えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第47話 お忍び小春ちゃん ~ひとりでファミレス編~
第47話 お忍び小春ちゃん ~ひとりでファミレス編~
日曜日は朝からファミレス。
茉莉子には冷蔵庫に朝食のフレンチトーストと、昼食のチャーハンが入ってるから適当に食ってねと書置きをしておいた。
だってあの子、寝てるんだもん。
まあ、普段から学院生活でマリーさんやって疲れてるんだろうし、敢えて起こすのも気の毒だし。
もう昼前だから、そろそろ起きただろうか。
(おじさん! 緊急事態です!!)
噂をすればまりっぺテレパシー。
フレンチトーストが美味しかったとかだな。
なにせ、小林さんの家にお呼ばれして、お取り寄せグルメのフレンチトースト食わせてもらったからね。
「女房に内緒で買ったんだよ。小松くんと食べようと思ってね!」と誘われたら、そりゃもう馳せ参じるよ。
2人して「これ、卵の量ですかね?」「いや、バニラエッセンスじゃないかな?」と研究したから、絶対に美味しいヤツができた自信があるの。
で、美味しかった?
ああ、小林さんはマリーさんがお漏らしした時にお世話になった人だぞ。
旅行でバスの運転手してくれた。
(今から、おじさんのパンツ入ってる引き出しにメイプルシロップぶち込みますから)
発想が猟奇的なんだよ!!
何が気に障ったの!? おじさんのパンツは悪くないでしょ!?
(いつまで引っ張るんですかぁ!! 漏らしてないって言ってるでしょ!! あとぉ! なに内緒でフレンチトースト食べてるんですかぁ!! あたしも食べたかったですぅー!!)
だから、秀亀オリジナルを作ってあげたじゃん。
(ヒジキオリジナルより、本場のヤツが良かったですぅー! もぉー! あたしのファーストフレンチトーストが奪われたじゃないですかぁー! おじさんに!! これから先、あたしは一生フレンチトーストの基準がヒジキオリジナルになるんですよぉ!?)
何がいけないんだよ!
頑張って作ってやったのに!!
もうお漏らしの話蒸し返さないから、お前までヒジキって呼ぶのヤメて!!
(ところで、お昼はどこですか?)
いや、チャーハンがあるでしょうよ。
大盛りのヤツ。
(ほえ? あれは朝ごはんでは?)
フレンチトースト食っただろ。
(あれはデザートでは?)
嘘だろ! 食パン3枚使ったんだぞ!?
そりゃ胸も尻もデカくなるわ!! どこに消えてんの、そのカロリー!!
(んふふー。マリーさんのパーフェクトボディーにですかね!! それで、おじさん。お昼のご飯はどこですか?)
食ったならもうないよ!!
(えー!? カップ麺もないじゃないですかぁー!? あたし、お腹空いてるんですよ? むぅー。分かりました! 茉莉子クッキングします!!)
ヤメてくれ。
それやられて、フライパンがもう2つダメになってんだ。
(3度目は正直どうにかなって欲しいです!!)
三度目の正直のそんな嫌な誤用されたの初めて!!
ちょっと待ってろ!!
