第424話 紫乃へのお願い
「……姫川家にですか? また意外な名前が出てきましたが……」
俺にそう言ったのは、土御門家の長女である、紫乃だった。
そんな彼女に俺は言う。
「知らなかったのか? 俺も咲耶も龍輝も、普段は気術総合学院……四季高校に通ってるんだが、今の生徒会長は姫川葵先輩だぞ」
すると紫乃はなるほどという顔で頷く。
「そう言えばまだ、お三方とも高校生でしたね……もう一流の……いいえ、それ以上の気術士なので、そんなものに通っているという頭がなかったです。しかし言われてみると四季高校には確かに姫川家の長女が通っていましたね」
思い出したようにそう口にする紫乃に、俺は言う。
「どんな気術士だろうと高校くらい通うだろ」
俺の言葉に紫乃はゆるゆると首を横に振る。
「そうとも言えませんよ。特に関西では実力があれば一家を建てること出来ますし……高校卒業の資格は、通わずとも与えられますしね。まぁ、流石に十六、七でそこまでの実力に至っている者は滅多にいませんが」
「紫乃はそのうちの一人なんじゃないのか?」
「私は土御門家を継ぎますからね。特に新たな一家を建てる必要はないです。それに高校もそれなりに楽しいですから。ですけど、姫川家はまた事情が異なるようですね……その辺りが気になるのですか?」
紫乃はそう言ったが、実際のところ、詳しい事情を俺は知らない。
なんだか姫川会長は実家に自分の力を認めさせるために四季高校で頑張ってる、みたいな感じだったが、その程度だ。
あれだけの力があれば、別に関西でも十分ではないか?
と思うのだが、足りないのだろうか。
とりあえず、俺は紫乃に尋ねる。
「気になるというか、会長はどうにもいつもピリピリしてるからな。それを解決できるならしてやりたいと思って。俺も会長も、ちょうどよくこっちにいるからな。もののついでってやつだ」
理由はそれ以上でもそれ以下でもない。
幸い、というべきか、もはや力を隠す必要がなくなったので多少無茶をしたところでもう関係がない。
まぁ別に暴れ回るほどのつもりはないのだが、変にコソコソ動く必要はもはやないだろう。
そんな俺に紫乃は言う。
「もののついでで家を引っ掻き回される立場に立つと恐ろしくなってきますが……今更ですね。京都中の術師が、貴方の存在をすでに知ったのですから」
「でも、あんまり変に歓待されても嫌だからな。そういう意味では裏から支援したいくらいの感覚なんだ。だから紫乃に相談をな」
「……つまり、うまいこと姫川家に貴方が入り込めるように手を回せと? また難題を……と言いたいところですが、運がいいです。今回の大妖退治で京都の各家は人手不足ですから。どこの家にでもどんな肩書きでも送り込めますよ」
「おぉ、分かってるな。じゃあ頼めるか?」
「はい。まぁ……下っ端術師として送り込みましょうか……ですけど、呪術師としてになりますが、呪術は大丈夫ですか? 気術と違うところがいくつかありますが」
「その辺は三人で椛様に今日明日で叩き込んでもらうから、なんとか」
「一夜漬けに等しいやり方で呪術を……いえ、下っ端術師程度の技量までであれば、貴方たちなら余裕ですか。わかりました。ではそのように……あぁ、それと、姫川家の内情について少しお話ししましょう」
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