えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第93話 メルヘンなクリスマスをご提案する小春ちゃん ~こういうのでいいんだよ~
第93話 メルヘンなクリスマスをご提案する小春ちゃん ~こういうのでいいんだよ~
クリスマスって夕方に場末のスーパーに出かけて行って、干からびた半額のチキンとコーラ買って、コンビニで300円くらいのちょっと良いケーキ買って、それを並べてプライムビデオで映画見るのが最高の過ごし方なんじゃないの?
絶対にマリーさんがため息を送り付けて来るんでしょ?
(はー。ですよ、おじさん。はー。です。去年はそんな切ない過ごし方してんですか? あたしに電話してくれたら良かったじゃないですか! 言っときますけど、中3の茉莉子は既にかなり育ってましたよ? セクシーをお届けできたのに!!)
お前、去年ってことはスマホどころかガラケーも使えてなかっただろうが。
ベルの代わりに茉莉子の実家の固定電話鳴らして、俺はおばさんとおじさんに挨拶する以外、何か得るものはあるのかね。
(ぐぬぬっ。おじさんのくせにやるじゃないですか……! 茉莉子を屈服させるとは!!)
うちの子が今日もバカで可愛い。
それで、何だったかな。
プレゼンされるんだっけ。
「お風呂の順番決めようぜー! ちなみに小松家の風呂は狭いから、2人で入ったら湯船のお湯がなくなるぜー!!」
「もえもえの記憶によると、小松さんとマリーさんは一緒に入っておられたような」
「お嬢はバカっすねー。あれはあれでいいんすよ。あーゆうヤツなんす。ウチら女子がそれやっても、アレには勝てにぃーんす。ゆりゆりすんのはメンズが反応して初めて成立するんすよ。ヒデキ、スタンダップしねぇんでマジ意味なっすぃんぐっす」
「ははっ。私は1人で入れて心が穏やかになります。誰と入っても心中が乱れるとか、何ですかこの罰ゲーム」
プレゼンは!?
ねぇ! 秀亀はここにいるよ!?
完全に風呂入ってパジャマパーティー始める感じになってない!?
「もぉ、おじさんってばー。急にがっつくんですからー。困ったものですよ、まったくまったくー。順番にお風呂入って行かないと、後がつっかえるんです。ちゃんとお風呂に入れてない子から順番にプレゼンテーションしてあげますよ。ところでプレゼンテーションってなんですか!!」
「ただいまー。私、最後になれたよマリーちゃん。こんなに嬉しいことってないよ。次に入る人がフライングで飛び込んで来て、半裸の私を見て嘲笑するシチュエーションが消えたんだよ」
小春ちゃんがすごく卑屈になっておられる。
ここは元気づけなければ!!
「俺はその後で入るから、運が良かったら風呂上がりの小春ちゃんと出会えるかもってわけだな!!」
「……ははっ。秀亀さんに嘲笑されるパターンでしたか。それをされて興奮できない自分が憎いです。クリスマスまでには仕上げておきますね。今日は許してください。じいやに切腹させたくなります」
なんか知らんが、じいや悪くなくない!?
「という事は! 小春ちゃんですか!!」
「うん! 私が1番! ふふっ! マリーの会のイベントだと、だいたい最初に処理されて放置されるのが私だからね! もう慣れちゃった!!」
卑屈な小春ちゃんがクリスマスの過ごし方をプレゼンしてくれるらしい。
正座しよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「私のご提案する秀亀さんとのクリスマスは! ずばり、メルヘンです!!」
「へー」
「あ。頑張ってテンション高めに始めてからの秀亀さんの興味なさそうな合いの手。なんだかお腹痛くなってきました……」
「ごめん! 違うの!! クリスマスを俺と過ごす前提だったことに驚いてたの!! うん、その割に驚いたテンションじゃねぇなって自分でも反省してる!!」
マリーさんが隣で「がんばです、小春ちゃん!!」とエールを送る。
やっぱり親友っていいね!
ところでまりっぺ、カラコンもう外してんの!?
