えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第7話 とってもピュアな小春ちゃん ~お嬢様のお友達連れて来たので、今日は家でもマリーさん~
第7話 とってもピュアな小春ちゃん ~お嬢様のお友達連れて来たので、今日は家でもマリーさん~
大学生の春休みは長い。
つまり、俺にとっては稼ぎ時。
茉莉子も学校に行っているし、思う存分アルバイトに精が出せる。
なにせ、小松家から必要最低限の仕送りはあるが喜津音女学院の経費に全部持っていかれるので、単純に茉莉子の食費分がこの春から増えた。
ばあちゃんの計算が甘いのか、敢えて仕送り減らして楽しんでいるのか。
答えが出ている問題についての考察も嫌いじゃないが、ばあちゃんのエンターテインメント性について考えるのは時間の無駄である。
今日はファミレスの厨房で朝からみっちり働いて、16時前に帰宅。
とりあえずシャワーを浴びてから、晩飯の支度をしよう。
(おじさん!! おじさーん!! 応答してくださーい!!)
うるせぇ!!
かつてないボリュームのテレパシーが俺の脳内を襲った。
頭の中に声がダイレクトアタックされるのにボリュームの概念があるのは不思議でならないが、テレパシーを使う予定はこの先もないので割とどうでも良い。
(それはあたしのテンションです! 気合入れると大きくなるっぽいです!!)
なるほど。
念を飛ばすわけだから、念じる力を気合と考えればそれも道理かもしれない。
勉強になった。
(勉強してる場合じゃないんですよ!! あの! 今って何してますか!? おうちにいます!?)
勤労学生を労ってくれるのだろうか。
アルバイトを終えて帰ったばかりだと知れば、きっとうちのご令嬢は何かお土産を買って来てくれるはず。
(……いるんですか!?)
なにこの反応!
いるよ! 俺の家だもの!!
どうせ「おばあちゃんの家です!」とか言うんでしょ!?
(今すぐ、スーツに着替えてください!!)
「なんでだよ!! 汗だくなのに!! 想定外過ぎておじさん頭が沸騰しそう!!」
おっと、声に出してしまった。
最近は茉莉子のテレパシーにも慣れて来たので、このように声が出る場合もある。
外でやらかすと痛い人認定を喰らうので、屋内限定。
外出時にリアクションが取りたくなった場合はスマホを耳に当てると対策完了。
令和はテレパシー使いにも優しい時代である。
(お友達が! お友達がぁぁ!! うちに寄りたいって言うんですよ!! とってもいい子なので、世を忍ぶあばら屋で市井の生活を学んでいる設定を鵜呑みにしてくれました!! なので! あとはしょっぱいおじさんだけなんです!!)
お友達と俺がひどい言われよう。
鵜呑みって、お前。もう少し表現があるじゃないか。
(で! おじさんの今の恰好は!?)
シャワー浴びる寸前だから、全裸だけど。
(何やってるんですかぁ!? こんな時間から全裸って! 正気ですか!?)
「シャワー浴びるのに服着てる方がおかしいだろうが!! あと、その言い方だと夜は全裸みたいになるからヤメろよ!!」
その後「20秒でシャワーを終えてください」と、ドーラおば様だってもう少し優しい指示をくれるであろうタイトなスケジュールを命じられて、俺は浴室に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ただいま帰りましたわー。おじ様ー? よしなにー?」
「し、失礼します。急に押しかけてしまって申し訳ありません……」
茉莉子が友達をこんなに早く作れるとは、俺も嬉しい。
存分におもてなしをしなければ。
「いらっしゃい! いやー! ごめんね、今シャワー浴びたとこでぶべぇぇぇ」
「なーにやってんですのぉぉ!! あ゛っ! 小春ちゃん、少しばかりお待ちくださいねー。ちょっとアレがナニしてましたのでー。あはははー」
ちゃんと呼び鈴が鳴ってから急いでジャージを穿いたのに、なんか蹴り飛ばされた。
「上半身!! 裸じゃないですかぁ!! バカぁ!! 蹴り飛ばされただけで良しと思ってください!! アメリカだったら発砲してますよ!?」
「いだだだだ!! いや、急いだ結果がこれなんだもん! 仕方ないじゃん!!」
おじ様に跨って、侯爵令嬢がポカポカとリズミカルに、俺の剥き出しの胸板と乳首で太鼓の達人してる現状の方がよほどヤバいと伝えたい。
