えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第55話 生活相談課の新菜さん ~癒しのキャンパスぼっちライフ~
第55話 生活相談課の新菜さん ~癒しのキャンパスぼっちライフ~
大学ってステキ。
ただ勉強してれば満たされるんだから、ステキを超えていっそセクシーだよね。
「見てこれ、秀亀ぃー! 買っちったんだー!! ほれー! ずぼら女子の味方! タンクトップだぜー!! これね、ブラトップって言ってね! ブラジャーしないで良いの! 考えた人、天才だよね! 暑くなってくると蒸れるんですわい。わたしゃ、肌が弱いのじゃよ」
「そうなんだ」
「あー。ダメだ、ダメ。この童貞は出来損ないだ。とても食べられないよ」
「なんかね。最近、色々とストレスが蓄積されてたからさ。新菜がバカなこと言ってるのを聞くだけでホッとするわ」
「なんか口説いてきたー!! どしたん、秀亀? ご飯全然減ってないじゃん? 横乳見る? 安いタンクトップだから多分セクシーだぜー? 1枚980円! 3枚まとめ買いでお得な3000円!!」
「得してねぇよ?」
「……マジじゃん。騙された!! まりっぺにも教えてやろーっと! わたしは濃い目の色ばっか買ったからさ。まりっぺには白を勧めるぜぃ!」
「おー。助かる。お前な、黒い下着とか買わせるなよ。喜津音女学院の夏服、下着が透けるんらしいんだよ! しかも茉莉子、暑いからやですぅー! とか言って、キャミソール着てくれねぇし!! 怒られるんだぞ、俺が! 教頭先生に!!」
新菜は舌を出して「すまぬ!」と言うと、スマホで話題の中心のタンクトップを見せてくれた。
本当にお安いじゃないの。
これなら10枚くらい買わせとくか。
「これさー。お値段相応で、なんか布の厚さに不安が残るんだよねー。まりっぺに白いの着せて、ビーチク浮かなかったら教えてー! わたしも買うから!!」
「お前は人んちの女子高生で何の実験しようとしてんだ!! ヤメろよ! あいつ結構可愛いんだぞ!! どうすんだ、その辺でナンパされたら!!」
過保護だと言われても良い。
その後の処理の方が100倍面倒なのはもう知ってんだよ、俺!!
新菜は「ちぇー」と唇を尖らせてから、チキン南蛮定食をたいらげる。
俺はかけそばに天かす山ほど入れてる。
お金がね、ないんだよ。
「秀亀さ。ちゃんと家計簿とか付けてんじゃないの? ダメじゃん? そんなさ、食費切り詰めるとか。体壊すぜー?」
「主に茉莉子の下着なんだよ!! 今月の我が家を圧迫してんのは!! 新菜が任せろって言うから茉莉子と一緒に下着買いに行かせたのに!! なんで洗濯に気ぃ遣うヤツちょいちょい混ぜて買ってくんの!? 俺が洗濯ミスるとか、もうこれ悪質なトラップじゃん!!」
綿とか麻とかシルクとかレーヨンとか!!
どんだけ豊富な種類を買い揃えてんだよ!!
「洗濯表示見なよー?」
「最初は見たよ! けどお前! 茉莉子が脱いだあとの下着に触れて、内側にあるタグ見るのは無理だろうが!!」
「あらやだー。意外と紳士なんだからー」
「意外じゃねぇよ!? 見たままの紳士だよ!? 茉莉子に風呂覗かれたら未だにちゃんと悲鳴上げてるからね!!」
あの子、定期的にテレパシーオフにしていきなり突入して来るから。
マジでびっくりするの。
こっちはテレパシーに慣れてるもんだからさ。
「だってさー。まりっぺ、都会に興味津々じゃん? 下着売り場に連れてったらさ、目をキラキラさせてね。新菜さん! これはなんですか!? これ、スベスベしてます!! とか報告してくんの! 可愛くてさー! つい、色々買っちゃえって言っちゃった!!」
くそっ! 分かる!!
