第26話 ファミレス貸し切って恋バナするマリーの会 ~秀亀くんには強制中継が行われます~

 気付けば女子が4人。

 うちのファミレスの制服を着ていた。


「んふふー。これはー! おじさんの宝物のグラビアによくあるヤツですねぇー!!」


 それはテレパシーで言えよ!!

 確かにもう隠してないけども!!


 ここで表明することでもないでしょうよ!!


「いやはやー。イマドキ、こんな視覚的に訴えて来る制服もなかなかないぜー。秀亀ぃ!! いいお店に勤めてるね!! 内緒にしときたい気持ち、分かるぜっ!!」

「うるせぇ! 俺は職場環境を1番にバイト先を選んでるの!!」


「その割には、視線がわたしの胸から動いていないぜ!!」


 ちくしょう!!

 大変よくお似合いだよ!!


 胸もデカけりゃ態度もデカい茉莉子と新菜。

 だが、こいつらは適当にリアクションを取っておけば勝手に満足してくれる。


 むしろ問題は残りの方。


「はは。すみません。私ってば、調子に乗りました。まさか、1番小さいサイズでも。ははは。こんなにブカブカなんですね。そっか。オーダーメイドって恵まれてるんですね。帰ったら執事やメイドのみんなに土下座して回ります」


 小春ちゃんのメンタルがもう見てらんないレベルになってる。

 だからヤメようって言ったんだよ、俺は。


 どうフォローしても俺が大怪我する未来が見えるから。

 だけど、フォローしなくても大怪我するんだよ。


 どうせ死ぬんだから、好きな死に方でいいよ! みたいな選択迫られることある!?


「小春ちゃん」

「あ。良いんです。私、もう秀亀さんにジェントルマンシップ求めてないですから。私、今でも秀亀さんがお兄さんだったらいいなって思ってますよ? お兄さんって、こんな風にデリカシーないんだろうなって思うと、リアリティあるなって」


 俺の評価、知らないうちに下がってない?

 心当たりがないんだけど。


(えっ。おじさん? 嘘ですよね? あたしの体操服持って、学院でテロ活動した時! 小春ちゃんの貧体を散々ディスったじゃないですかぁ!!)



「小春ちゃんは別に体が貧しい訳じゃねぇよ!! 発育不良なだけだろ!! ……あっ。ちが、違うんだ! 待って! 小春ちゃん!! 今のはマリーがね!! テレパシーで!!」

「……全然平気なので。はい。もう、ホント。お気遣いなく。はは。テレパシーってなんだかステキですね。使えたら楽しそう。だけど、マリーちゃんはそんな酷いことに使わないと思います。はは。秀亀さんはもう私のお兄さんです。そっか。ふふっ。こんな感じなんだー」


 マリーさんのキラーパスをうっかりシュートしてしまった件。



 だが、マリーの会による波状攻撃はまだ続いていた。

 なんだか視線を感じるなと思い振り返ると、桃さんが感情を失くしている。


「あ。さーせん。ウチみたいなギャリーオンしてるヤツがお清楚とおエロスを兼ね備えたこのパリピ服を着こなすとかマジ無理ぴなんで。秀亀さんが全然こっち向かねぇのも、納得なんで。あれっすよね。家庭教師してもらってる時もすよ。茉莉子さん見た回数が7になって、やっとウチを1回見るのが中央値なんすよね。さーせん。デカくもねぇし小さくもねぇ、ただただ個性のねぇーパンピー乳で。脱ぎますわ」


 桃さんに至っては、ただただコメントしにくいんだよ!

 この子、むちゃくちゃいい子なのに自己評価低いから!!


 思わず過剰に褒めたくなるけど、空気まで読めるもんで「あ。気ぃ遣わせてすまんティーっす」とか言ってしょんぼりするの!!


「桃さん。似合ってる。ギャルとうちの制服の組み合わせ、初めて見たけどさ。すごくいいね!!」

「マジすか。や。新菜署長や茉莉子さん差し置いて、それは恐れ多いんで。ごめんティーでオナシャス。なんか尖りたくてギャリーオンしたのに、気付いたらマリーの会の中でも最弱っすね、ウチ。さーせん」


 童貞には荷が重いな!

 ご飯作って来よう!!


 それから俺は「もう全部俺が奢るから! 好きなもの頼んで!!」と言うと、全員がサーロインステーキを選択した。

 なにこの子たち、そんなガッツリ食うの?


 だから育つんだよ。


 小春ちゃんの視線がなんだかアイスピックの先端で太ももぶっ刺されたみたいに痛かったので、「かしこまりした。お嬢様方」と最敬礼ののち、厨房へ避難した。


 俺、厨房が大好きになりそう!!



