第416話 正体について

 土御門本家、奥の間に俺は通される。

 咲耶と龍輝、それに重蔵も一緒だ。

 土御門家側は、当主の蘭と、椛、それに紫乃だけである。

 まぁつまりは、俺について重要なことを知っている面々と言うことだな。

 俺が北御門尊であることは、蘭と紫乃は知らないわけだが、椛は勘づいているわけだし、別に強く口止めしているわけでもない。

 そのうち伝わるのではないだろうか。 

 信じるかどうかはともかくとして。

 そうなったとしても大きな問題はないが、少し時期を選んでほしくはある。

 西園寺と南雲のことがあるからな。

 あいつらには出来るだけ、伝えたくない。

 ちょうどいいからこの機会にはっきりその辺は言っておいた方がいいだろうな。


「……さて、人払いもしましたので、これで色々と遠慮なくお話しができますね」


 蘭がそう言った。

 まぁ俺が大天狗を倒せる実力がある、ということはもはや全く隠しようがないほどに広まっているから、それについて遠慮していたわけではないだろう。

 

「何について聞きたいのですか?」


 素直に俺はそう尋ねた。

 俺の前世くらいの時代においては、呪術師は深く信用するなとかいう爺さんたちが結構いた。

 扱うものがものであるし、気術士とは理念が結構異なっている。

 だから、毛嫌いする者も多かった。

 加えて、確かに事実としてその性質上、信用できないタイプも生まれやすいからな。

 陰謀向きというか、詐欺師寄りというか。

 だから気持ちはわからんでもない。

 気術士はどうにもその辺の腹芸にはそこまで力を注がないたちだから、相容れなかった。

 だが、それを考えても、蘭たちについてはもう普通に信用していいだろう。

 だからこその、素直な質問だった。

 これに蘭が言う。


「もしも、答えたくないのであれば、お答えいただかなくても構わないのです。その上での質問なのですが……武尊様は……その、何者なのでしょうか? いえ、北御門家分家の、高森家の長子でいらっしゃることは分かっているのですが……なぜあれほどの力をお持ちなのかと」


 蘭のこの言葉を考えるに、椛は特に説明はしていないようだ。

 仁義を通してくれたのだな。

 ありがたいことだ。

 でも、あんまり家族に秘密を持ち続けさせるのも申し訳ない気がする。

 俺が親しい人に対して秘密の内容を伝え、すっきりしてしまったがゆえに、余計にそう思う。

 だから俺は言った。


「それについてですが、信じていただけるかは分かりませんが、お話しさせていただいても大丈夫ですよ……それに、椛様は自力で気づいておられました。私に気を遣って蘭様や紫乃さんには伝えないことを選んでいただけたようですが……」


 これに蘭は、椛の方を見て尋ねる。


「本当ですか、お祖母様」


 椛はため息をつき、答えた。


「……本当だよ。しかし、いいのかね? 武尊様。貴方にとってこれは非常に重要な秘密であると言うのに。私は墓場まで持っていくつもりだったよ」


「いずれはバレるだろうと思っていることですから。ただまた伝えたくない相手がいるものですから、ここだけの話にいただければそれで大丈夫ですよ」


 そう言うと、蘭は頷いて、


「承知しました。では、その条件でお話しいただければと……」


 そう言った。

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