えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第91話 なんか10月半ばからもうクリスマスシーズンらしい ~周りの女子全員がそう言ってる~
第91話 なんか10月半ばからもうクリスマスシーズンらしい ~周りの女子全員がそう言ってる~
10月も2週目に入ると朝晩は涼しいと肌寒いの中間を行ったり来たりし始める。
この夏が過ぎて冬が来る狭間の時期が俺は好きだ。
夏の暑さと冬の寒さは秋という調和によってより際立つのである。
「ぷぷー! おじさん、天気予報のお姉さんがもう日本に秋という季節はないのかもしれません。明日もちょー暑いですよーって! ねえねえ、おじさんおじさん! カッコいい感じのモノローグをしたり顔でキメて、キリッてしてるところにプロの気象予報士さんの情報がぶっこまれましたけど! 今のお気持ちは!!」
「俺、ミニスカート穿いてるお姉さんの言う事は信じないって決めてんの。天気予報もそこそこにファッションの話始めるじゃん。石原良純さんしか信じないから。男は黙って石原軍団」
「ふむふむー。おおー。良純さんが、石原軍団の先輩たちとの食事は地獄そのものでしたって語ってる記事を発見しました!!」
俺は茉莉子がスマホを使いこなせるようになった事が何よりも嬉しい。
秋も良純も知るか!!
勝手にやってろ!!
実際のところ、田舎娘で最新機器と言えば「スーパーファミコンですっ!!」と胸を張って、立派なのは胸だけでIT革命なんて永遠に訪れないと思っていた茉莉子もやっぱりちゃんと年頃の女子だった。
今ではスマホをフリック入力できるようになってるし、ラインでビデオ通話もできるし、いかがわしいサイトを検索するようになったから閲覧制限設定したし。
やっぱり高校生の成長速度ってすごいなぁ。
「あたしを見ながら成長について納得しないでくれます? どこ見てるんですか? 胸ですか、お尻ですか、太ももですか!!」
「腹だね!! 脇腹!! 胸も尻も太ももだって、むっちりで誤魔化せるけどな! 腹は無理なんだよ! お前、なんで二の腕とか細くなったのに腹の脂肪残ってんの? 体重だって3キロも減ったのに!! 枕にする時にたまにタプタプした脇腹の肉が顔に当たって気持ち良くて仕方ないわ!!」
茉莉子は「ふんっ」と言ってスマホをいじる。
すぐに俺のスマホが鳴った。
はいはい。失言しました。チクられました。
『それで秀亀さんはクリスマスのご予定ってもう決まってるんですか?』
『ウチ、受験生なんで!! スタディー合宿でステディーになりてぇっす!!』
『必然的にその場合、もえもえがセットで付いて参ります。突かれに参ります』
『かわいそうだからぼっち警察が教えといたげる。秀亀、ハブられてるぞ!!』
また俺抜きでラインしてやがったのかよ!!
「セクハラされましたー!!」とか報告するんじゃなくて、敢えて俺を仲間外れにしてた事実を突きつけて来るとか!!
やるじゃん、まりっぺ! おじさん泣きそう!!
「ふーんだ。反省してください。おじさんのお野菜マシマシご飯を我慢して食べてあげてるんですよ? あたしは!!」
「悪かった。我慢してる割には今日の天ぷらむちゃくちゃ食ってるけどな。温泉旅行に行って出て来た最高級天ぷら全否定してたバカな子とは思えん食いっぷり!!」
「お茄子と仲良くなれました!!」
「よし! 次はオクラと大葉が待ってるぞ!!」
「その子たちはちょっとレベルが高いので、あたしには早いです!! 草と謎のネバネバじゃないですか! どっちもアブノーマルなので茉莉子には早いです!!」
「オクラと大葉に謝れ!! ……で? 何の話で盛り上がってんの? クリスマスとか言ってたけどさ、みんな。まだ10月だよ?」
茉莉子が腹を張った。
「とりゃあ!!」
「あ゛あ゛! ヤメろよ、お前!! 俺のトランプタワーが!! せっかく三段までできてたのに!! ひどいことするな、まりっぺ!!」
「どっちがですかぁ!! おじさんってちょっと粘着質なとこありますよね! お漏らしネタを2カ月くらい引っ張ってましたし!! お漏らししてないのに!! そもそも、どーしてこんなに可愛いあたしがソファの隣に座ってるのに、トランプタワーを黙々と作ってるんですか? 賽の河原に行く前の練習してるんですか!?」
茉莉子のツッコミがちょっとずつ知的な感じになってる!!
