第423話 重蔵、帰る
「さて、それではわしらは先に戻る。身軽なお前たちの方が先になるかと思っていたが……」
土御門家正門の前で、重蔵がそう言った。
正門前にはたくさんの黒塗りの車が止まっており、前方に停まっているものから順次発車していく。
いずれも東雲家のものだな。
四大家の経済力は凄まじく、それは東雲家も例外ではない。
その武力を存分に扱った警備関係事業は相当な利益を生み出しているというし、これくらいのものはいくらでも揃えられる。
まぁ、それは他の四大家も同じことだが。
「北御門家の人間はしばらくここに滞在して、お互いの技術について交流する予定だからな。元がかなり似通ってるから吸収が早い。一段階実力を上げて帰れるだろう」
北御門から応援に来た術士たちだが、その血筋を辿れば土御門と繋がることが明確になり、その結果としてかなり交流が進んでいる。
そんな中で、術についても交流しないかということになり、分家レベルではあるが色々教え合っているのだ。
もちろん、本家当主である美智に許可をとった上でのことだが。
ただ北御門家の十八番である時空系は土御門にも習得しにくいらしく、主に結界術だけという感じだけどな。
結界系も時空系の一部ではあるが、これはどの家でも使っているものなので、教えても問題ない。
「うちでも何人か残すことにはなったが……北御門ほどには恩恵は受けれまい」
「そうでもないんじゃないか? 暗器系とかは京都の術士は結構な腕っぽいが」
「それは確かにそうだが……ま、こうやって技術交流が進んでいくのは悪くない。戻ってくるのを楽しみに待っているか。あとで発展があるかもしれんし。お前たちはいつ頃戻るつもりだ? まさか北御門の者全員が帰るまでというわけにもいくまい」
この技術交流は基本的には恒久的に行おうということになっているので、それだとずっと帰らないことになってしまうからそんなことはない。
ただ……。
「多少落ち着くまで、かな。交流が進んでいるとはいえ、まだお互いに完全に理解し合えたわけじゃないところがある。特に妖魔に対する態度に関しては、多少ぶつかり合いがある。その辺を説明できそうなのが俺たちだからな」
「そうか……ま、お前たちがこっちにいる間、こちらでは色々と可能な範囲で調査も進めておこう。何かあれば連絡するから、安心せい」
「分かった。じゃあ気をつけて」
「うむ」
そして、重蔵は最後に残った車に乗り込み、去っていった。
「武尊様。ああはおっしゃいましたけど、早めに帰宅されたいのでは?」
「いや? そうでもないぞ」
「でも、目的のためには……」
「今まで十六年、待っているからな。もう十年くらいまでなら余裕で待てる……が、流石にそこまで待つつもりはないとも。ただ今日明日って感じで焦る必要もないってだけさ。それに少し気になることもある」
「あぁ、姫川会長のことですか……大天狗討伐の時にも出ていたそうですけど、遭遇しませんでしたね」
「まだ若いから前線には出してもらえなかったらしいぞ。で、俺が倒したと聞いてビビっているらしい」
「顔を合わせたら驚きますね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます