第83話 水着で混浴マリーさんとビデオ通話童貞の秀亀くん ~秋なので 何か狩りたい マリーの会~

 最近知ったのだが、ラインって同時通話ができるらしい。

 しかも100人単位とかで。


 令和は未来だった。


(おーじさん! あたしも入っていいですか!!)


 いい訳があるかい。

 おじさんのリラックスタイムを邪魔しないでおくれ。


 たまには風呂に1時間くらい入りたいんだ、俺だって。


(なんか女子みたいなことし始めましたねー。じゃあ、水着ならいいですか!! おじさんと一緒に見たアニメでも結構ありましたし!!)


 アニメと現実をごっちゃにするんじゃありません。

 お風呂回はな、裸で入るとなんか湯気がすげぇ出たり、謎の光が差し込んできたりするから、苦肉の策で水着でお風呂回があるの。

 しかもそれすら最近じゃ結構厳しくなってきてだな。


「おじゃましまーす!!」

「お邪魔なんだよ、マジで!! うわぁ、ちゃんと水着で来たところは褒めてあげたい!! ぜってぇ、じゃあ裸で突撃します!! とか言うと思った!!」


「いやー。せっかく新菜さんにもらったビキニが1度も着られていないのでかわいそうになりましてー。新菜さんが、ちょっぴりパット入れとくとまりっぺは大変刺激的になるぜーって言ってました! なんでですか!!」

「知らん!! ああ、ほらぁ! 電話かかって来たじゃん!! いいか、絶対に必要のない情報を口に出すなよ! だったらその辺で座っていることを許可する!!」


「はーい!! 言うことをちゃんと聞く賢い子と定評のある茉莉子は、おじさんの指示に従います!! ではー!! スマホ、オン!!」

「ああ……! ちゃんとジップロックに入れてくれてる!! もう2回も風呂で水没させて修理してるもんなぁ。ちゃんと学習できる子って好きだわ」


 今日はマリーの会の緊急会議とやらで、同時通話のお電話しましょという趣向らしい。

 俺がハブられてないだけでもう嬉しい。


「もしもし! こちら秀亀!! 便利な世の中になったなぁ! いやー! 俺ね、ラインで通話するのって初めて!! これ、ちゃんとみんなに届いてる? ねぇ! 教えて、教えて!!」


 どうしてみんな黙るんだい? 俺の電話は上手だよ?



『小松さん。もえもえの端末だけだったら良いのですが。自室の大きなモニターに、小松さんのヒデキさんが投影されていて、もえもえはどうしたら良いのか思案中です。とりあえず、父を呼んできます』

「うん。どういうこと?」


 通話ボタンとビデオ通話ボタンの2種類があると言うことを俺は学んだ。

 だって初めてだったんだもん。


 最初はみんな下手くそさ。



『お楽しみのストロベリーソープタイムじゃないすか。秀亀さん。茉莉子さんとお風呂でナニしながら通話とか、これウチはどうしたら良いんすか? 燃えた方が良いんすか? 燃えピーチになった方が良いんすか? ちな、結構イケる口っすよ、イケピーチっす』

「わー! 桃さん!! 部屋着が結構セクシーですね!! そんな服で寝てるんですか!?」


『まりっぺ。ビキニの胸しか映ってないんだぜー。ユー。セクシーとかそーゆう次元超えちゃってるぜー』

「マジかよ! 茉莉子、スマホの角度をどうにかしろ!!」



『あの。秀亀さん。秀亀さんが喋るたびに、スマホの角度が最悪な秀亀さんのカメラに映ってるものが大きくなるんです。ヒデキさんは大きくなってませんけど、それでも割と大きいものが見えているんですけど。私の初めてをひょうきんな感じで奪わないでください。父のだって見たことなかったのに』


 設定にもよるけど、発言中のヤツのカメラ映像が大きくなったりするんだってさ。

 スマホ? 自撮り棒とか言うのを高柳さんがくれたから、それ使ってるけど?


