第37話 ハレルヤ!


 「審判を申し渡す」


「はい!」


おごそかな気持ちになるものだわ。


お願い神様!


「マリーや?わたしが、その神様だよ」


「あっ!ええっーと?」


「まぁいい、習慣だからな、しょうがない。ウッホン。では、気を取り直して、マリー・へスぺリデス、お前は、使になりなさい」


「えっ?ちぇっと!わたしの願いきいてました!?」


「天使に決定!」


「よかったな。喜べよ」


天使は、わたしの肩を励ますようにポンポンとたたいた。


「ちがいます!わたしは!!」


「マリー、お前のような心根こころねの面白い、いや、清き心根をもつ者は、天使になりなさい。人間ではやりづらかろう?」


「そんな!ちがいます!わたしは……」


「大丈夫じゃ。オイジュスとエリスは、地獄行き」


「それは……」


「妥当だろう?」


「まぁ……」


「では、終わりだ」


「ちょっと、まってください!!神様!」


「なんだ?」


「わたしは、天使になれません!!」


「どうしてじゃ?」


「天使じゃ、アスタロト様のそばにいられないでしょう!?」


「アスタロトのもとに帰してやるから心配するな。悪魔の下で修業したり、ご飯食べたり、お花植えたり楽しかったのだろう?」


「それは、はい……」


「よかったな」


「そうじゃなくて!?」


「なんだ?なにか問題か?」


「わたし、になりたいの!!」


「悪魔の?」


「そうです!」


「ルシファーか?」


「ちがいます!」


「悪魔侯爵タロウ・アスタロトの花嫁にです」


「そうか、そうか。わかっているよ」


「だって、天使にって、おっしゃったじゃありませんか!?」


「マリー。天使はなにも、神様のそばにいなくちゃいけないわけでもない。地上にもいるだろ天使。だから、お前はな、アスタロトのそばにいればいい。悪魔をビシビシ指導する天使がいてもいいだろう?」


「それって……」


「マリーよ!お前は、天使となり、その新たな姿のままにアスタロトの元へ戻り、アスタロトを癒してあげなさい」


「神様!!」


「そして、アスタロトが自信満々の高慢ちき悪魔に早く戻れるよう、尻に敷いて、ビシビシ鍛え直してあげなさい」


「神様ありがとうございます!!」


「まぁ、花嫁になれるかどうかは、わからんがね……」


神様の最後の御言葉は、背をむけられていたせいで、よく聞こえなかった。


悪魔じゃなくても、アスタロト様のもとに戻れるなら、それでいいとしよう!


幸い、アスタロト様は、わたしに天使になるように勧めてくれていたから、彼の面子めんつもたつから帰っても、大目玉を食らわないで済むだろうし。


一挙両得!!


「ハレルヤ……?」


口の悪い天使は、首をかしげ、やや怪訝けげんそうに宣言した。


どこからか、ワンテンポずれてラッパの音が響き渡った。


その瞬間、わたさいがいた地面が、ガバット二つにわれた。


まるで落とし穴が開いたかのように。


わたしは、底知れぬ場所へ堕ちて行った。



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