第418話 これからのこと
「なるほど……重蔵、お前がいてくれて良かったよ」
いなければもう少し理解してもらうのに時間がかかったかもしれないな。
そう思っての言葉に、重蔵は、
「わしには取らねばならない責任があるからな。まぁそれを置いてもお前のためならなんでもするだろうが」
そう言った。
これを聞いた蘭はさらに深く頷いて、
「今の会話で余計に確信が深まりましたね。そのように重蔵様と会話される方は、気術界広しと言えどもいませんから」
そう言った。
それは確かにそうだな。
重蔵にタメ口を聞いてる人間は、それこそ景子と慎司くらいしかいない。
美智は対等に口を聞くものの、元々兄である俺と同格であると小さい頃から捉えていたからか、重蔵に対しては敬語だな。
そんな状況の中、俺のような年齢の者が重蔵とこういう話し方をしているというのは、それだけでそれなりの説得力があるだろう。
「別にわしはわしに対して敬えと誰かに言ったことはないのだが、気づけば東雲の者はわしより年上でも敬語を使うようになってしまったからな。こいつが戻ってきてくれて、誰よりも嬉しかったのはわしじゃろうて。いや、一番は美智かもしれんが」
「美智様も、ご存じなのですね」
「それは当然だ。最初に明かしたのが、美智だったな?」
重蔵に尋ねられ、俺は頷いた。
「あぁ。当時は誰を信用していいのか、非常に難しかったからな。美智は数少ない、確実に信用できる相手だった。とはいえ、向こうに先に気づかれていたが」
「あぁ……そういえば、美智は個人の真気を特定出来るのだったか。転生しても変わらぬものなのだな」
「真気の質は魂に由来するようだからな。肉体が無関係とは言わないが……まぁ、それでも俺は分家とはいえ北御門の血筋に生まれているのだから、そういう意味でも特定しやすかったのだろうさ」
「なるほど。おっと今の話は……」
重蔵がそう言って蘭に視線を向けたが、彼女は首を横に振って言う。
「美智様がそのようなお力をお持ちであることは、存じております。というか、古くは土御門にもそのような力を持つ者が生まれますゆえ。遡れば同じ血筋の北御門にも、同じ者が生まれておかしくはありません」
「ほう、そうだったか。今もおるのか?」
「何を隠そう、ここにいる紫乃がまさにそうですよ。と言っても、古い時代の術者たちよりは力は弱まっているようですが……」
これに反応したのは、咲耶だ。
「紫乃さま。本当ですか?」
紫乃はこれに頷く。
「ええ。真気の色や香りが、大まかに感じられる程度だけど」
「そうでしたか……お揃いですわね」
「お揃い?」
「私も同じですので」
「えっ……あの、言って良かったの?」
慌てた様子で尋ねる紫乃だったが、咲耶は動じずに答える。
「武尊様と重蔵様が、土御門を信じると決められたようですから。私も同じようにするまで。それにこれからのことを考えますと、これも共有しておいた方がいい情報かと思いまして」
「これからのことって……」
これには、椛がふと言った。
「……西園寺と南雲についてだね。武尊様、復讐を望まれるのかい」
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