えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第28話 「ハーレムじゃん! 羨ましい!!」と言える時点で、俺とは立っているステージが違うんだと哀しい瞳で語る秀亀くん ~恋バナ、大炎上~
第28話 「ハーレムじゃん! 羨ましい!!」と言える時点で、俺とは立っているステージが違うんだと哀しい瞳で語る秀亀くん ~恋バナ、大炎上~
気付けばサーロインステーキが人数分仕上がって皿に載っていた。
ついに俺は無我の境地に到達してしまったのか。
「小松くん! これ持って行ってあげて!! ほら! 君の分も私が焼いたから!! ね! みんなで食べておいで!! 厨房にはもう入らないで良いよ!!」
「店長……」
「ああ、うん。君だって調子が悪いことくらいあるもんね。気にしないでいいから! このくらい、保険で補償きくし!!」
「店長……!」
「余計なことしないでもらえます!? 今、ステーキなんか持って行けねぇタイミングなんですよ! 最も危ない子が残ってるんですから!! 下手したら俺、死にます!!」
「ええ!? なんで怒られたの、私!? ああ、そうか! 過労だ!! 働かせすぎたんだね! ごめん、小松くん! よし、一緒に労基行こう!! 私がエリアマネージャーにキレられるから、心配はいらないよ!!」
俺はとりあえず、サーロインステーキをラップで包んで冷蔵庫に放り込んだ。
これは持って帰ってから食べます。
さて、まだ肉はあったかな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
新菜が「ぜはははは!!」と豪快に笑っている。
その笑い方はヤメて?
そいつ出てくると、だいたい主要キャラが哀しいことになるから!
フランソワ海賊団、全員が懸賞金10億ベリー超えてんな!!
「いやいやいやー! まさかの秀亀! ハーレムじゃんかよー!! えー? マジかよー、あのぼっち童貞クソ筋肉会話淡泊カスヤロー!!」
お前! なんでそんなひでぇあだ名を瞬時に付けられるんだよ!!
荒ぶってた頃の有吉さんだってそこまでひでぇの付けてなかったぞ!?
俺のこと好きじゃなかったの!?
好きな子にいじわるするレベルじゃねぇ陰口なんだが!!
「あばばばばばばばば。あたしが軽い気持ちで提案したせいで、おじさんの寿命が減っていくのが見えます……。ごめんなさい、おじさん。一緒に死んであげたいけど、あたしも逝くとおじさんの事を覚えてる人、いなくなっちゃうし……。人って誰からも忘れられた時が本当の死らしいですから。……少しゆっくりしてから逝きますね!」
マリーさんはシミュレーションで俺の終活まで全部済ませてた。
俺のハーレムどこ行った!?
その世界ではもうみんな死んだの!?
レアピーチさんが静かになっている。
小春ちゃんは「ふふっ。そうなんですか。これが恋ですか。確かに、ドキドキします。傷つけ傷つけられるのが恋なんですね」と呟いている。
もう傷つけた自覚は芽生えてるんです!
つまり、これからずっと俺が傷つけられるターンなんでしょう!?
俺のシミュレーションでも俺が死にだしたんだけど!
自分でてめぇの人生信じられなくなったらマジで終わりだよ!
秀亀のヒデキ、まだ1度も感激してねぇんだけど!!
「やー。そのー。ウチが最後とか恐れ多いんでぇー。とりま、いっぺん秀亀さんが生涯終えるの見届けてから答え出すって形でファイナルアンサーいっすか?」
良くねぇよ?
君らのどのルートに行っても俺、早逝してるね?
健康なだけが取り柄なのに。
(何言ってるんですかぁー! すぐにお腹壊すくせにー!! あたしのご飯食べたら、3回に1度は5時間くらいゔゔゔ……って唸ってるじゃないですかー!)
イチロー選手なみの打率残してるお前の責任を少しは考えろ。
その立派な胸に手を当てて、色々と考えろ。
(ふむふむ。……なんだかんだ、お腹壊してまであたしのご飯食べてくれるおじさんって好きだなって思いました!)
純粋バカのマリーさんが1番可愛いんだけど!!
もう帰ろう! 御亀村にさ!!
2人で沢庵漬けようぜ!
不味くも美味くもねぇヤツ!!
(あ。ごめんなさい。東京には行きたいので。じゃあ、あたし独りで行ってきますから。先に帰っててくださいね)
15歳でその立派なスタイルと、15歳なのにそのアホ頭脳なんだぞ、お前!
東京行ったら、お土産にマリー主演のDVDが山ほど届くだろうが!!
ついに独占欲まで生まれて来ちゃった!
茉莉子、東京になんか行くな!!
