第19話 出発の日
◇第十九話 出発の日
翌日、早朝。
わたしたちは広場の馬車に荷物を積み込み、出発の準備を整えました。広場には村人総出でお見送りに来てくれてます。
お母さんたちがお野菜を沢山持ってきてくださり、ありがたく頂戴しました。――特にあの白菜に似たお野菜、超嬉しいのです! これでまたCVW特製ちゃんこが作れます!
「この道の先で分岐を右に辿っていけば、馬車で十日ほどで隣町のべクセンに着く。魔物は君たちが倒してくれたので心配ないだろう」
「ちぇ〜魔物出ないのかよ〜、つまんね」
「こらアカネ」
「ハハハ、君たちには本当に世話になった、ありがとう。何度お礼をしてもしきれない。いつでも戻ってきてくれ、歓迎するぞ」
「ありがとうございます村長、警吏殿、それからダルカ村の皆さん、こちらこそお世話になりました。私たちはこの村のことを生涯忘れないでしょう」
千葉さんが代表して村の皆さんにお礼を述べ、お別れの挨拶を交わしました。
「ノノお姉ちゃん、行っちゃうの?」
「うん、寂しいけど、元気でね! アビィちゃんならきっとわたしより強くなれるよ!」
「アビィ、フク置いてってやるから元気出せや!」
「おい待てこらアカネ! 冗談でも言っていいタイミングってのがあるだろうが!」
「え? フクシャチョーここにいてくれるの?」
「ホラみてみぃ、本気にしただろうが!」
「あ、あのね、アビィちゃん、副社長さんは……」
「……いてくれたらうれしいけど、フクシャチョーはノノお姉ちゃんのそばにいてあげて」
「お、おう……なんか今日はやけに素直だな?」
「わたしはお母さんとおじいちゃんとデニウスたちもいるし、村のみんなもいるからだいじょうぶ。フクシャチョーは、ノノお姉ちゃんたちがケガしたときになおしてあげて」
「アビィちゃん……」
「アビィ、おまえ強いな! こりゃほんとにののより強くなるかもしれねーな、うかうかしてらんねーぞのの!」
わたしが感激して抱きしめたアビィちゃんの頭をアカネちゃんがくしゃくしゃと撫でました。
「さよ〜ならぁ〜〜〜!!」
「お姉ちゃんたち〜〜! ありがと〜〜〜!!」
「また戻ってきな〜〜〜!!」
「チバエレナさぁ〜〜〜ん!!」
「プロレス興行頑張れよぉ〜〜!」
「ノノお姉ちゃ〜〜ん! わたし、お姉ちゃんみたく強くなるからぁ〜〜!!」
「さよなら〜〜〜!!」
皆さんの声を聞きながら、わたしたちは村を後にしました。
目指すは隣町のベクセン。そこには商業ギルドがあるそうなので、登録しておくと良いとダリウスさんが教えてくれました。
御者席には千葉さんとラトさん。荷台後部席はアカネちゃんとわたしと副社長さんで、いつもの配置で座っています。ラトさんが御者しながらアカネちゃんに話しかけました。
「せっかくファンタジーな世界に来たんやから、冒険者ギルドに行って登録するイベントは抑えとかなあかんポイントやねぇ」
「フッフッフ、
「ベクセンまでは馬車で十日ほどかかると言っていたな。それならば道すがらしっかり練習メニューもこなして、十日以上かかっても慌てずゆっくり行こう」
「うげ……そこはあんまりじっくりしなくても千葉さん〜」
「ま〜たアカネのサボリ癖が始まったな」
「ちがうぜフク! ワレワレは町に着いたらやる事があるんだ! ギルド登録して、冒険者試験でギルマスと決闘すんだよ、な〜ラト!」
「せやでぇ〜、あとガラの悪ぃにーさんにも絡まれて、撃退するゆぅのもお約束やねぇ」
「えぇ〜!? 絡まれないとダメなんですか? もしかして冒険者ギルドって怖いとこです?」
「待て待てお前たち、商業ギルドでCVWをプロレス興行団体として認可してもらうのが先だぞ」
「そ、そうですよね! 町だったら広場とかで、リング設置してプロレスできますよね?」
「そうだな、そういう場所があれば良いな」
「ウチ、ダルカ村でマットプロレスやって思うたんやけど、正直四人やと手が足りへんわ、スタッフとかせめてあと二、三人は欲しいなぁ」
「ハイハァーイ! アタシいーこと思いついた!」
「何だアカネ?」
「いっそのこと、
「ぇええ〜〜!? そんなの敵うわけないよ!?」
――い、いきなり何言ってんのアカネちゃん!!
