えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第92話 マリーの会! クリスマスの過ごし方プレゼン会議!! ~お泊り会だ! 女子の思考を叩きこまれるぞ、秀亀くん!!~
第92話 マリーの会! クリスマスの過ごし方プレゼン会議!! ~お泊り会だ! 女子の思考を叩きこまれるぞ、秀亀くん!!~
俺は大学生海藻、小松秀亀。
幼馴染で妹みたいな小松茉莉子と同居を始めて、桃色づくめの女子どもの怪しげな取引現場を目撃した。
取引を見て見ぬふりするのに夢中になっていた俺は、背後から近づいて来るうちの子に気付かなかった。
俺はその田舎娘に「どうして部屋に干してある下着を片付けてくれなかったんですかっ!!」と大声でぶん殴られ、気が付いてたら体が焼きそばを作っていた。
マリーの会の女子どもは誰も手伝ってくれず、ずっと劇場版名探偵コナンを見てる。
赤井さんかっけーとか、安室さんステキーとか言ってる。
俺が頑張ってコナンのプロローグを暗記した上でアレンジしてさっきから繰り返し頭の中で反芻しているのに、茉莉子はリアクションすらしてくれない。
(お土産の交換を怪しげな取引現場にこじつけるのは無理があったと思います! あと、おじさんは茉莉子の服をお客さんが来るにも関わらず、リビングに干しっぱなしにしていた罪の重さを知るべきだと思います!!)
いつも下着姿で牛乳ラッパ飲みしてんじゃん。
みんなともプールで泳いだり、一緒に風呂入ったりしてんじゃん。
裸見られてるのに、干してある下着を恥ずかしがるとか今更じゃない?
スマホに着信あり。
そんな、まさか。
茉莉子のスマホはちゃぶ台の上にあるのに。
じゃあ偶然か。
「はいはい。どうした、ばあちゃん。今日も綺麗だよ!」
『おっす! おら、チチ!!』
「そこまで行ったらもうカカロットか本体のでぇベテランにたどり着けよ!! 今、焼きそばをホットプレートで作ってんだけど! 手短に頼む!」
『秀亀?』
あ。ガチトーンで諭されるヤツだ、これ。
『女子はね、みんなの前で裸になる時ゃ相応の準備してるし、下着もオシャレなヤツ選んでんだよ。だけどさ、オシャレな下着も経年劣化でいつかボロい下着になるだろ? そうしたら、そいつは家にいるときか、しょーもないヒジキに見られる時に使われる二軍選手さ。その二軍選手を一軍が普段相手してるお友達集団に目撃ドキュンされたら、そりゃ怒るのも道理だろ?』
「分かった。俺が悪かった。ひとつだけ聞かせてくれ、ばあちゃん。もう答えが分かってるような気がするけど、一応、念のため、声に出して確認したい」
『最近の悩みかい? シンカーとスクリューの違いがよく分からなくなって来たことかね!!』
「俺は変化球の表示が出ないとサッパリ分からんから、問題ないよ。ばあちゃん、もしかして茉莉子のテレパシー拾える?」
『いつからばあちゃんがテレパシーを拾えないと錯覚していた?』
「もうマジで最強じゃん! 最&強じゃん!! できねぇことないの!? バベンジャーズじゃん!!」
ばあちゃんは最後に優しく呟いて電話を切った。
『できない事だってあるさ。……ばあちゃんの両手じゃ、ヒデキを優しく抱きしめることができやしない。あばよ!!』
秀亀なのかヒデキなのか、どっちにしろ抱きしめる気ねぇだろ!!
今日も元気で良かったよ! 明日も元気でいてね、ばばあ!!
そんな訳で、こちらが完成した焼きそば。
スピーカーフォンにするなんて危険な事はしていない。
インカム付けてたの。
ばあちゃんが前に来た時に「今度ボイチャしながらFPSやろうぜ!」って置いてった、結構いいヤツ。
まあね、誘われてないんだけどね。
ばあちゃんが言ったのにさ!!