うちのまりっぺ、好奇心マックスになると本当に可愛いんだ!!
あのワクワクスマイルで見られると、なんかワガママ許しちゃうんだよ!!
食事を終えた俺たちは、3限の講義へ向かう。
空き時間を埋める目的で履修した地学基礎だが、これが面白いのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
生物の進化に伴う変化を図解付きで解説してくれる教授。
アノマロカリスが意外と可愛い。推せるな。
「うぃー。食べ過ぎたぜー。お腹苦しい……」
「お前、講義ちゃんと受けろよ。なんで一番後ろの席が良いとか言うのかと思ったら……」
いるよね。
後ろの席で居眠りしながら、出席確認ゲットしたらいなくなる学生。
高い授業料払っているのに、それで良いのかと俺は問いたい。
「うぐぅー。ちょっと上着を脱ぎまーす。秀亀、これ持っててー」
「ったく。寛容な教授で良かったな。そもそも人気のない講義だし、椅子に座ってりゃ寝てても良いとか。面白いのに。……お前、なんつー恰好してんの?」
「はにゃ?」
「うるせぇ!」
「なんだよー。わたしだってたまには可愛いリアクションとって、キャビキャビしたいじゃんかー」
「いや! タンクトップってそんななの!? えらいことになってんだが!!」
もう何と言ったらいいのか。
すげぇシルエットが自己主張して来るんだけど。
そんなもんをシャツの下に着てたの!?
相手が新菜じゃなきゃ、俺すぐに教室から飛び出すレベルなんだけど!!
「あー。これ? それがさー。S・М・L展開なんだよ。安物だからかね? で、わたし胸は大きいけど、他が痩せてんじゃん? とかいうと、まーたギャルたちのヘイト買うんだけど。別にわたしが好きでそーゆう体してるんじゃないから、いいじゃんねー?」
「つまり、Sサイズ買ったんだな?」
「そうだぜー。だって、Мだとお腹のとこに隙間できるんだもん。冷えるじゃん? わたし、お腹は夏でも重装備にしときたいんだよねー。けど、それ以外は暑いから薄着がいいのさー。ま、平気じゃん? そんなさ、人が何着てるかなんて気にしないっしょ?」
「嫌でも気になるわ!! お前、シャツ着てろ!! どんだけ無防備なんだよ! 男からしたら、絶対に凝視せざるを得んヤツじゃん! 何なら写真とか動画撮られるぞ!! 令和のご時世舐めんな!!」
新菜が「へへー」とはにかむ。
どうやら、俺の紳士っぷりにようやく気付いたらしい。
そうとも。
俺は紳士オブジェントルマン、小松秀亀。
親友がエロい目で周囲から見られることを良しとしない、日本男児よ。
「なるほどねー。分かる、分かる。わたしがセクシーな格好してて、秀亀が僧侶みたいな虚無の顔で隣を歩いてたら、ね? 秀亀がアンドロイドか何かと誤解されるもんね? ごめーん。配慮が足りなかったぜー。シャツ着まーす」
「……そういう考え方もできるんだ。心理学ってやっぱ奥が深いわ」
俺の善意が、友情が、なんか曲解された。
とはいえ、大学生活が充実しているのは新菜の存在が大きいのは間違いなく。
今日は久しぶりに心穏やかな1日を過ごすことができたのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おじさん! 新菜さんが、ブラトップとかいうの教えてくれたんですけど!! これ買ってもいいですか? なんかですね! ブラジャーしないで済むらしいんです!! 清純なまりっぺには白が似合うぜーって言ってくれて!! あと、Sサイズに挑戦しようって!! よく分かんないですけど、あたし今度のお休みに新菜さんとお買い物に行きたいです!!」
「ぜってぇダメ。家にいなさい」
ぼっち警察は俺の味方。
しかし、気まぐれにクーデターを起こしてくるので油断は禁物。
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