えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第81話 残暑お見舞い申し上げます ~ばあちゃん、ついに来る~
第81話 残暑お見舞い申し上げます ~ばあちゃん、ついに来る~
9月になり、茉莉子は学院生活が始まる。
「んふふー! おじさん! 大好きな茉莉子の夏服ですよ! 目に焼き付けておかないと、あと1ヶ月で衣替えですからね!!」
「確かに、認めよう。お前の夏服は可愛い」
「おおー! おじさんがひと夏の経験で成長して、ちょっと大人なおじさんに!!」
「おじさんを成長させたら、じいさんなんだよ。それよりもな、茉莉子」
「なんですか?」
「カラーコンタクト!! あと髪型!! 今のお前、喜津音女学院の夏服を着た小松茉莉子なんだよ! マリー・フォン・フランソワ出してくれ!! 髪はたまたまおろしてきましたー! で済むかもしれんが! 瞳の色は誤魔化せるの、わずかな人だけだからな!!」
夏休みボケというヤツは極めて厄介。
自堕落な生活が、茉莉子からマリーさんを奪い去って行った。
「うぇぇぇー。カラーコンタクトするんですかぁ?」
「しなさいよ!? お前、地中海要素で1番輝いてんのがその蒼い瞳なのに! 今はただの金髪にしてみた田舎娘なんだよ!!」
「でも、田舎娘はこんなにスタイル良くないですよ?」
「田舎娘はもう少しスマートだよ! 食っちゃあ寝て! それをきっちり40日繰り返しやがって!! 言おうか迷ってたけどな、茉莉子! お前、ムチってるを超えつつあるぞ!!」
「ふむふむ! ダイナマイトですね!?」
「どっちかって言うとドラム缶だよ!! 俺が頑張ってヘルシーメニュー作ってやったら、食べるラー油ぶっかけるし!!」
「味が薄いんですもん」
「昼飯にそうめん茹でてやってバイトに行って! 帰ってきたらそうめんはそのままで! 代わりにカップ焼きそばの空き容器が転がってるし!!」
「そうめんばっかりで飽きたんですもん」
「お前! 体重計に乗ったのいつだ!?」
「ほえー? 4月ですかね!! 学院の身体測定はなんかメカメカしい体重計だったので、どこ見たらいいのか分かんないなって思ってたら終わってたました!!」
「思ったよりも現実から離れてんじゃねぇか!! くっそ! スカートのウエスト調整機能が優れすぎてるのが憎い!! ニーソックスになんか乗ってるんだよ!!」
茉莉子が! そろそろムッチリを超えてぽっちゃりになってしまう!!
「でもでもー。男の人ってちょっとムチってしてた方が好きなんでしょー?」
「限度があるんだよ!! 今はまだいい! 太ももは寝心地いいし! 弾力あるし! 割と最高まである!! けどな、4月のお前を思い出すと、明らかに太ましくなってんの!! つまり、このままのペースでいくと、10月が終わる頃には手遅れになってる!!」
「へー」と他人事なうちの子。
もうこの危機感のなさがアホっぽくて愛おしいが、絶対に阻止しなければ。
今はまだセーフ!
膝枕判定がそう言ってるから!!
と、朝のやり取りをしていた俺たちだが、玄関が急に開いて会話が止まった。
鍵かけてたのに。
「おっす! おら、羽川翼!! なんでもは知らないよ!! だいたい知ってるだけ!!」
「ばあちゃん!? なんでばあちゃんがここにいるんだよ!!」
小松絹子、ついに御亀村から出てくる。
とりあえず、もう時間がヤバい。
すげぇ嫌だけど、ばあちゃんの相手は俺が引き受けよう。
「茉莉子! ここは俺に任せて、学院へ行け! ちゃんとカラコンしてて偉い!!」
「させやしないよ!!」
「なんでだよ!! 俺は今日予定ないから! 年寄りの趣味に付き合ってやるから!!」
「あ。すみませんねぇ、我が孫よ。ヒジキはばあちゃんのストライクゾーンに入る事が稀なので。特に朝採れヒジキはノーセンキュー」
腹立つな!!