女子どもに美味しい焼きそばを与えてやろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「どうして毎回爆発するのでしょうか? 警視庁が無能過ぎませんか?」
「まーたお嬢は野暮なこと言いまくりまクリスティーっすね。爆発しねぇと始まんねっからに決まってんでしょうが。駆けつけで爆発して、中押しで爆発して、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! でダメ押しの爆発! 銃撃とか爆撃とか火災、水害、転落事故とかもアリエッティっすね!」
「はいはい! テレビはストップ! ご飯できましたよ!!」
「おー! 来たぜー!! 秀亀焼きそば! もうさ、一生焼きそば作って生きていけばいいんじゃん? 海に還らないで」
俺の進路が母なる海に戻るか焼きそばマシーンになるかの二択に。
「いただきます」
「小春ちゃんは本当に礼儀正しくていいなぁ。たくさん食べさせちゃいたい!!」
「ははっ。ですよね。たくさん食べないといつまで経っても歩美ちゃん枠ですもんね。私って。はははっ」
「おい! コナン消せ!! 皆で集まって飯食ってる時にテレビつけてんじゃねぇよ!!」
ただ黙々と焼きそば食ってるのがうちの茉莉子。
いただきますも言わなければ、美味しいとも言わない。
連れ添って30年くらいの亭主関白な旦那かい?
そういうことしてると、ある日突然お母さんが実家に帰るんだからな?
そのうち顎をグイってやるだけで「おい。あれ」とか命令されそう!!
「では! 本日の集まりの意義をこのマリー・フォン・フランソワーズが発表します!!」
「あ。まりっぺ、ついに家名間違えたぜ」
「聞こえてねーふりしてあげるのが優すぃー対応だと思いマッスル」
悟りコンビが賢いと思ってたけど、「わー」と笑顔で手をパチパチ叩いてるお嬢様コンビがバカなだけの気もしてくる。
もしくは、マリーさんに興味ないんじゃね?
「今日はですね! 今年も童貞クリスマスを迎えてしまいそうなおじさんに!! あたしたちピチピチ乙女が理想のクリスマスをプレゼンしていって! おじさんのメンズ力をどうにか引っ張り上げて本番に備えようと、このマリー・フォン・フランソワーズが言うのですよ!! どやっ!!」
焼きそば口からはみ出してるのにドヤ顔する茉莉子が可愛い。
もう自分で作った見栄っ張り設定の大半を忘れつつあるアホっぷりが愛おしい。
今となっちゃ、カマンベール伯爵家の方が生きてるからね。
村越家と近衛宮家に認識されてるんだから。
そんなおざなりにするんなら、付き合ってつまんねぇ嘘つくんじゃなかった!!
「秀亀さ。去年のクリスマスって何してた? バイト休みだったっしょ?」
「ちょっと待って。スマホ確認するから。……ああ。新劇場版のエヴァをマラソンしてたみたいだわ」
「哀しみが押し寄せてくるんすけど。クリスマスを既にクリスマスとして認識すらできてにぃーじゃねっすか。せめてえちちな動画とか見てて欲しかったすよ。ウチは」
「待てよ、レアぴっぴ! 見たんだよ、見た! サラブレッドが繫殖牝馬になって初めての出産までのドキュメンタリーも見た! エロかったー!!」
「それをエロの枠の中にスラムダンクする秀亀さんのヒデキ、まじヒジキっすね」
「わたしがフツーに泊まりで遊びに来てた意味が分かったかね、レアぴっぴくん」
比較的常識人寄りの新菜と桃さんに哀れまれると、俺だって少しは傷つくんだぞ?
そして大量に作った秀亀焼きそばを食い尽くした女子ども。
俺の分の配慮もせずに夢中で食べるとか、君たちみんな可愛いじゃないか。
おじさんはペヤング食うからいいや。
「おじさんが浮気どころか、愛を平等に配り始めてしまいそうなので! 順番におじさんをロマンティックの世界へと連れ去りましょう!! 朝まで寝かせませんよ!!」
「あ。そうなの? 昼に布団乾燥機かけたのに」
「こんだけのメンツに囲まれて夜過ごすのに微動だにしてねーとか、マジハードピーナッツクリーム野郎っすね。これは褒めてるっす」と桃さんに肩を叩かれた。
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