第400話 これからのこと
「……とはいえ、だからと言って許されることとも思ってはおらんのだがな」
重蔵が沈痛な表情でそう言うが、俺は彼の胸を叩く。
「もう気にしなくていいって言ってるってのに。あれだけボコボコにしてやったんだ。大体気が済んだよ。景子と慎司は全く別だが」
「そう言ってもらえるとありがたいが……」
そこで龍輝が、
「あぁ、そういえばこれから先のことなんだけどよ……というか、よくよく考えたら俺、お前にも敬語使った方がいいか? 武尊」
ふと思い出したように言う。
俺の年齢が七十オーバーであると言うことはつまり、重蔵と同い年であると言うことに今更ながら気づいたのだろう。
しかし、俺は首を横に振る。
「お前、今更俺に敬語とか気持ち悪くないか? 別にそのまんまでいいよ。大体人前でお前が俺に敬語つかってたらおかしいだろうが」
同い年ではあるが、対外的には龍輝の時雨家の方が格の高い家なのだ。
だから敬語を使うとしたら、俺から龍輝に対してそうする方が自然だ。
しかし逆というのはまずあり得ない。
まぁ、俺の周りではそのあり得ないことが結構起こってしまっているわけだが、それもこれも俺が実力を見せた場合に限られてるからな。
そしてそうであっても、公式にはやはり俺に対して彼らが敬語を使うことはないのであるから、やはり龍輝もそれに倣うべきだろう。
「って言ってもよ……改めて考えると失礼なんじゃないかと」
「だから今更だ。それに確かに俺は前世は北御門尊だったが、お前や咲耶が言った通り、今の俺は俺……高森武尊であるのも間違いない。そして高森武尊は十六の少年なんだよ、お前と同じな」
「……まぁ、そうだが。すごい詐欺のような気もするけどな……」
「詐欺じゃない。事実だ。だから普通に話せ。俺が重蔵に対してタメ口で話すのは、周りに人がいない時、しかも結界を張った上でだからな。普段は敬語をこれからも貫くし……ま、難しく考えるな」
「分かったよ。じゃあ、改めてこれからの話だが……」
「あぁ、そうだな。さっきも言った通り、俺の目標は復讐だ。景子と慎司に対する、な。別に俺はこれを知ったからと言ってお前や咲耶に協力しろとは……」
言わない、と言おうとしたところで、咲耶が叫ぶ。
「協力します!」
「……だとしてももう少し考えた方が……」
否定はしないものの、ちょっとは考えた方がいいことだ。
何せ、俺の復讐に協力するということは、四大家の中でも二家に弓引くということだ。
気術界において、四大家の存在は大きく、そのうちの二つを敵に回すというのはこれから先、咲耶や龍輝の将来に暗い影を落としかねない。
そう思っての言葉だったが、咲耶は言うのだ。
「考えた上での結論です……龍輝も協力しますよね!?」
「おい、無理強いは……」
そう言った俺だが、龍輝もすぐに頷いて、
「あぁ、それについては問題ない。俺も協力するぜ」
そう言った。
「お前達……その言葉の意味を分かっているのか? 西園寺家と南雲家を敵に回すんだぞ? しかも狙うのは当主だ……正気の沙汰じゃない」
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