「ややっ。おじさん! なんかスマホにですね、本日臨時休校とか連絡が来たんですけど! これが噂の詐欺メールですか!!」
「ちょっと見せてみ? ……ガチのヤツだな。ばあちゃん! あんた、やったな!?」
「ククク。まるで白痴だね……ヒジキ……。例え間違いでも、ばあちゃんがこの局面で孫たちを学校に行かせたりするもんかね……。信用するなよ、ばあちゃんを……!」
破天荒な年寄りに権力持たせることの危険性について、改めて俺は理解する。
新しい時代を作るのは老人ではないんだよな。
30になったら国政選挙に打って出ようかしら。
◆◇◆◇◆◇◆◇
とりあえず、休みになったものは仕方がない。
喜津音女学院の1000人近い生徒たちには俺が代表して謝罪の気持ちを胸に秘め、ばあちゃんに茶を出すことにした。
「ほれ。来るなら連絡してくれよ」
「ありがとよ。あっつい!! ……やれやれ。これだよ、ヒジキ。こーゆうとこ」
「ええ……。そりゃ淹れたばっかだから熱いよ。気を付けて飲んでくれよ」
「しかし、これは良いお茶だね! 絶対にヒジキが買ったヤツじゃねぇな! おらには分かる!! とっとと
「うるせぇ! そうだよ! 小春ちゃんに貰ったの!!」
「ああ、ヒジキハーレムのロリっ子枠ね。あの子、攻略難易度は☆☆☆だけど、攻略したあとが面倒なタイプだね。告白してエンディングじゃなくて、むしろ告白したあとのストーリーの方が尺が長くて、ええ、これどこで終わるん? ってプレイヤーをやきもきさせるタイプだよ」
なんか知らんが、茉莉子の親友で俺を慕ってくれる子を的確に判断するのヤメろ。
「おばあちゃん、何しに来たんですか?」
「そうだよ! つーか、ばあちゃんがこの家に来たの初めてじゃん!! マジで何事!?」
「暇つぶし?」
「鷹の目のミホークみてぇな理由で!?」
「嘘だよ! 学院の視察に来たついでにね! まずは可愛い孫の顔を見るのがばあちゃんの仁義ってもんだろ! なぁ、茉莉子!! あんた、またいい女になったねぇ!!」
「んふふー! そうですか? そーですかぁ!?」
まりっぺの脇腹タプタプしながら言ってるんだけど、うちのババア。
絶対にこれ以上、茉莉子を太らせない。
俺は固く決意した。
「じゃあ、行くよ!!」
「どこに!?」
「はー。だよ。ゔぉえ、だよ。ヒジキ。吐き気を催すバカだね、あんたは。学院の視察に来たって言ったろ?」
「ばあちゃんが休校にしたのに? ああ、教員の指導とかすんの?」
「……ふーん。やるじゃん」
「ばあちゃんは茉莉子のばあちゃんだなって、すっげぇ感じるんだわ。そして、この瞬間が俺にとってとても辛いものだと気付いてほしい。茉莉子、どこで分岐したらばあちゃんルートに入るんだろ」
ばあちゃんは熱いと文句を言っていた、良いところのお茶をグビグビと飲み干すと湯呑をダァンとテーブルに叩きつけて言った。
「茉莉子の交友関係でも視察するかね!!」
「ヤメろよ!! そういうの、1番相手が気を遣うヤツじゃん!! 困るわ、俺!!」
「はぁ? 秀亀? あたしゃ、茉莉子の交友関係って言ったんだよ? あんたの交友関係なんて、新菜ちゃんだけだろ? そして今や、新菜ちゃんもどっちかって言うと茉莉子との方が仲良しだろ? まあ、元気出しな!!」
「……行ってらっしゃい」
身内に「てめー、ぼっちだろ!!」と言われると、なんかすげぇへこむ。
茉莉子を連れて出かけたばあちゃん。
2時間後に、マリーの会を全員連れて戻って来るとは思わなかった。
「学校? ああ、休みにしてきた! レアぴっぴの高校な!! 金ならあるんだよ!!」とか言って。
もう帰ってくんねぇかな!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます