第414話 感謝
「……ありがとうございます! 貴方様がいらっしゃらなければ、京都がどうなっていたか……本当に、本当にありがとうございます……!!」
「いや、京都の呪術師達の頑張りがあってこそですので。それに、北御門と東雲の術士達も奮闘しましたし……」
「ですが、あの大天狗に致命傷を与えることは貴方様しか出来なかったでしょう……今後、京都の術士達は、何を置いても貴方様に協力いたします。どうか、お忘れなきよう……」
そんな会話をさっきから延々と続けている俺だった。
もちろん、相手は京都の術士たちだ。
大天狗を倒したその場で勝利を宣言した直後からずっとこの様子で、この場を動けない。
後ろにも大量に同じ目的だろう術士達が並んでいる。
いや、俺はテーマパークのアトラクションではないんだが……。
まぁ、でも。
大天狗を倒す前後の、呪術師達の理解できないものを見つめるような畏怖の視線よりはずっとマシか。
大天狗が確かに倒されたということを認識した瞬間、良い意味でその畏怖が裏返ったようで、尊敬に変わったらしかった。
今では俺のことを……まぁ、多少は恐れの目も混じってはいるものの、ほぼ全ての呪術師達が好意的な目で見てくれている。
流石の俺も、人間から化け物を見るような目で見られるのは、堪えるからな。
前世を思い出すようで。
まぁ、あの頃は逆の意味で嫌な視線で見られていたが。
北御門本家直系の血筋に生まれながら、役立たず、と。
ただ、振り返ってみると意外にそういう目を向けていた人間は少なかったのかも知れないが。
あの頃は俺も大分余裕がなかったからな。
認めて貰いたかったし、力をつけたかったし、とにかく何者かになりたくてあがいていた。
今は良くも悪くもそういう力みはない。
だからこそ、悪意の目がないのかもしれないな。
ともあれ、そうやって呪術師達の列を捌いていく。
いつの間にか俺の両脇には龍輝と咲耶がいて、握手会のはがしのようなことをしていた。
……何手慣れているんだ、お前らは……。
まぁいいか。
そしてそんな列が概ねはけたところで、ざっ、とその呪術師達の列が脇に下がる。
なんだ?
と思ってみれば、向こう側から人が近づいてくるのが見えた。
……四人だな。
一人は重蔵だ。
安全地帯に下がったあいつだが、大天狗が倒れたのを見て戻ってきたわけだ。
流石にまだ傷は癒えておらず、歩くのも辛そうである。
そんな彼を、紫乃と蘭が支えていた。
椛もいるが……彼女は身長的に重蔵を支えられる大きさではないからな。
最も年嵩であるはずの人が、最も若く小さいのがなんだか面白い並びである。
本来なら重蔵よりも上の世代だと居言うのに……。
「……武尊様。この度は本当に……本当にありがとうございます……!!」
まず蘭がそう言って俺の手を取り、力強く握った。
その目には涙があり、感謝の気持ちが強く伝わる。
「いえ、そんな……ここにいる呪術師の皆さんにも言っていたのですが、全員で頑張ったからこそですよ。チームの勝利って奴です」
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