えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第35話 旅行の準備だ、女子高生チーム ~だいたい脱線するのがマリーの会~
第35話 旅行の準備だ、女子高生チーム ~だいたい脱線するのがマリーの会~
「せっかく秀亀さんとの旅行なんですし。可愛いヤツの方が良くないですか? いくら秀亀さんとは言え、男の人ですし。万が一、何かあるかもしれないですし」
「やー。甘いっすよ、こはるるーさん。旅行ってそれだけで雰囲気ブチアゲバイアスかかるんで! むしろ付け心地重視にしといた方がおけまるっす」
「そうですか? でも、やっぱり、やっぱり秀亀さんもギリギリ男の人なので! こう、盛り上がって来た時は視覚的な情報が最も興奮する要素になると思うんです!」
「それもアリアス。けど、考えて見て欲しいっす。うちのパパが言ってたんすけど、温泉旅行っすよね? 浴衣なんすよ。ナニの時って。ひん剥かれたら下は全裸がパティーンとして多いらしいんす。あと……」
「な、なんですか?」
「覚悟完了させて聞いて欲しのカービィっす」
「茉莉子さん。もう圧倒的な膨らみをお持ちなんで。ノーブラが最強なんすよ」
「あ……。私ってば、自分本位になっていました。はは。ステージが違いましたね」
居間をマリーの会に明け渡して、俺は自分の部屋で適当に支度をしている。
まあ1泊2日だし、行先も山の中でキャンプとかじゃなくて温泉宿。
何か不足があれば、今の時代その辺にあるコンビニでだいたい間に合う。
気負う事もないのだ。
(おじさーん!!)
なにかね。
やっと話し合い終わった?
何の話してたのか知らんけど。
(あたしのブラジャーについて激論が交わされてました!! 今は何故か、小春ちゃんと桃さんがちゃぶ台に頭めり込ませてます!!)
よっしゃ! 部屋に避難しといて良かった!!
そんな事だろうと思ったぜ!!
これまで女子との関わりが一切なかった俺の人生。
ファミレスの同僚の高柳さんとか、美人と接する機会はあったが、全て避けて来た。
知らない女子と話してると汗で背中びしょびしょになるもん!!
だが、茉莉子が家に来てから「茉莉子を経由したセットプレー」ならばまともなコミュニケーションが女子とも取れると分かり、そこから俺の経験値は増えるばかり。
もうレベルアップのファンファーレが止まらない。
今では「ああ。この空気は逃げないと流れ弾に当たって死ぬぞ」と悟れるほどになった。
これを成長と呼ばずして、何と表現すれば良いのか。
(それで、おじさんはどんなのがご希望ですか?)
どうでも良いよ。
(あー! 今のはひどいですー!! 女子に言ったら絶対ダメなヤツですぅー!!)
だってお前!
風呂から上がったら下着姿で平然と歩き回るじゃん!!
酷い時なんか「最近は夜でも暑い日がありますねー」とか言って、そのまま寝るじゃん!!
俺がやったらすぐに事案なのに!!
(なるほどー。つまり、おじさんはあたしの下着は全種類コンプリートしてるから、どれでも大好き! ってことですね!?)
もうそれで良いよ。
洗濯してるのも俺だし。
(2人にも伝えてあげなくてはですね! 不毛な戦いを終わらせるのです!!)
ちょっと! それはヤメて!!
避難先のシェルターに爆弾落ちて来るヤツだから!!
◆◇◆◇◆◇◆◇
急いで居間に戻ると、小春ちゃんが笑っていた。
もう怖い。
「そうですか。そうですよね。秀亀さんって、女の子が気を遣うところを全部無視して、自分色に染めるところありますもんね。けど、私は諦めませんから。見捨てませんよ。貧しい子はデコレーションで工夫するのに、そこを否定する冷血漢になんてさせませんから。ははっ」
もう何について語られているのかは理解したが、同時に何を答えても大怪我する未来も理解できてしまう。
経験値は増えれば良いって訳でもないんだなぁ。
「さーせん。ウチ、可もなく不可もない平凡な女で。ギャリーオンしたのも、そんな自分を変えたかったからなんすけど。ダメっすね。人間って中身っすもんね。どう着飾っても、中身の美しさは変わんねっすもん。ダメピーチですわ、ウチ」
ブラジャーの話で人間性に発展してんだけど!?
桃さんは充分に人間として魅力にあふれてるから、元気出してよ!!
それから、2人は化粧品だとか、コンタクトレンズの洗浄液のおススメだとかを取り出して、マリーさんを旅行女子へと進化させていく。
「おおー! こんな可愛い入れ物があるんですねー!! すごい、見てください! おじさん!! こんなの村では見た事ないですよ! 全部タッパーでしたもんね!!」
「……村?」
マリーさん、多分だけど小春ちゃんはそろそろ何かに気付き出してるぞ。
桃さんに至っては、全て把握したうえで付き合ってくれてる。
(そ、そんなはずないじゃないですかぁー! おじさんってば、女子とちょっと話すようになったからってー! すーぐ知ったかぶりするんですからぁー!!)
ちゃぶ台の上を見てごらん。
俺は裸眼で両目とも1.5の視力を持つ、目ん玉健康マン。
じゃあ、そのコンタクトレンズの洗浄液はどうして出て来たと思う?
(うぇぇー? なんでですかぁー?)
バカな子だよ。
お前のカラーコンタクトがバレてんだろ!!
(……えっ?)
お前、今日は茉莉子してたから慌ててコンタクト付けただろ?
(し、しましたけど!? ちゃ、ちゃんと付けましたもん!! 2人が来る前に!!)
片目だけな!!
オッドアイになってんの!!
(ま、またまたぁー!! ちょっと! おトイレ行ってきます!!)
駆けだしたマリーさん。
小春ちゃんが不思議そうな顔をする。
「あれ? マリーちゃん? どうしたんでしょうか?」
「トイレ我慢してたんじゃねぇかな」
「ウチは分かるっす。分かりみっす。ギャリーオンした頃よくやっちまってたっす」
しばらくしてから、マリーさんは眼帯を付けて戻って来た。
うちの子、バカだけど可愛いなぁ。
「す、すみません! 実はフランソワ家ではですね! 隠された力がありまして!! 満月の夜になると、目が黒くなるんですよ!!」
「マリー。三日月がそろそろ出てると思うから、外見てみ?」
「三日月の夜にも同じ現象が起きるんです! 驚かせてしまいましたよね!! すみません!!」
結構な頻度でオッドアイになる事になったけど、それで良いんだな!?
「そうだったんですか! 私、マリーちゃんってカラーコンタクトなのかと! なんだー! やっぱりフランソワ家ってすごいですね! あっ! だから秀亀さんは何も言わなかったんですか? さては、レアピさんも知ってましたね? もー。私だけ仲間外れですか?」
そうだった。
小春ちゃん、何でも信じるんだった。
「そろそろウチらはお暇するっすかね。バックホームして、相棒見ねぇとっすよ」
「えー? ご飯食べて行ってださいよー!!」
桃さんの気遣いをぶち壊すな!!
結局、2人は帰って行った。
マリーさんから戻った茉莉子の支度はまったく進んでおらず、結局俺が半分くらい担当する。
「あ! おじさん! これも持って行きます? 結局何なんですか、これ!」
「なに? レアピィィィィチ!! 置いて行きやがった!! それはアレだ! 田舎者が触ると、お肌が荒れるぞ!!」
「そうなんですか!? 怖いです!!」
ピンク色の箱は俺が預かっておく。
そうして、夜が明けると旅行の当日がやって来た。
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