「それええな、虎人族とか竜人族とかも居たらおもろいやん〜」
――えええ!? ラトさんまで……
「…………それはモンスターでは無いのか?」
――そう! そうですよね千葉さん!
「そーなんスけど、ちがうっス千葉さん。エルフとか、ドワーフとかいるっスよね?」
――あ、なんかもう普通にいる事決定な感じなんだねアカネちゃん……。
「それみたくトラ人間とか、リュウ人間とかもファンタジーじゃ良く出てくるんス」
「まぁオーガやらサイクロプスみたいなんは凶暴やろうし、話が通じるかど〜かってとこやねぇ。でもヒール軍作れたらおもろそうやんねぇ」
――いやいやいや、ラトさん、それはちょっといくら何でも……
「……あの、せめて、人間の募集にしませんか?」
「そうだな」
――うんうん、そうですよね千葉さん!
「話が通じるのなら、そういった異種族にも興味が沸くな。それぞれ種族固有の能力も高そうだし、面白い闘いができそうだ」
――――ヒィぃぃい、ち、千葉さん!? ななななに言っちゃっちゃってくれちゃってますかぁ!??
「っスよねー! すんげー面白い試合になると思うっスよ! もう超人レスリングっスよ!!」
「いっその事、牙とか爪とかあるんやから魔法も有りゆ〜のもおもろいかもしれへんねぇ」
――――わ、忘れてました……みんな
「あああああの、それはゆくゆく、団体が大きくなったら〜って感じで、まずはそのぉ……普通に人を募集しましょう? ね?」
「確かに。まずは地にしっかり足をつけて経営戦略を練らないと、資金も限られているし、ただでさえ異世界の知識が不足しているのだから、その辺も踏まえて人員を増やせれば良いのだが」
「そうですよ、ね? 副社長さんも、そう思いますよね? ね?」
「ま〜そうだな〜、オレは人間の生活圏には疎いからな、その辺は商人とか、商売に詳しい人間を探すのがいいだろうな」
「まずは商業ギルドで相談してみるゆぅ感じですねぇ」
「あと冒険者ギルドもっスよ! 絶対入ったほーがいいっスよ! 人助けするのも、魔物の素材売ってカネにするのも冒険者登録ひつよ〜っスよ!」
「わかったわかった、ベクセンに着いたら、まず商業登録、それから冒険者登録をしよう。今回みたいに人助けで魔物退治をするにも、冒険者登録していた方が動きやすいだろうしな」
「さすが千葉さんっス! 話がわかる〜!」
「お前たちが
「わたしも人助けができるのは嬉しいですけど、怖いのはちょっと……」
「のの、アタシたちは強いんだ、もっと自信を持てって!」
「そうだな、普通にプロレスだったとしても、そこは日々の鍛錬で自信をつけていくしか無いんだ。練習は裏切らない」
「せやでのの、ここからウチらの本当の冒険が始まるんやでぇ、楽しまなぁもったいないでぇ」
「は、はい……そう、ですね」
「ほら笑えのの〜〜!」
「うわやめあかねちあひゃはひゃはにゃやだyなにゃはばミサmdkフォdかfjこ……」
これからどんな事が待っているのか、怖いけど、ちょっと楽しみなのです。
異世界興行CVW @three_piece_Grizzly
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