タイミングよく休憩時間がやって来たので、俺は急いでロッカーへ。
スマホを取るとスッスと操作して3秒で発信。
『ちょりっすぅー! どしたんすか?』
「桃さん! 悪いんだけどさ、暇だったらで良いんだけど!」
『おけまるっす! 日曜の昼とかオールフリーすよ。茉莉子さんのお世話っすね? 秒で支度して、マッハで行きますわ! 途中でお買い物もしとくんで! 秀亀さんの晩めすぃーも作っとくっす! あ、お金いっすよ! 次の月謝から引いとくっす! あとなんかご要望アリエッティっすか?』
「桃さんは絶対に良いお嫁さんになると思う」
レアピーチ駆け込み寺が始動したから、もう安心。
俺は夕方まで頑張るぞい。
「小松くん!!」
「はい! なんでしょうか、ボス!!」
「ロールスロイスが来たんだけど!!」
「へー。車が趣味のお客さんですかね?」
「バイトの子が言うには、新車で買うと6千万くらいするらしいんだよ!!」
「うわー! すごい! ファミレスに何しに来たんですかね?」
「小松秀亀さんはいらっしゃいますかって! 絶対に執事の人が2人! あと、いつか君の姪御さんと一緒に来た子が!!」
「すみません。俺のお客でした。行ってきます」
すぐに誰が来たか特定できたのはだね。
俺の交友関係が狭いんじゃなくて、小春ちゃんが突出してるからなんだよ。
走って駐車場に行くと、本当にじいやさんともう1人執事がいらっしゃった。
小春ちゃんが嬉しそうに車から出て来る。
「こんにちはー! ふふっ! 秀亀さん! 今日の私はお忍びです! 父に行先を告げずに出て来ちゃいました!! 悪いことしてるみたいでドキドキしますっ!!」
茉莉子、桃さん。
俺、今日こそ村越家に消されるかもしれん。
夕飯時になっても帰って来なかったら、ばあちゃんに電話して通夜の準備するように伝えといて。
死体ないかもしれんけど。
浜辺にいっぱいヒジキが打ち上げられてるから、それ代用品でいいよ。
坊さんのソロライブ聞かせてあげて。
◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はまず、じいやに抗議した。
「ダメじゃないですか! お父さんに内緒でお嬢様連れ出すとか!!」
「カマンベール伯爵、ご機嫌麗しゅう」
面倒くせぇな!!
ヒジキだよ!!
「ええ、ええ! ご機嫌麗しゅう! こめかみ、傷痕になっちゃいましたね」
「ほっほっほ。これは名誉の負傷ですゆえ。むしろ思い出と言う名の宝物です」
「スケボーでヤンチャして作った傷ですけど!?」
「ええ。ピリオドの向こうが見えました。あの時、確かに」
多分、ピリオド超えたら三途の川ってとこに着いたと思うんで、逝かなくて良かったですね。
じいやは「ご心配なさらず。本日は新しく雇ったボディーガードも連れてございます」と自信ありげに答えた。
確かに屈強なロマンスグレーの髪をオールバックで纏めた人がいる。
「ヒジキ様。お久しぶりでございます。私です」
「良男さんじゃん!! ロッテンの執事のセバスチャンに整形して潜入捜査してた! 良男さんじゃん!! ばあちゃんに3億で抱かれた人じゃん!! 何してんですか!?」
「ヒジキ様。世を忍ぶ仮の名はお控えください。私、少々ラスベガスでやらかしまして。ロッテンの家で鍛えた執事スキルを持って再就職いたしました。手に職をつけるものですな。はははっ」
またギャンブルで負けたのか、この人!!
手に職つける前に自制心を身に付けましょうよ!!
本当に良くない男だな、良男さん!!
スケボーではっちゃけるじいやと、ラスベガスでやらかすセバスチャン。
ダース・こはるんの手下もだいたいダークサイドに堕ちてるんだよ。
「秀亀さん! 今日は私! ひとりでお食事をしてみようかなって!!」
「うおっ、笑顔が眩し!! ……帰れって言えねぇ!!」
「あ! こちら! じいやと一緒に昨日、早速選んでみました! 先日のお礼です!」
「ありがとう。ええと、これは?」
「ダイヤの原石を散りばめた漬物石です! 秀亀さん、最近お漬物を始めたんですよね! 私、嬉しくって! じいやと一緒にはしゃいでしまいました! ふふっ!」
「これ換金しちゃダメかな」が最初に出て来た感想だった。
俺はどこで汚れちまったんだろう。
とりあえず漬物石を受け取って、俺は小春ちゃんをご案内する。
重てぇな!!
「いらっしゃいませ。マドモアゼル」
「……ボス? さっきまでパーカー着てませんでした? どこから出したんですか、そのスーツ」
「小松くん。失礼だよ。お店がなくなるよ」
「なるほど。確かにそうでした。俺のスーツもありますか?」
今日からうちのファミレスにはドレスコードができました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます