第82話 ばあちゃんとマリーの会と秀亀アゲアゲ↑ ~小松絹子は孫をアゲたいステキなばあちゃんです~

「ヒジキ!! あんたぁ!! なんか立派なハーレム作ってんじゃないか!! 見直したよ!! で、どこからイクんだい!?」


 家族かそれ以外かでテンションを使い分けてくれるばあちゃんが欲しいだけの人生だった。

 全員がなんかちょっと嬉しそうな顔してるから、マジでもう村に帰ってくれ!!


「ばあちゃんスカウトレポート、はっじまるよー!! 新菜ちゃんね! 自分がぼっちだけど、ヒジキもぼっち! 巡り合うべくして出会った2人! 付き合いも1番長いし、友達感覚で付き合えるから秀亀のヒデキもそんなに緊張しない!! 好ポイントだよ!! そして高ポイントだよ!! 絹子特賞出しといたよ!!」

「もうヤメてよ。俺、友達なくすじゃん」


 だが、新菜はにっこにこ。


「聞いてよ、秀亀!! おばあちゃんね、火事で家電が全滅したこと知っててさー! ヤマダ電機で一式買って来てくれたの!! 料理しないのに、IHクッキングヒーターとかまで!! 10万とかするヤツ!! 電子レンジもオーブン付きのヤツになったぜー!! わたし、おばあちゃんの孫になるわ!!」

「マジかよ、ばあちゃん! すげぇ良い事してんじゃん!!」



「IHを愛エッチって読んでくれたら、満点だったね!!」

「善悪が安定しねぇんだけど!! いや、俺にだけ悪意があるな!!」



 だが、物で心をゲットできるのは新菜だけ。

 残りはガチのお嬢様と、孤高のギャルだぞ。


「パナップっすよ、秀亀さん!!」


 あ。ギャルはもうやられた後だな、これ。


「うちのパパピがやってるホストクラブで、シャンパンタワー20個注文して、それ眺めたら満足して帰って行ったパナップなババピがいたんすよ!!」

「なぁーにぃー、やっちまってんなぁ……」


「しかもこれぇ! なんか、色々贈り物くれてぃーんす! ピチTが10枚とか! 見せブラが20個とか! こいつぁギャリーオンが捗りまくりまクリスティーっすよ!!」

「ふふふっ。レアピーチちゃんはばあちゃんとバイブス合いそうだったからね! ばあちゃんの好きなブランドのオソロをプレゼントさ!!」



 ばあちゃん、普段なに着て過ごしてんの?



 いや、もう良い。

 レアぴっぴは人が好すぎるせいで、マリーの会でも最弱。


 何なら新菜よりも陥落が遅かったのを褒めてやりたいまである。


 お嬢様コンビは絶対に大丈夫、絶対に。絶対だから。


「ははっ」


 ねっ! この小春ちゃんの乾いた笑い!!

 なんかやったな!! こはるんマインスイーパー、失敗したろ!!


 俺だって3日に1度は地雷処理ミスってゲームオーバーになるんだから!!


「秀亀さん」

「はい。ごめんなさい」


「おばあ様が、ジェットバスを胸に当てながら毎日1時間入浴すると、とても良いことがあると教えてくださいました。私は先ほど、父を生まれて初めてビンタしました。浴場の改築に疑問を呈したからです。力いっぱい頬をぶちました。ははっ。今はとてもいい気分です!!」


 ばあちゃん、マジで何してんの。

 小春ちゃんが殻破ってんじゃん。


「乳浴と欲情をかけてみたよ! ばあちゃんグレートジョーク!!」

「そのしょうもねぇジョークで、村越堂の社長が娘に引っ叩かれてるんだが!!」


 じゃあ、もうダメだ。

 もえもえなんか即落ちだよ。


「小松さん。どうして教えてくださらなかったのですか。あ、いえいえ。分かります。分かります。もえもえが恐縮しないようにご配慮くださったのですよね。本当に、小松さんとこんなに親密になってからお聞きしても、バレーボールが破裂するほど驚きました」


 近衛宮家のSPを全員食ったとかだろ。

 しょうもない。


「小松絹子様。近衛宮家など足元にも及ばぬ、やんごとなきお方。父は膝をつき首を垂れ、祖父は国会に絹子様のご来訪を連絡しました。曾祖父は2分ほど心肺が停止しましたが、絹子様の掌底で息を吹き返しました。総理官邸で緊急の会合が行われているそうです。現在、小松さんのお宅の周囲は1キロ四方が封鎖され、機動隊がにゃんこ1匹すら通さずに、かつおぶしで手なずけてモフモフしているとのこと」



 逆に想定内で安心したわ。

 ばあちゃん、アレだろ。多分、世界大統領とかなんでしょ?