親友の物分かりの良さに甘え過ぎじゃねぇの!?
「あ、えっとですね。着ぐるみパジャマってご存じですか?」
「知ってる、知ってる。ちっちゃい子が着てるヤツだ!」
「……ははっ」
「ごめん、違うの! 小さいって言うのは年齢のことでね! あ゛あ゛! これ、フォローしてもしなくてもダメなヤツ! あと、多分じいやさんが切腹させられるヤツ!!」
だが、今日の小春ちゃんは卑屈だけどダース・こはるんにならない。
「ふぅ」と息を吐いてから彼女は続けた。
「着ぐるみパジャマになった2人で、動物さんの映像を見ながらアロマを焚いて。温かいミルクティーを飲みながら、肩を寄せ合ってまったり過ごしたいなって。……子供っぽいですよね。すみません。じいやに電話します」
じいやさんがすぐ命を刈り取られそうになるんだけど。
「いいじゃない! 楽しそう! 俺が動物好きなの知ってて合わせてくれてるんでしょ? 小春ちゃん、そういうとこがいいよね! 優しいし、健気だし!! そうかー! クリスマスってそうやって楽しむものなのかー!! ありだな!!」
「そ、そうですか!? どうせ最初だから無難に85点付けられて、4組目がネタを披露したら真っ先に舞台袖に消えていくのが私じゃないんですか!?」
今のは分かりやすかった。
クリスマスがМ‐1に繋がったんだな。
最近はクリスマスにやらなくなったよね。
「いやいや、マジで楽しそうだって! パジャマは何の動物にする? やっぱりトナカイかな?」
「あ、いえ。秀亀さんにはオオカミをお願いしたいなって」
「マジか。思いのほかワイルドな配役が来た! けど、たまにはいいね! 小春ちゃんは? 子猫とか? 子犬も似合いそう!」
「私は羊です!!」
すげぇ断言して来た。
なんか嫌な予感がする。
俺くらいになると、マリーの会の集まりで空気が変わる瞬間が分かるんだ。
だいたい二番手くらいのヤツが暴走するの。
小春ちゃんは一番手だから平気なはず。
なのに、なんだこのプレッシャーは!?
「あのですね、オオカミさんに食べられるのが羊さんなので! どうせその後でマリーちゃんをメインディッシュにするんだろうなということは私にも分かります!! ぜ、前菜で、その、摘まんでください!!」
「うん。ごめんね? ちょっと意味が分からないかなって!」
「わ、私! 掴めるほどサイズ感ないので! 摘まんでください!!」
「おい! 誰だよ、小春ちゃんにしょうもない事を教えたの!! 怒らないから名乗り出ろ!! クソ説教してやる!!」
「おじさん! 摘まむって何をどうすることですか!!」
よし! まりっぺじゃないな!!
小春ちゃんが良くない知識にまた少し侵食されてしまった。
とりあえず「俺は小春ちゃんとまったり、のんびり過ごしたいな!!」と大人のフォローを差し上げた。
「ははっ。摘まむ価値もないんですね……。すみませんでした。出直して来ます」
「小春ちゃん!! 高校一年生はそんなこと言わなくていいの!! そのままの君でいて! 荒んだ妹にならないで!!」
そこに忍び寄る大きな影。
「ふぉっふぉっふぉ。こはるんがやられたか。しかしこはるんはマリーの会では最弱。いや最小……!」
「……ははっ」
「ノリで言ってんの分かるけど! 直近の話題と繋がると大ダメージだからヤメてあげて!! つーか、次は新菜なの? レアピーチ投手が100マイルのドストレート下ネタ投げてくんじゃないんだ?」
「レアぴっぴは風呂にぶち込んで来た!! もえもえはシャワーで滝行させてるから、しばらくこっち来ないぜ!! ぼっち警察のターンだ!!」
とりあえず、穏やかなヤツ頼む。
ちゃぶ台の周りにいるのがまりっぺと傷心のこはるんだからね。
絶対だぞ。絶対だからな。
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