第401話 餌
「それは分かってる。でも、景子様と慎司様は……前のお前……北御門尊様の信頼を裏切ったんだろう? それは俺も許せない」
龍輝がそう言った。
続けて咲耶も、
「私は武尊様が向かうところならたとえ地獄にでもお供する所存ですので」
極まった目でそんな風に呟く。
龍輝はともかく、咲耶は正しかろうが正しくなかろうが関係無いと言ってるわけだが……いいのかな?
いや、良くはないが……止めてもこれは聞かなそうではある。
せめて正当性はあるとは言っておくべきか。
「……はぁ、分かった。二人の気持ちはありがたく受け取っておく。まぁ……復讐それ自体が果たして正しいのかという議論はあるが、それ以前に西園寺も南雲も、どこかきな臭いところがあるからな。そこから突っ込んでいけば、少なくとも大義を持って事を為すことも出来るだろう」
そもそも論として、景子も慎司も、その動きを見る限り、現代においてはかなり怪しげな行動ばかり取っている。
可能な限り表には出てこないようにしているようだが……邪術士や妖魔との繋がりなど、極めて怪しいのだ。
「きな臭いっていうのは、あれか。邪術士や妖魔との繋がりがっていう。聞いてはいたけど、まさか当主がとは考えてなかったな……だけど、さっきの話を聞くと、むしろ率先してやっていそうな気がしてくる」
龍輝も咲耶も、邪術士や妖魔と、西園寺や南雲との繋がりがあるという話は知っている。
一緒に調べているからな。
ただ、あくまでも分家やさらにその下の家のやっていることであって、本家との繋がりについてはよくわからない、おそらくはないだろう、と考えていたのだろう。
けれど……。
「俺は最初からあいつらがやってることの責任を下にうまく押し付けているだけだと思っているよ。ただ、証拠がまだ見つからない。分家くらいのとの繋がりを主張したところで、その分家を潰されて話を終わりにされてしまうし、そうなればあいつらも守りを固くするだろうからな。なかなか手出し出来ていない」
「そうか……どうにかならないものかね」
「向こうが動いてくれないと難しいな。ま、だからこそ今回の大天狗退治は悪くない話だ」
「どういうことだ?」
「俺は今回で、自分の力を隠すことをやめた。大妖を倒すほどの力を示せば、何もしなくても向こうから接触してくる可能性はある。加えて、若返り関係があるからな。景子は確実に食いつくんじゃないか?」
俺は何も考えなしにああいうことをしたわけではない。
重蔵についてもな。
景子は自らの若さに拘っている。
そんな彼女が、蘭や椛の若返りを知ったらどう思うか、何をしようとするか。
その源について手に入れようとするだろう。
つまりは俺だ。
俺自身が餌になる。
それを理解した咲耶が慌てたように言う。
「危険です! いくら武尊様でもそんなこと……」
「そうかな? 景子の力はたいそうなもので、おそらくは重蔵と同格、しかも巫術などの搦手を得意としてるから、戦いにくさはあるだろうが……それでもあいつが大妖とまともに戦える奴とは思えない。それを為すだろう俺ともな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます