色々な話を聞かせておくれ? ただ、なるべくゆっくり……来い……よな……。って言って、俺が力尽きるの!! 良くない!?」
無言で蹴られた。
「聞いて損しましたよ!! バカなんですか!! フランダースの犬じゃないですか!! あたしが昨日、フランソワ家を間違えたのをいじってる事を願いたいのに! テレパシーでガチだってことが分かるんですよ!! もぉ! テレパシー捨てたいです、あたし!!」
そこまで全否定しなくても良いじゃん。
ステキなクリスマスじゃんね?
一生に一度の思い出になるよ?
「茉莉子にトラウマ背負わせてどうしたいんですか、おじさんは!?」
「えっ!?」
「意外そうな顔して来ましたね!? うああー! もぉぉぉ!! 今年のクリスマスの期待値がマイナスですよー!! どーせ半額チキンとコーラとやっすいケーキで、お馬さんの出産シーン見せられるんです、あたし! おじさんの隣で!! このマニアック童貞!!」
昼頃にマリーの会のグループラインで「なんで死ぬの? バカなの?」とガチの疑問が人数分送られて来た。
共有しおったな、茉莉子。
男のロマンは女子どもには分からんのだよ。ふんっ。
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