第84話 海釣りだ、マリーの会 ~車で既に酔っている女子どももいるのに、果たして何人が船酔いするのか~

 マリーの会の海釣り。

 当日がやって来た。


 見慣れたデカい改造キャデラックもやって来た。

 今回こそじいやさんに運転してもらおうとしたら、凄まじいスピードで走り去られる。


 ウマ爺なのかな、じいやさん。


「よっしゃらぁい!! 今日はウチが助手席ゲッティングナウっす!!」

「そうか。桃さんか。まあ、当たりだな」


「ついに女子を当たり外れで区分けし始めてぃーっすね、秀亀さん。それはヒデキ判定っすか? 実用的なアレすか?」

「違うよ? 実用性は加味したけど、それは運転の補佐的なアレだよ? 運転中にヒデキは元気にならないからね?」



「ウケるっす! いつもピーナッツクリーム野郎じゃねっすか! またまたー!!」

「もう何回かトライしたみてぇに言うなよ!! 家庭教師だけにトライってか!! やかましいわ!!」


 ノリ合わせたのに「え。ご機嫌っすね」とか、なんか引かれたのが納得いかない。



「よし、女子ども! 色々確認するぞ!! マリーさん! 梅干しは!?」

「はい! とても酸っぱいです!!」


「よし! 小春ちゃんにも分けてあげて!!」

「ゔ……。あ゛の゛……。もう、いつ妊娠しても問題ないくらいにマリーちゃんが梅干しを口に押し込んでくれたので。1周回ってちょっと気持ち悪いです」


「よし! 小春ちゃんは今日もか弱くて守ってやりたい!! 新菜はコーラ飲んでる?」

「飲んでるぜー! あとはメントスも一緒に食べるんだっけ?」


「よし! フリスクな! メントス食ったらお前! キャデラックが大変な事になる!!」

「もえもえからご報告です。買収した漁場にお魚を放ちました! 目玉はマグロとクジラです!!」


「よし! それは回収させてくれ! 万が一にも釣れたら船が沈む!!」

「さすがっすね、秀亀さん! 竿についての造詣が深ぃーっす!!」


「よし! レアぴっぴは最近下ネタしか言わねぇな!! そんな調子だと、勢いでシャツ脱がされても文句言えないぞ!!」

「え。ふつーに犯罪っすよ、秀亀さん。ナニゲー感覚なんすか?」


 確認はだいたい済んだ。

 あとは1つだけ。


 大変憂慮すべき事案がある。


「ところで、全員に聞きたい!! 今日は海釣りをする!! そこは理解してるな? 海釣りだぞ? カフェでお茶するんじゃないからな? 理解してるな?」


 全員から「当たり前ですわい」と返事があった。

 ならば、言わせてもらおう。



「じゃあ! なんで全員が全員!! オシャレな服着て来てんの!? ああ、待て! 女子の時間かけて頑張ったオシャレにそーゆうこと言うんですからー! おじさんってばー! とかマリーさん辺りが言うのは予想できる!! そうじゃねぇんだよ! 釣りを舐めてんのか、お前ら!!」


 揃いも揃って、フリフリ、ヒラヒラな服着てきやがって!!



「ふふふふっ。小松さん。もえもえがいることをお忘れですか?」

「まったくお忘れじゃないよ? そのバレーボールの存在感はさすがの俺でも無視できないよ? そのもえもえがどうしたって?」


「現地に到着したら、当然お着がえしますとも! 既に漁港にセレクトショップを作ってあります!!」

「ああ、そうだったんだ! 漁師の皆さんにすげぇご迷惑かけてんな!! まあ、ちゃんと着替える気があるって聞いて安心した! じゃあ行くぞ! 全員、乗り込め!! このテンションで一気に行かないと、キャデラックのプレッシャーに呑まれたら俺まで具合悪くなるから!!」


 俺たちは勢いそのままに出発した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



(おじさん! おじさん!!)


