第17話 初興行(2)
◇第十七話 初興行(2)
千葉さんの挨拶で拍手と歓声が上がる中、最初のカードはアカネちゃんとわたしです。……お客さんが近くて緊張しているのですが、そんな間もなくラトさんの選手紹介アナウンスが響きました。
『選手入場〜! 153センチ、42キロ〜、常敗の妖精〜、の〜のぉーーーー!!』
わたしは慌ててマットの上に上がり、早着替えスキルでジャージから素早くリングコスチュームに着替え、村の皆さんにお辞儀をしてから手を振りました。一瞬で衣装をチェンジするスキルは、昨日見たこともある人もいますが、やはり驚きの歓声が上がります。
『160センチ、52キロ〜、紅のダイナマイト、AKA〜NEーーーー!!』
続いてアカネちゃんがコールされると、何と軽くステップして側転から伸身宙返り捻りへ繋いで、空中で速着替えをしながらマットインしました! これにはみんな大歓声で「AKANE」コールが起こります!――アカネちゃん、凄い! カッコイイのです!!
『レフェリーは副社長はん〜! 実況・解説はエレガンス千葉とウチ、タイガーラトで行いますさかい、よろしゅう。ほな試合開始やでぇ〜』
カァーーーーーーン!!
ゴングです! 開幕いきなりアカネちゃんのラリアットが飛んできて、防いだものの衝撃でわたしは空中を回転してうつ伏せにダウンしました!
『ぉおっと〜AKANE選手、いきなりの必殺AKANEラリアット! 強〜烈やわぁ〜、のの選手、くるっと一回転してもうた〜!』
――つ、強いです! でも……わたしも女神様の加護をもらって強くなってるのだから、今日こそは……勝ちたいのです!
アカネちゃんに頭を掴まれて起こされると同時に首相撲から膝蹴り、片手で抑えられてエルボーを首筋に連打され、ふらついて離れたわたしは、高い打点のその場跳びドロップキックを食らって吹き飛ばされました。
『ぉお〜、今度はニーバットからエルボーバットでふらつかせての翔激AKANEドロップキック! たまらずのの選手ダウン〜! えげつないAKANE選手の猛攻や〜』
『AKANEは打撃が得意で攻撃力が強い。一方ののは防御が堅い。とは言え早く体制を立て直さないと防戦一方だな、一本勝ちルールでは無いので、怯まずに反撃してほしいところだ』
「うぉおおーー! すげーぞプロレス!!」
「A・KA・NE! A・KA・NE!」
「アカネー! いけー!」
「ちっこいお嬢ちゃんも負けるなー!」
「ノノお姉ちゃーん! ガンバレーー!!」
わたしは何とか立ち上がり、自分の両頬を叩いて気合いを入れ直します。――まだまだ、これからなのです!
今度はアカネちゃんはじっくりと動かずに構えて、手四つのチカラ比べに誘ってきたので、わたしもそれに応えます。
『AKANE対のののチカラ比べやぁ〜! AKANE選手の押し込みにたまらず仰け反るのの選手〜! 堪え切れるんかぁ!?』
やっぱりチカラでアカネちゃんには敵わないです……でも負けたくないのです!
『反撃のヘッドバットぉ〜! 自分で攻撃して痛そうのの選手! しかしAKANE選手構わずそのまま
『さらにスリーパーホールドに繋げたな。AKANEはセンスで闘うタイプで、好不調の波があるが、今回はスムーズな連携ができている』
『お客さんにも分かりやすぅ説明するとな、スリーパーは相手を苦しませんで気絶させる技やねん。逆にチョークスリーパーゆぅて、苦しめて気絶さす技もあるんよぉ』
アカネちゃんの一連の攻撃になす術がないわたしです……あ、やばいです、スリーパーでなんか……落ちそう。。……わたしは無意識にアカネちゃんの腕をタップしてたようです……。
「アカネ、ストップ! ストップだ!」
『レフェリーの副社長はんが止めます。のの選手のタップが入って降参やで。AKANE選手がワンポイント先取、仕切り直しやね』
『そうだな、これ以上は本当に気絶してまうギリギリのところまで堪えたのだろう、切りかえて頑張ってもらいたい』
少しクラクラする頭を振り払い、再びアカネちゃんに挑みます!
