えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第16話 お嬢様になれなかった桃さん ~ギャルにもなれていないけれど、心は綺麗なレアピーチさん~
第16話 お嬢様になれなかった桃さん ~ギャルにもなれていないけれど、心は綺麗なレアピーチさん~
幻桃と書いてレアピーチさん。
既にたかが秀亀ごときでは太刀打ちできない次元に生きている女子だった。
(おじさん。この人は信じても良い人ですか!?)
うちのマリーさんは俺の背中にくっ付いてプルプル震えている。
もうゲームセンターに独りで行くんじゃないよ。
(だってぇ! るるぶに書いてあったんですぅ! ゲームセンターは今や、女子に向けたアミューズメント施設だって!! つまり、お嬢様として知っておいたらちょっと偉いお嬢様になれるじゃないですか!!)
あ。マウント取りたかったんだ、この子。
(むぅ。まーたやらしい隠語ですかぁ? 素直に胸って言えば良いじゃないですか。別にもう、隠したりしないのに。タッチ希望ですかぁ?)
ヤメろよ!!
マウント取るを「おっぱい見る」って解釈するのはお前だけだよ!!
今はポンコツマリーさんではなく、レアピーチさんにお礼をしなければ。
マリーさん状態の茉莉子が財布落として、拾われたのが学院の関係者だったら終わってたもの。
厚紙に「小松茉莉子」って書いてあるヤツ、中に入れさせてるからね、うちの子!
ついでに住所と家の固定電話の番号と、俺の携帯番号も!!
迷子対策で!!
「とりあえず、お茶でもどうでしょうか? ご馳走しますので」
「マジすか! 秀亀さん、ガチ優男っすね! ゴチになりやす!!」
「……おじさん。それってナンパの常套句でしょ? 知ってるんですよ?」
ごめん、茉莉子。
そこはマジでテレパシー使って。
変な空気になるから。
「マジすか。ウチ、ナンパされてたんすか? やー。えー。……あざっす」
そらご覧なさい!!
俺、もう気付いてんだからな! 桃さんはギャルじゃねぇって!!
とりあえず俺たちは少し歩いてドトールコーヒーへと向かった。
「おじさん! ここ詐欺です! コーヒーが300円もします!! ぼったくりです!!」
「ヤメろ! 入口で叫ぶな!! あああ、すみません! 違うんです! あの、ロイヤルミルクティーを! デカいヤツで!!」
人目を避けるようにして、俺たちは最奥の席へと避難をキメたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
レアピーチさんの制服は喜津音商業高校のもの。
ちなみに、俺は喜津音男子高校出身。
このご時世に男子校も女子校も存在するのが喜津音市。
「懐かしっすねー! 喜津音女学院の制服!! 思わず声かけちまったっすよー。テンアゲ!!」
「な、何言ってるのか分かりません……!!」
「あの、レアピーチさんは」
「
桃さんはいい子。
気遣いが半端じゃないもの。
「茉莉子さんって書いて、マリーさんっすよね? やー。同じキラキラネームだと思うと、ガチ放っとけなくて!」
「何を言っているのか分かりません……!!」
茉莉子のスマホを改めて確認する。
そう言えば小松茉莉子で登録して、よみがなの欄にマリー・フォン・フランソワって登録してあるんだった。
俺がそうした!! ははっ!!
(よく分からないですけど、あたしの世を忍ぶ仮の名前バレはおじさんのせいですね?)
違うぞ。
知らない人に簡単にスマホを差し出した茉莉子が悪いんだぞ。
俺も結構悪いけどね!! ははっ!!
「ウチ、中等部は喜津音女学院に通ってたんすよ! 今の高等部の三年生はウチの同級生っすね! 元!!」
(おじさん?)
ごめんなさい。
関係者の関係者とか言うアレじゃなくて、本物の学院関係者だった。
「よし! もう無理だ!! 桃さん! 大変申し訳ないんだが!! これ、内密にお願いできますか!! 2万円は財布に入ってます!!」
俺は桃さんに説明した。
全てを包み隠さずは無理だよ!?
茉莉子はマリーと名乗っているのは、出自を隠さなければいけないからであると。
なお、そんないい方したら「やべっ! 反社的なアレがナニしてると思われるかも!!」と気付き、最終的に「地中海のマフィアに命を狙われているので、茉莉子と名乗っております。俺の本名はヒデーキ・フォン・カマンベールです」と説明した。
茉莉子の視線が痛い。
分かっている。
俺、よく喜津音大学に入れたね!! バカなのかもしれない!!
茉莉子と同じレベルの設定しか作れなかったよ!! はははっ!!