 どうした、マリーさん。


 こはるんが死んだか。

 ぼっち警察が殉職したか。


(ピザポテト食べてもいいですか!!)


 お前は両サイドに車酔いオプション付けてる女子を抱えて、それでなお、よりにもよってポテトチップス界でも上位にランクインする匂いの強いヤツを開封しようと言うのかね。


(じゃあ、カラムーチョ食べてもいいですか!!)


 双璧なんだよ、ピザポテトとカラムーチョ!!

 新幹線の中でシュウマイ弁当食い始めるくらいギルティだからな、それ!!


「秀亀さん。レアピーチからお知らせあるモンティなんすけど」

「おう。どうした?」


「ハンガリーを筆頭に、スウェーデンとかノルウェーとか、消費税がバカ高な国があるじゃないすか。けど、その分福祉とか教育が充実してぃーんすよね。大学までタダで進学できたり、医療費激安だったり、年金保証されてたり」

「遊びに行く時にも勉強とか! 桃さん、偉いなぁ!! 社会科も得意な経済に結び付けたら覚えられるもんね! それで、質問かな? 先生、なんでも答えちゃうよ!」


「日本は消費税上げるだけアゲアゲで、特に何も変化見られんてぃーなんすけど。そこでさらに税が増えモンティーなんすけど。どーなってんすか?」

「うん。先生にも分からないことを聞かないでくれ! 大丈夫! それ、絶対に入試に出ないから!! いつか分かると良いね!!」


 桃さんは「うぃっす」と返事をして「ところで」と続けた。



「4つ前の交差点、左に曲がるとこ右に曲がってんすけど」

「それ先に言って!? かなり走っちゃったじゃん!! 何故かカーナビなくなってんだもん、このキャデラック!! どういうことなんだろうね!! よし、転回する!!」



 もう海が見えるから、目的地は近いはずなんだけども。

 カーナビがなくなるとすげぇ困る。


(その件に関して、マリーさんが情報をゲットしました!)


 マジかよ。事情通じゃん、まりっぺ。


(小春ちゃんのじいやさんが、カーナビに頼らず道を切り拓いていただきたい!! カマンベール伯爵ならばそれができますぞ、と言っていたそうです! カマンベール伯爵って誰ですか!!)


 じいやさんとは感性が合わねぇな!


 あと、カマンベール伯爵は俺だよ!

 フランソワ家に付き合った結果、派生したヒジキの一種!!


(あっ)


 おい、ヤメろ。

 その思わず出た感じの呟きが1番怖い。


(小春ちゃんと新菜さんがぐたっりしてます!!)


 そうなんだ!?

 やっぱり乗り物酔いって対策してもなかなか解消できないな。


「マリーさん。このカラムーチョなるスナック、とても辛いですね。もえもえは辛いものが苦手なのですが、小松さんはお好きなのですか?」

「はい! おじさんは基本的に好き嫌いを一切しないので! 蒙古タンメンも笑顔で食べます!!」


「むむっ。それはいけません。マリーさん。おかわりをお願いいたします」

「かしこまりました! マリーさんももう1袋、いっちゃいます!!」



 マリーの会の中でフレンドリーファイアしまくるのヤメろよ。

 小春ちゃんと新菜を殺したの、まりっぺともえもえじゃん。



 それからレアピーチナビに従って2度ほど曲がる場所を間違えたりしながら、30分ほどで目的地の漁港に到着した。

 どうにか全員が生きていてホッとする。


「もえもえ。聞きたいことがある」

「何なりと」


「そこら辺にいらっしゃる、黒いスーツの似合わない日焼けした方々は?」

「漁港で働いておられた人たちです。今は近衛宮家のSPとして再雇用しました。お給料は月に170万円ですので、ご不満はないかと思います」


 どうして理不尽に仕事奪われてあんなにニコニコしてるのかと思ったら、そりゃ笑顔にもなるわ。

 しかもボーナス年2回出るんでしょ。

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