「ファイッ!!」
『のの選手、AKANE選手にスピアータックル〜!! AKANE吹っ飛んだ〜! これは流石に効いたんやないかぁ〜〜?』
『……いや、自ら後ろに跳んで上手くチカラを逃がしたな、のののスピアーは強烈だから、まともに食らえばAKANEでもキツイだろう』
「どうしたのの! まだまだこんなもんじゃあないだろ!? それとももうあきらめるか〜!?」
「はぁ、はぁ……こ、これからだよ! アカネちゃんこそ、び、ビビらないでね」
「ゆーねぇ! んじゃエンリョなく行くぜー!」
『AKANE選手、掌底のラッシュや! のの選手のガードの上からお構いなしに打ち付けてくぅー!』
『ののはガードが堅い、AKANEの掌打でも崩しきれないんじゃないか?』
『あっとぉ! 一瞬の隙を突いてのの選手、再びスピアー! AKANE選手の腰にごっつ組み付いてん!……けど……』
『これは……そのままサイドスープレックスにいく為のAKANEの誘いだな』
『AKANE選手、のの選手をぶっこ抜きで投げた〜〜! そしてぇ再びのの選手を引き起こしてからのぉ〜〜、ジャーマンスープレックスホールドやぁ〜〜!!』
『これは投げ技がそのままフォールの形になっているので、抜け出さないと決まってしまうな』
『
「ワン! トゥ〜! ……」
副社長さんの短い手がマットをタシタシ叩くのが見えます。――このまま終わる訳にはいかないのです! でやぁ!!
『……返した〜〜!! のの選手カウントツーで返したった〜!』
「ぉおお〜〜〜〜っ!!」
村の人たちのどよめいた声が聞こえます。
『よく返したのの、しかしAKANEの主導権は変わらずだ、自分のペースに持ち込むことが出来ないと我慢のプロレスは続くぞ』
『AKANE選手、ダウンしたのの選手にエルボースタンプぅ! のの選手悶絶やぁ〜! ほんで〜のの選手の
「ノノお姉ちゃん! まけちゃやだー! おねがい、たってーー!!」
――!! アビィちゃんの声が響きます……わたしはあの子に、今までのような負けっぱなしの姿を見せられないのです……!!
「ぅうやぁああ〜〜!!」
『……っとのの選手、両脚を振り上げてAKANE選手の首に絡めてぇ〜、フランケンシュタイナーで切り返しやぁ〜!!』
『あの体勢からフランケンシュタイナーに絡めるのは中々難しい。ラトと同じく、彼女も体が十分柔らかいから成せる技だろうな』
「キャァアすご〜〜い! ノノお姉ちゃん! ガンバレ〜〜〜!!」
わたしはここぞとばかりにアカネちゃんに追撃を仕掛けます。空中回転してアカネちゃんにヒップアタックです!
『出た〜! のの選手の
『ののはここからの連携が課題だな。すぐにホールドに移るにはダメージが小さいのでこれでは……』
『……っとぉ! 千葉さんの心配通り直ぐにAKANE選手にブリッジで返されたでぇ〜、のの選手転がったぁ! AKANE選手、のの選手を後ろ向きに引き起こしてからの〜、必殺AKANEラリアットぉお!! 決まったぁーーー!!! のの選手2回転して吹っ飛んだぁーー!!!』
――カンカンカンカンカン!!…………
『あ〜っと副社長はんが手を振った〜、レフェリーストップやぁ〜! のの選手ダウンにより、勝者、AーKAーNEーーー!!』
「うぉおおおおおお!!! A・KA・NE! A・KA・NE!」
「いいぞアカネーー!、ちびっ子もよくやったぞーーー!!」
「プーロレス! プーロレス!!」
わたしは朦朧とした頭で、みんなの歓声を遠くに聞いていました。……あぁ、また負けちゃいました。
副社長さんと一緒にアビィちゃんも来てくれて、心配そうな顔で覗かれました。
「お疲れノノ。今日はいつもより頑張ったじゃねーか」
副社長さんがヒールをかけてくれたので、痛みも薄くなり、頭もスッキリとしてきました。
「……ノノお姉ちゃん」
「アビィちゃん……ごめん、わたし負けちゃった……強いところ見せてあげられなくて、ごめんね、わたし、弱いから……」
「……うぅん、ノノお姉ちゃん、かっこよかった! ほかの人よりちっちゃいのに、つよくて、かっこいい! それに、わたしを助けてくれたのはノノお姉ちゃんだもん! わたしも、ノノお姉ちゃんみたくなる!」
「…………アビィちゃん…………」
――こんなに嬉しい言葉って無かった。わたしは泣きそうになるのを堪えて、笑顔で答え……ようと……したんだけど…………。
「アビィぢゃぁあん、おね゛いち゛ゃんがんばるがらぁぁ、も゛ぐひょうにな゛れるよぅにがんばるがらぁあ゛あぁぁ」
涙腺&顔面崩壊してしまいましゅた…………。
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