「マジすか!! 大変なんすねー。カマンベール伯爵って呼んだ方がいっすか!?」
桃さん、ガチのマジでいい人。
テーブルに頭をこすりつけて「秀亀でお願いします。お金なら2万円あります」と懇願していると、ロイヤルミルクティーが運ばれて来た。
店員のお姉さんの汚物を見るような視線はしばらく忘れられそうにない。
「ええと、茉莉子? 桃さんは先輩だから。色々と教えてもらえる事もあるかもだし。ひれ伏そう!!」
「は、はい!! 桃さん、あたし! 屈します!!」
「ちょちょ、ヤメなー! ウチ、学院の空気合わなくて辞めたんす! でぇ! ギャルデビューしようと思って! 今じゃ立派なギャルっすわ!」
「ああ、はい。見た目は完璧ですね」
「えっ? 見た目だけ? いや、べしゃりもパーペキっすよね!?」
「ハッキリ申し上げた方が良いと思うので、言いますね? 桃さん、ギャル語を1つ口にする間に、全然違うジャンルの単語が5つくらい出て来てます。俺も詳しくないですけど、令和のギャルってケー番とかパーペキとか言わないと思うんです」
「マジすか……?」
「恐らく……」
「あたし、全ての言葉が理解できません!!」
もしかすると、俺たちってバカのグループなのかもしれない。
桃さんは「だからっすか。今の学校でも浮いてんすよ、ウチ」と頭をかいた。
彼女のお母さんがギャルだったとの事で、学院を辞めてからギャルとしての振る舞いを学んだのだとか。
その情報、多分古いですね。
「やー! でもっすよ? ママ、マジでギャルなんすよ? 若い頃とかガチで! ウチが相談したら、レアピもギャリーオンしちゃえよ!! って言ってましたし!」
ギャルデビューをギャリーオンって表現してた時代が日本にはあるのかな!?
「怪訝な顔されてる!? だって! ウチの名前、幻桃っすけど! これママが役所で
「まさか、ロリピーチですか?」
桃さんは「んな訳ないっしょ!」と笑うので、俺も「ですよね!」と応じた。
「ロリビッチっす!」
「笑えねぇよ!! お母さんの一存で!? 俺が父親だったら娘連れて逃げますよ!? あ! すみません!! よそのご家庭についてよく知りもせず、これは失礼でした!!」
桃さんは「桶丸スイセンっすよ!」と親指を立てる。
多分それも微妙に間違ってる。
「パパもギャルソンなんで!」
「ああ、レストランにお勤めなんですか?」
「や? ホストっす! ギャルの男版らしいっすよ? 秀亀さんご存じない?」
「それギャル男だよ!! 桃さんのお宅、頭悪いなぁ!! すみません!!」
失礼なツッコミをする度に頭を下げる俺。
だって拾えるの俺だけなんだから仕方ないじゃないか。
茉莉子?
さっきからロイヤルミルクティーを小指立てて飲んでて、幸せそうだけど?
「つか、秀亀さんって喜津音大学なんすよね? ウチの志望大学なんすよ!!」
「あ、そうなんですか。……手前味噌なんですが、うちの大学そこそこ偏差値高いですよ?」
「うっす! こないだの模試、Z判定だったんで!」
「そんな判定ねぇよ!!」
「塾のセンセが苦しそうに自分で書いてくれたんすよ! 特別なんだなって!」
「ああ……」
こんなに優しい人が、絶対に浪人になる未来があっても良いのだろうか。
(おじさん! あたしにお任せです!!)
茉莉子はロイヤルミルクティー飲んでなさいよ。
「桃さん! うちのおじさん、すっごく頭良いんですよ!」
「そっすね! パナップだって感じてるっす!」
多分、半端ない的なアレだろう。
ありがとう。美味しいよね、パナップ。
「家庭教師にどうですか? んふふー。ちょっとお高いですけどー。でも、現役の志望大学の学生ですよー? 童貞だし、おじさんの魂と肉体を既にあたしが予約済みなので身の安全もバッチリ!!」
「マジすか!! オナシャス!! ウチのうち、結構金あんで!! パパがナンバーワンホストなもんで!! 年収2兆くらいヨユーっす!!」
「すげぇな桃さんの家、野球チーム買えちゃうよ!! って、ちょっと待て! そんな、ここだけで纏めて良い話じゃないだろ!! 桃さんだってまだ高校生なん」
スマホを印籠のように掲げる桃さん。
そこには「1時間2万円でヨロピコ!! ママ上より!」と表示されていた。
「……ふぅー。……俺の指導は厳しいぞ!! ついて来られるか、桃さん!!」
「あじゃじゃっす!! 誠心誠意、ガチります!!」
こうして、俺と茉莉子はまた嘘を重ねた。
だが高額時給のアルバイトをゲットしてしまったので、こうなると少しくらいギャリーオンするのもやぶさかではないのである。
~~~~~~~~~
ストックがいよいよ土俵際です!!
1話の文字数を減らせば良いとお思いですよね!
それだと月末までに100000文字の方が土俵際なんです!
詰みそう!!
そして次話は18時!!
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