第4話 翔子あてもなく函館へ

 その頃、東京渋谷区にあるトーレンコーポレーション十階建ての自社ビル七階にある総務課の課長は苦り切った顔をして部下の吉田を呼んだ。

「おい確か中川翔子は休暇日程が過ぎたのに出社してないじゃないか。一体どうなっているんだ。連絡はないのか」

「あっハイ、同期の佐々木加奈が電話したそうですが電源が切られていて出なそうです。またメールも同様返事がないとか」

「一体どうしたと言うのだ。無断欠勤が三日続けば解雇の対象になる事を知って居るのか」


「普段は真面目で仕事も良くやる子なんですが、まさか事故に合ったとか」

「仕方ない、あと三日待とうしかし其処までだ。その後連絡なければ解雇手続きをしたまえ」

翔子は岩手県一戸駅から上りの電車に乗った。盛岡駅まで約一時間二十分ある。翔子は再びスマートフォンの電源を入れた。佐々木加奈からメールが三本も入っている。内容は全て同じだった。

『翔子、課長が怒っているわよ。これまでの功績を考慮してあと三日だけ待ちそうよ。その間に連絡がなければ解雇手続きに入るそうよ。何があったか知らないけど、この就職難に仕事を捨てることないでしょう。連絡至急してね』


 それだけ読むとまた電源を切った。暫くして電車は盛岡駅に着いた。東京行きの新幹線に乗るのかと思ったら下りの新幹線、新函館北斗駅に行きに乗った。勿論予定がある訳ではない、ただの逃避行だ。新函館北斗駅から札幌方面に行くかそのまま函館駅に行くか決めかねている。新函館北斗駅のホームに出ると数人の警察官が立って居た。

翔子は少し青ざめたが、此処で逃げれば怪しまれる。平静を装って改札口方面に歩く。だが警察官二人が翔子の方へやって来る。心臓がドクドクと音を立てて聞こえるほど動揺した。


つづく

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