「やー。んー。そっすねー。好きか嫌いかで言えばー。んんー。なんつったらいっすかねー。んんんー。言葉が見つかんねぇんすよねー。パナップなのは間違いねーんすけどー」
あ。
始まってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
桃さんはレアピーチ語で言葉を紡ぎ始めた。
(なんか桃さん、すっごく可愛い感じです! 瞳、ウルウルしてます!!)とかマリーさんリポートが入って来て、俺のメンタルがそろそろ死にそう。
「秀亀さんはこはるるーさんが言ったみてぇにいい人なんすよ。ただ、ちょ待てよ、してほしーんすけど、不器用だと思うんすよね。あの人って、とりま自分放置プレイして茉莉子さんのために尽くすパティーンありありアリーヴェデルチじゃないすか。そーゆうとこが誤解されたり6回されたりするんすよ」
よく分からんが、これ褒められてる?
「つまり、どーゆうことですか!? 何言ってるのか分かりません!」
うちのマリーさんは本当に賢いね。
俺が言いたい事をすぐに代弁してくれるもん!!
「や。あの、ウチみてぃなクソギャルモドキが言うのはマジおこがますぃーんすけど。中世ヨーロッパの奴隷ポジで良いんで、なんつーか恩返ししてぇって感じなバイブスで。ウチ、ゴミみたいな料理とかカスみたいな弁当くらいなら作れるし、秀亀さんを慕う茉莉子さんのホーリーパーリー空間には入らねぇんで。やー。下働きしてぇーなって」
「ふむふむ。レアぴっぴもそう来たかー」
「分かるんですか!? 新菜さん!!」
「うむ! 2割くらい!! 少し待ちたまえ、まりっぺ! 結論が出るぞ!! こはるんを見るのだ。もう遠く見つめたまま帰って来ないぜ!!」
「は、はい! 待ちます!!」
「あのー。初対面の時、ウチ見ても気さくに声かけてくれてぇ。なんか敬語で接してくれんじゃねっすか。ウチ、大事に扱われたこととかねぇんで、なんかもう、ハート沸騰しすぎて蒸発して、今は固形燃料に切り替えたんすけど。レアピーチって名前聞いて、秒でツッコミしてくれたのって秀亀さんだけなんすよね。フツー、半笑いされっか話題変えられっかなんでー。つまりー。まあ、そーゆう感じって言うか」
「あれ!? 新菜さん!? 結局分かりませんでしたけど!?」
「うむ! ぼっち警察でも解読できなかった!! で、レアぴっぴ! 得点は?」
桃さんは照れながら頭をかいたという。
そして、普通に答えた。
「あ。100点す。キャパいっす。会った時からオンリー100っす」
「……新菜さん。桃さん、なんかすっごく可愛いんですけど。あの、マリーの心がですね。桃さんにはゆとりある対応したら、おじさん取られる気がするんですけど?」
俺はとりあえず、サーロインステーキを焼き上げた。
よし。
運ぼう。
何も聞いていない体で!!
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お待たせしましてございます。こちら、当店で最高級のステーキでございます」
4人の前に肉と飯とスープを並べる。
全員が「わー」と歓声を上げて、食べ始めた。
そりゃそうだろうね。
恋バナ、もう2時間してるもん! 君たち!!
夜の11時だぞ!? 金曜の夜とは言え!!
お腹空いただろうよ!! 2時間客待たせたの初体験だよ、俺!
「うまー!! おりょ? 秀亀も座ってけよー! 一緒に食べようぜー!!」
新菜は良い。
なんだかんだ、友人枠から飛び出さなかった。
「わっ。美味しいです。これで2000円なんですか!? 私の家のメンドーサが食べてるご飯よりお安いのに! これ、秀亀さんの腕前ですね! ふふっ! ステキです!!」
(おじさん! メンドーサちゃんは小春ちゃんの家で飼ってる、なんかおっきいワンコです!!)
ああ、そう。
もうこの春霞のような笑顔を素直に受け取ることができないのは哀しいなって思ってたから、メンドーサについてはいいや。
「パナップっす! ウチが奢るって言ったのに、ゴチしてくれるとか! 秀亀さん神ってんなー!! ウチの尊敬する人はマジで何でもできるっすねー!!」
「お、おう。うん」
「どしたんすか? お腹痛い感じすか? 胃薬と整腸剤なら3種類ずつ持ってっすけど、飲むすか? とりま、おくすり手帳良いっすか? 飲み合わせ確認するんで」
こっちもしばらくちゃんと顔が見られそうにない!!
まっすぐに見つめて来んといて!!
もう本当にいい子だな!!
「俺! これから店長に土下座してくるから! みんなはゆっくり食ってろよ!! じゃあな!!」
「ありゃ。行っちゃった。秀亀に美少女4人組はまだ早すぎたかー」
それから俺はボスに謝罪し、向こう3か月の給料を返納してなんか知らないうちに被害が出ていた厨房の修理代に当てる事を誓った。
その時のボスの笑顔と「戻って来てくれてありがとう! 小松くん!!」という言葉は忘れられない。
というか、中年男性の笑顔で今日の記憶を抹消した。
俺、ファミレスの店長が多分好きなんだと思う。
何しても見捨てないんだもんね。
何したかよく覚えてないけどさ。
~~~~~~~~~
ついに10万文字を超えた……気がするのです……!!
予約投稿して足りてなかったら泣きながら追加を書きます!
次話は18時!
相変わらずの文字数特盛で申し訳ない!!
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