喜津音女学院ってすげぇ!!
ということで、茉莉子が胸を張った。
「女子の中では10月とかもうとっくにクリスマスシーズンなんですよ!! おじさんってば知らないんですかー? ぷぷー! そんなだから童貞なんですよー!! そんなだから茉莉子の独占物件なのです! ありがとうございます!!」
短パンにタンクトップで2本目のあずきバー食ってる茉莉子にクリスマスシーズンとか言われても、まったく実感が湧かないのだが。
◆◇◆◇◆◇◆◇
せっかくなので、俺もラインに参加することにした。
トランプタワー崩されたし。
『で? 何の話題で盛り上がってんの? 何歳までサンタさん信じてたかとか?』
少しの間があって、怒涛の返信が押し寄せて来た。
『もえもえは幼稚園の時には気付いてしまいました。月の土地の権利書が枕元にあったので』
『そうなんだ。それ、幼女には全然嬉しくないな』
『私は小学四年生まで信じていました……。子供っぽくて恥ずかしいです。さすがに大人っぽくなりたいです! ってお手紙を書いたらエステサロン買い取ったってお返事が来て察しました。サンタさん匙投げるんですもん、はははー』
『前半だけ記憶しとくね! 可愛い妹キャラこはるん! 後半は読めなかった!』
『ウチのうちはアレすよ! 毎年、パパピとママピが弟と妹どっちが欲すぃーか聞いて来てぇ、なんかカラフルなゴムをクリスマスツリーに飾りつけてぇ』
『ごめん、レアぴっぴ! その話、今度聞かせてね!! 茉莉子も見てんの!!』
『わたしはサザエさん見てたらカツオにネタバレされたわー。小1だっけ?』
『マジで新菜の思い出は親近感が湧いて堪らんな! やっぱぼっち警察だわ!!』
茉莉子のコメントがないじゃん。
どうした? 参加しなさいよ?
「ひゃへぇあ!? ほよ、むめ、おじおじおーじおじ、おじさぁん!? え゛っ。あの、サンタさんって……いないんですか!? 嘘ですよねぇ!?」
「新菜、すまん。やっぱりうちの茉莉子がナンバーワンだった。マジかお前! そういえば、御亀村って大人が全員で徒党組んで子供を騙してたなぁ!!」
まりっぺがガチへこみしてるから、ちょっと自家製プリン取って来るわ。
膝を抱えてプリンをモグモグしながら「サンタさん。いないんですかぁ……」と落ち込むうちの子が可愛い。
スマホを見ると、なんかすげぇ伸びてた。
こういう時、ちょっと切なくなるよね。
ああ、俺抜きでも全然盛り上がるんだってさ。
「くすんっ。おじさんは元から抜かれてたんですよ、盛り上がるに決まってるじゃないですかぁ」
「涙目で俺のハートにナイフぶっ刺してくんのヤメてよ。茉莉子のサンタさんはここにいるだろ!! 俺を見ろ! 頼りになる愛しいおじさんだぞ!!」
「……おじさん。家計簿つけてる時に脳内で暗算するのヤメてくださいよぉ……。あたし、欲しいものって聞かれても……新しいお箸が良いです! ピンクの! 百均のヤツ!! としか言えないですよぉ……」
御亀村のサンタは当然だがニコール・キッドマン。
失礼。噛みました。ばあちゃん。
願いは何でも叶う、不思議なポッケ持ちの神龍みたいな存在が頂に座ってんだから、何を比較しても飛車角落ちだよ。
スマホを見ると「じゃ、明日の夜は秀亀の家に集合で! クリスマス討論会だぜ! お泊りね!!」と締めくくられていた。
高柳さんにバイトの遅番変わってもらわなきゃ。
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