 なんか角度が悪かったみたいね。



 30分ほど「このロリコンやろー!!」「や。茉莉子さんはロリじゃねっす」「もえもえは背が低いですからロリでしょうか」「ははっ」と何も喋れねぇ時間が続いて、やっと本題に入ってくれた。


 もうのぼせそうなんだけど、風呂から出て良いかって聞いたら「絶対にヤメろ」ってユニゾンで怒られた。

 どうせお前、カメラ切り忘れて御開帳すんだろって。


 ワカメ生やしたヒジキ見せてくんだろって。

 みんなさ、女子としての恥じらいとこどこに行ってしまったん?



◆◇◆◇◆◇◆◇



『ってことでさー! マリーの会で何か狩りに行こうぜー!! わたし、秋の何とか狩りってしたことないんだよー!!』

『いっすね、それ! とりま、童貞でも狩りましぃー?』


 なんで全員が黙るの?


『あ、分かりました! チェリー狩りですね!!』

『もえもえ先輩、なんで上着脱いだんですか?』


 茉莉子が教えてくれた。


「おじさんが狩られるんですよ、これ!! 確か、桃さんが教えてくれました! おじさんはチェリー野郎だって! ナニを指してチェリーって言うんですか!!」

「知らん!! とりあえず、俺を狩るのはヤメておくれ!! みんな、俺の作る料理が食べられなくなるよ!!」



『料理されるのは秀亀さんなのでは?』

『こはるんがぶっこんだぜー!!』

『小春さんは小松さんのヒデキを漬けるの上手そうですね! ご実家的に!!』

『お嬢のジョークは品がねーんすよ。こはるるーさんがツボって事すか』


 秀亀ね、女子会に陰キャ野郎が1人で迷い込むと地獄ってインターネットに書いてあった意味を理解した。



 ここは俺が建設的な意見を出さないと、俺がのぼせて茉莉子が風邪引く。

 年長者のリーダーシップを見せてやる!!


「りんご狩りは?」



『つまんねー男!! だがそこがいい!!』

『そういえば取引先の人から山ほど送られて来ました。明日持って行きますね』

『もえもえはたった今、リンゴ園を買いましたが。明日お連れします』

『なにしてんすか、お嬢コンビ。後ろにリューク憑いてんすか』


 じゃあもう好きにしてよ!!

 なんだよ、誰も俺の言うこと聞いてくれない!!



「あたし! 魚釣りしてみたいです!! よいしょっと!!」

「普通に湯船に入って来るんじゃないよ!! 狭い!!」


「寒いんですよー! じゃあ、おじさんが出て行ってください!!」

「お前の尻が乗ってるから動けねぇんだって! まず、茉莉子が1回出ろ!!」


「無理ですー!! ちょっと! お尻押さないでください!!」

「俺は茹だりそうなんだよ!! ……あれ? 電話、切れてない?」


「およ? 本当ですねー! 皆さん忙しかったんでしょうか?」

「そうかもな。まあ、これでカメラ気にせず動けるわ! おら! どかんかい!!」



 風呂から上がったら、山のように罵詈雑言が俺のスマホに届いていた。

 桃さんのを抜粋しておくと『そーゆープレイのえちちなアニメ、ちょい前に視聴してぃーんすけど、リアルはマジでレアピーチに効果抜群っすわ。あざす』との事。



 結局、茉莉子の意見が採用されて魚釣りに行くことになった。

 それ、もう狩りじゃなくて漁じゃんよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 翌日。

 小春ちゃんと萌乃さんが茉莉子と一緒に帰って来た。


 喜津音女学院の夏服娘が3人並ぶと壮観だね。


「小松さん! 漁場を買いました!!」

「もえもえは桃鉄やってんの?」


「私は前みたいに車を用意しますね!!」

「こはるんはさ、前に俺がストレスで死にかけた件を忘れたの?」


「来週の日曜日だそうですよ! 皆さんの予定が合うの!! 楽しみですねー!!」

「うん。俺は普通にバイトがあるんだけど」


 ぼっち警察が既にシフトを変更していた。

 高柳さんにまた謝らなくちゃ。

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