◆◇◆◇◆◇◆◇



 だが、厨房に逃げても一方的な情報が送信されてくるのである。

 うちのマリーさん、どんどんテレパシーの腕前上げているからね。


 最近は「効果範囲指定して、5人くらいまでなら声だけ拾えるようになったんですよぉ!!」とか、ノイズキャンセリングのイヤホンみたいな事までし始めた。

 マリー放送教とか作ればいいのに。


(残念でしたー! おじさんにしか通じないんですぅー!!)


 ああ、そうだった。

 便利なのに不便だなぁ。


(残念でしたー!! あたしはおじさんと繋がってればもう満足なので! 全然不便じゃないんですぅー!!)


 はいはい。ありがとう。

 愛してる。愛してる。


(んふふー! あっ! いいこと思いつきましたぁ!!)


 ヤメて!

 この流れでお前がいいことを思いつくはずがないの!!


「小松くん。お肉、ちょっといいヤツ出そうか?」

「うるせぇ!!」


「えっ、あっ!! ごめんね! 最高級品出すね! お金要らないから!!」

「違うんです、ボス! すみません! なんか俺、疲れてるみたいで!!」


「うん、それすっごく感じてるよ、私。休もう? シフト減らそう? 君に倒れられたらうち、大損害だからね。心療内科紹介しようか?」

「ここで働かせてください!!」


「ほらね!? もう情緒がまずいんだよ! 君、ついさっき辞めるって言ってたのに!! 心のケアをしよう! もちろん、労災認定するから!!」


 店長に優しくされているのに、俺の心は荒んだまま。

 何故か。


 テーブルでのやり取りが生放送されているから以外の理由はないね!!



◆◇◆◇◆◇◆◇



「恋バナをしましょう! 恋バナ!! あたしがお題出しまーす!! ズバリ! うちのおじさん大好き指数発表会!!」


 もうヤメてよぉぉぉ!!


 そういうヤツが気になるシーズンはさ、高校1年で終わってんの、俺!!

 今はもう、良く言われたら疑心暗鬼になるし、悪く言われたらそのままへこむの!!


 童貞拗らせたらその話題が既に毒なんだよ!!



 マリーさん!! あなた、熱帯魚の水槽にタバスコぶちこむタイプ!?



「はい! あたしはですね!! あ! 百点満点ですよ? んふふー。驚くと思うんですけど、結構高くてですねー。99点!!」


「そっすね」

「はい」

「知ってるぜー!!」


「なんでですかぁ!? あの! 1点足りないのはですね!」


「うっす。秀亀さんの好きなとこが今後見つかるカモノハシなヤツっす」

「これから先もたくさん良いところを見つけるための余白だよね!」

「何なら、やってしまいました! 5点くらい残しとかないと入りきりません!! とか可愛く考えてるとこまで把握済みだぜー!!」


 マリーさん通信が来た。

 来ると思った。


(おじさん! おじさん!! 皆さんがテレパシー使えるようになってますよ!!)


 その前にみんなの前で何を言っとるんだ、お前は!!



(えっ? ダメでした?)


 なにも言えねぇ!! なんだこいつ!!

 愛してるよ!!



 もうここは良い。

 予想通り。


 俺が女子の行動予想できるようになるとか奇跡だ。


「じゃあー! 時計回りでいきましょー!! お次は新菜さん!!」

「おっしゃー!! やったるぞい!!」


 ヤメてよ。

 女友達に男としての採点されるとか、マジでしんどいヤツ!!


 気まずくなるじゃん!


「秀亀はねー。ぼっち警察的には保護対象だかんなー。大好きかって聞かれると割と好きではあるんだがー。んー。恋バナだもんなー」


 長考されてるじゃん!!

 もうヤダ!! これで20点だね! とか言われるんだよ!!


「まー。そうねー。抱かれても良いくらいの好きはあるかな! なんかわたしら、相性良さそうだし? いつまでも童貞させとくのもかわいそーだし! 結構ね、あのごつい腕を枕にピロートークとかアリだなって思ってんの! 期待を込めて88点!!」


 後ろの方から、店長の慌てた声が聞こえる。

 何をそんなに叫んでいるんですか?


「小松くぅぅぅん!! 火が、火がぁぁぁ!! ちょ、スプリンクラー作動しちゃう規模の火柱になってるから!! 鬼滅の刃では君、水柱ぼっちでしょ!? 落ち着いて!!」


 すみません、店長。

 まだ2人残ってるので、ストレス値によっては店がですね。


 全焼も覚悟してもらえると、助かるかなって!




~~~~~~~~~

 次話は18時!!

 ストックはない! 時間もない!!

 進むしかない!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る