第422話 慎司の動き
「あいつにもあいつなりの苦悩があったってことかね。まぁ内容的に全く同情出来ないが」
重蔵の言葉に俺はそう呟く。
「まぁ、そうだろうな。わしだって同情せんわ。というかそもそも気術界を掌握してそれで何がしたいのかという話でもある」
「そういえばそうだな。あいつのそもそも目的ってなんなんだ? 景子とかならまだ分かりやすいんだが……」
西園寺景子は今の容姿からして、やりたいことはわかりやすい。
永遠の命とか美貌とかそんなところだろう。
力は付随的なもので、目的はそこにはないわけだ。
まぁ容姿を見るに、半ばかなっているような気はするが……流石に命は永遠ではないか?
それにあの見た目もただの若作りの可能性も高い。
仙人になればどちらも叶うだろうが、あいつにそういう伝手や技術があるようには思えない。
仙気については一度見てみなければ分からないが、仙人になれたのなら仙界に行ってしまえばいいしな。
いや……あいつにとってはこの人間界での永遠が大事そうだから、たとえそうなっても仙界には行かないか。
向こうは質素というか、生活そのものが原始的だった。
それは贅沢好きなあいつには耐えられたものではないだろう。
「若い頃はあそこまで派手好き、贅沢好きではなかったんだが……いつの間にか景子はああなっておったな」
事実、思い返すに、割と清楚な見た目だった記憶がある。
どの辺りから変わってしまったのか。
それともあくまでも隠していたに過ぎないのか。
俺への所業を考えるに、隠していた方なんだろうが……それにしても巧妙に隠していたものだ。
俺にはあまり女を見る目はないのかもしれない。
重蔵もそこまでなさそうだが、奥方はできた人だったようなので興味のない女については大して目もくれないだけか。
「ま、景子は後回しでも良さそうだな。慎司よりはおそらくは無害……な気がする」
「そうかもしれんな。で、慎司についてはどうする?」
「動き出したと言っても、まだ大っぴらに、というわけではないのだろう?」
「うむ。慎司自身の外出が増えている、というくらいかの。あと、南雲家の内情が掴みにくくなっているとか。状況証拠くらいでしかないが、今まで何もなかったことからするとかなり意味のある話だぞ」
「内情が掴みにくくなった、か。何かしら隠したいことがあるから情報の遮断を図っているというわけだな。慎司の外出が増えているのは……誰かと接触してるってことか?」
「おそらくはそうだろう。それを探れば、何かわかることもありそうだが、うちの人間だとそういうのは流石に難しくてな。特に慎司相手では……あれで最上位の術者じゃ。謀略にも長けておる。下手にスパイするとそこからバレる」
「まぁそれはそうだな……あいつはコソコソ動くのが昔からとにかく得意だ。となると、俺自身が頑張るしかないか……」
「行けるのか?」
「なんとも言えないな。まずは策を練るところからか」
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