第15話 凱旋( 2 )
◇第十五話 凱旋( 2 )
「かんぱ〜い!」
「飲め飲めー!」
男の人たちはお酒と焼肉を中心に盛り上がっています。
「あの! チバエレナさん! 自分は、ブラウ・ファーガソンと言います! 昼間の戦い、見事でした。……それから、子どもたちを救ってくれて、ありがとうございました!」
「ああ、はい、どういたしまして……お礼はもう十分伺った。気にしないでほしい」
「ブラウ、今のお前ではチバエレナと釣り合わんぞ? もっと鍛えんとな」
「ちょ、ダリウスさん、ここで説教っすか……?」
「ハハハ、すまん、年寄りの悪い癖だな」
――あ〜確かにブラウさんて、闘ってる最中に千葉さんに見惚れてて、危なっかしかった気が……
「ノノお姉ちゃん〜!」
「お嬢さん方、お邪魔しますよ」
「あ、アビィちゃん! と村長さん、……と副社長さん……」
「ノノ……オマエら、今までオレの
「ヤ、ヤダナ〜副社長さんてばそんな事あるわケナイジャナイデスカ〜アハハハハ」
「悪りぃフク、完っ全に忘れてたわ」
「ぅおい……こっちの身にもなってみろよ、オレがどれだけ大変だったか……」
「アビィに遊んでもらって良かったじゃねぇかフク!」
「だからそんなんじゃあねぇって!!」
「皆さん、わたしの命より大切な孫を助けてくれて、本当にありがとう。貴女たちに女神と精霊様の加護がありますよう……いや、もうあるのですな」
「そうだぜ、オレが居るって事がその証拠だな」
「女神サマはともかく、フクはな〜……疫病神じゃね?」
「アカネ……オマエ天罰下すぞ」
「だめ〜フクシャチョー、お姉ちゃんたちに意地悪しないでー!」
「意地悪って、あのなぁ」
わたしたちが談笑していると、警吏さんのお子さんのデニウスくんが、しょんぼりした感じでやって来ました。
「デニウス、ちゃんと此の方たちにお礼を言ったのか? もう一度きちんと伝えなさい」
「あの、お姉ちゃんたち、アビィや友達みんなを助けてくれてありがとう」
「うん? 自分のことじゃなく、友達を助けてくれてありがとう、なのだな」
「うんうん、ええよ君、さすが警吏はんの子やわ。将来はお父んの後を継ぐんか?」
「おー、仲間思いのヤツは強くなるぜ! アタシが保証する!」
「デニウスくん、まだ小さいのに、すごいよ!」
「ノノお姉ちゃんだって小さいのに、すごくつよくてカッコイイ!!」
「あ……ありがとうアビィちゃん…………」
――――褒められて……ますね、はい。……うぅ。
「デニウス……お前に聞かねばならないことがある」
ダリウス警吏さんは、少し厳しい顔でデニウスくんに問いかけました。
「無事だったから良かったものの、オークがいて危険だから外には出るなと言っておいたはずだ、なぜ、どうやって村の外に出た?」
デニウスくんは口を開きかけて再び噤みました。
「話しなさいデニウス」
「……僕が、アビィやラオール、ユーリを連れ出したんだ。村長さん家の裏の塀にある穴をくぐって……」
「壁に穴があるのか? ブラウ、すまんが確認して来てくれ」
「は、はいダリウスさん」
テーブルの近くで立ったまま食事をしていたブラウさんは、敬礼して直ぐに村長さんの家の裏手へと走っていきました。
「抜け出した理由は?」
「……アビィが退屈そうだったから、元気にしてやろうと思って……」
「ち、違うのダリウスおじさん!」
「何が違うんだいアビィ? お爺ちゃんに話してごらん」
「……あのね、わたし、おひるにノノお姉ちゃんたちが何するのか気になってて、お家を出て見にいっちゃったの。そしたらダリウスおじさんに見つかって、怒られて……それで奥の畑に逃げたら、デニウスがきて……遊びに行こうって。それでラオールとユーリの家にもこっそり呼びにいって、みんなで……」
「ふむ、デニウスは、アビィが畑に行ったのを自分の部屋から見ていて、それで外へ出て楽しませようとしてくれたんじゃないのかな?」
「うん、だからデニウスたちは悪くないの! お爺ちゃん、ダリウスおじさん、悪いのはわたしなの……ごめんなさい……」
「アビィは悪くない! 外に行こうって、みんなを呼び出したのは僕なんだ。お父さん、叱るのは僕だけにして……」
「怒っているわけではない、デニウス、アビィ、聞きなさい。また同じ過ちを繰り返さないための確認なんだ。いいかい?」
「…………うん」
「むしろ反省せねばならんのは、我々大人の方じゃな、ダリウス」
「ええ、魔物が居るからと、ここのところ、外出や大声で遊ぶことを禁じてましたから。……すまなかったね、アビィ」
「ううん、わたしがお爺ちゃんやダリウスおじさんの言いつけを守らなかったから……ごめんなさい」
「へへ、また謝りっこ合戦だな!」
「おお、そのようじゃな、ハハハ」
「フッ……違いない」
「ダリウスさん、見つけました、穴」
ブラウさんが戻ってきてダリウス警吏さんに報告しています。どうやら抜け穴があったみたいなのです。
「ちょうど小さな子が腹這いでやっと一人通れる程度で、壁の内と外の両方が茂みに隠れてて見落としてました」
「そうか、ご苦労だったな。補修は明日にでもやっておこう、お前も宴に戻れ、まだ大して食ってないだろ?」
「はいはいごめんよ、お前さん方、料理とお酒の追加だよ! ほれブラウ、ボケっと突っ立てないで、お嬢さん方にちゃんと振る舞っておやりよ!」
「え? あ……う、うん」
「呑みが足りないんじゃないかい? あんたは女慣れしてないんだから、酒の力でも借りてドンと行きなよ!」
「ちょ、マーサさんもそういうこと言う?……もういっす……」
「ほらお嬢さん方、アンタらも飲みな! 村の救世主なんだからさ! 足りなきゃまだまだあるよ!」
元気なマーサおばさんは酒瓶と追加料理をテーブルにでん!っと置いて、からかわれたブラウさんはすごすごと戻っていきました。――が、頑張れブラウさん!
「さて俺も戻るとしよう、君たちは存分に楽しんでくれ。ああそれから、向かいのあの宿を手配してある、寝るならそこを使ってくれ、村からのささやかな恩返しだ」
「ありがとう、そうさせて貰おう。――――おいラト、アカネ、お前たちは未成年だろ? そこら辺にしとけ」
「まーまー千葉さん、こっちじゃ誰も怒らないって! いひひひ」
「さっき村の人に聞いたんやけど、この世界は15歳で成人らそうれすねん。つまりウチらもオッケーってことれす〜」
ラトさん、ちょっと呂律が回ってないですけど、なんかいつにも増してほわほわ度が上がってて、可愛いのです〜……んふふ。
「まぁそう言う事なら……程々にな……全くコイツらときたら。のの、お前はよしとけ……って、顔真っ赤じゃないか!?」
「ふわい……おいしいれすね、これ。……んふふふふ」
なんか千葉さんにおぶってもらった気がするのですが、ふわふわと気持ちよくてそのままベッドで朝までぐっすりなのでした。
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