 二十世紀少年で読んだ。


 もういつ「ひーじきくん。遊びましょー」とか言い出しても驚かない。



 マリーの会がたった2時間で全滅した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 1時間が経過。

 どういう訳か、俺が作った焼きそばをみんなで食べてる。


「ご覧よ、乙女たち!! うちのヒジキは料理が上手い!! こんな発展途上国よりも質素な食材でハイクオリティな焼きそば作るんだからね! 海藻の錬金術師だよ!! どうだい! ポイント上がったかい!!」


 ガツガツ焼きそば食いながら、何故か俺のプレゼンを始めたばあちゃん。

 俺が愛用してるマックのオマケでもらったグラスになみなみと注いであるそのドンペリとか言うの、どこで拾って来たの?


 パパピのとこか。


「秀亀は昔からデキるヤツだって知ってますぜー! おばあちゃん! うまー!!」

「本当に秀亀さんは何でもできますよね。優しいですし。非の打ち所がないです」


 ポイント上がっとる!!


「しかもヒジキは家事は全て習得してるんだよ! このニコール・キッドマンも認めた、完璧な家政夫さ!! 女子の下着を無表情で干す姿は、無欲男優賞の候補にノミネートされるほどだからね!! どうだい! こんなヒジキをビーストにさせてみたくはないかい!?」


 ばあちゃんは皿によけてあった焼きそばにも手を伸ばし、俺を褒めたたえる。

 何が起きているのだろうか。



 あと、その焼きそば、俺の分!!



「秀亀さんはジェントルぴっぴっすからねー! ウチを内面で評価してくれるメンズとか、ボーントゥービー初めてっすよ!! とっくに身も心も捧げてぃーす!!」

「もえもえは出会ったのが最後でしたので、身を弁えております。小松さんが欲した時にバレーボールを差し出す。小松さんが困った時には近衛宮家を総動員してお支えする。小松さんのお松茸もお支えする。これはもえもえの中で決まった未来です」


 ばあちゃんは満足そうに笑った。

 続けて、ミラーボールみたいに輝くバッグを担ぐと、敵組織の幹部が身に着けてそうな毛皮モフモフのコートを羽織った。


「みんな! 秀亀を男にしてやっておくれ!! ばあちゃん自慢の孫だよ!! 世界で1番の男だって太鼓判を押すからね!! じゃ、帰る!! ……こちら、ばあちゃん! プライベートジェットを用意しな!! 場所? まあ、その辺の広い国道で良いだろ!! 秀亀、あばよ!!」


 ばあちゃんが帰って行った。

 何しに来たの、マジで。


 学院の視察は?


「愛されてんなー、秀亀!!」

「私、頑張りますね!! 秀亀さん!!」

「ウチはウチにしかできねーことで秀亀さんをフォーリンラブさせるっすわ!!」

「もしもし。もえもえです。首相官邸にお伝えください。絹子様が帰られました。株価が下がります」


 もしかして、俺の事を心配してきてくれたのか?

 ばあちゃん……!!



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ねーねー。おじさん。実はムチムチした女子がそんなに好きじゃないってホントですか? おばあちゃんがおじさんの実家の部屋から発掘した本によると、程よいムチり方が好きだと判明したって。このレポート届けに来てくれたんですよ。ねー、おじさん? 茉莉子、もしかしてムチり過ぎですか? あたし、危機感を覚えそうなんですけど。どうして無心なんですか? 脳内で何かリアクションください。太ももに頭乗せてるくせに。ねーねー。おじさーん」


 この日からまりっぺがサラダ食うようになった。

 ばあちゃん、マジで来てくれてありがとう。

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