こんな時だけテレパシーが不通になるのは何故なのか。
「ま、待って! 茉莉子! お前スカートだから!! もうなんつーか!! すげぇ色々見えてんだけど!! お嬢様としてそれは良いのか!?」
「はぁぁ!? 今さら、パンツ見られるくらいなんだって言うんですかぁ!! おじさんの乳首見られる方がよっぽど恥ずかしいですよ!! すぐに服着て!! 早く!!」
マリーさん、羞恥心を捨てる。
自分のパンツと他人の乳首で恥ずかしさの配分比率間違ってると思う。
それから俺はシャツを着せられ、ネクタイで首を絞められた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お、お待たせですー。ささ、小春ちゃん。どうぞー!! きったない家ですけど!!」
「お邪魔します。マリーちゃん? あの、そちらが噂のおじ様かな?」
「どうも! おじ様です!!」
「あっ! はじめまして! 私、
「小春ちゃんね。俺は小松秀亀。よろしく。まあ上がってちょうだぁぁぁ!! ああああ!! これぇぇぇぇ!! すっごく高いお漬物じゃん!! ええっ!? 申し訳ないよ!! 小春ちゃん! これはもらえない!! 俺の日給と同じくらいするもの!! 小春ちゃん!! ダメだって!! ……じゃあ、もらうよ!?」
(なんですか、その興奮!? あたしの制服とかパンツ見た時の比じゃないのがすっごくムカつきます!! バカおじさん!! 小春ちゃんビックリしてるでしょ!!)
いや、だって、マリーさんや。これご覧なさいよ。
デパ地下でも売ってない、超高級なお漬物なんだってば。
俺、漬物大好きだから知ってるの。
これ、皇室御用達のヤツだから。
君の制服は毎日見てるし、君のパンツは毎日洗ってるもん。
「あ、ええと、お気になさらず! うちの商品を持って来ただけですので! というか、お土産に自分の家の売り物を持って来るのって、よく考えたら失礼ですよね!? す、すみません! 持って帰ります!!」
「待ってぇ!! 食べたい! 持って帰らんとって!! せめて、一口テイスティングさせて!! お願い、小春ちゃん!!」
(あ゛っ!! よく見たら、なんで下はジャージのままなんですかぁ!? 漬物なんてどうでも良いので、着替えてください!! 変態じゃないですか!!)
それどころじゃない!
漬物が帰る!!
(あたしの初のお嬢様友達を漬物って呼ばないでもらえます!? うぁぁぁ! 最悪ですよぉ!! どうしてくれるんですかぁ!!)
確かに、よく考えるとここで小春ちゃんの機嫌を損ねると漬物まで帰ってしまう。
俺は紳士的に微笑んだ。
「どうぞ、お上がりください。マドモアゼル。スリッパは俺の分とマリーの分しかありませんが。どっち使います? じゃあ、俺が愛用している方を差し上げましょう!」
「差し上げるなぁ!! ご、ごめんなさい! 小春ちゃん!! 違うんですよ、これは!! おじさん、今日はちょっと調子が悪いみたいで!! 普段はちゃんとね、タキシード着てるんです! 常にバラ咥えてるんです!!」
小春ちゃんは「ふふっ」と朗らかに笑うと続けた。
「とっても賑やかで、優しそうな人ですね! ええと、秀亀さんとお呼びしても? 薔薇はがお好きなんですね! 次は薔薇を手土産に伺います!」
「漬物も素晴らしければ、漬けてる子も優しい!! よし! 晩御飯食べて行きなさいな!! 秀亀さんね、張り切っちゃう!! あとね! 秀亀、薔薇はいらねぇな!!」
「良いんですか!? 私、実はお友達の家でお食事を頂くのって初めてで!! わぁー! 嬉しいです!! やたっ!! ふふっ! じいやに連絡します!!」
「よし! 何があったかな! 冷蔵庫見てもないけど! 最悪、ご飯と漬物でも余裕でご馳走だから当たり判定広くていいね!!」
静かになった我が家のマリーさん。
口から魂が出ているように見えたが、気のせいだろう。
今日はガチのお嬢様。小春ちゃんが来てくれた記念日。
楽しくやろうじゃないか。
~~~~~~~~~
明日も2話更新!
12時と18時です!
ラブコメの割に文字数ギッチギチなのは迫りくる月末とのせめぎ合いのためです。
申し訳ございません!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます