第394話 重い空気
あまり広くない一人用の部屋に、俺、重蔵、咲耶、それに龍輝の四人が座っている。
土御門に与えられた部屋であるが、別に文句はない。
そもそも、元々は土御門家の術師達用の部屋であるという話だし、ただ寝るだけの場所だからな。
こんな風に使うことは想定していない部屋だ。
とはいえ、今の俺には他に部屋など用意できないし、遮音結界を張るのにもこれくらいの方が完璧に張るのが楽だからちょうどいいかもしれない。
静かに遮音結界を張ると、咲耶が早速、と言った様子で、
「あの……それで……」
と不安そうな表情で俺に話を促す。
一体どんな秘密を俺が抱えているのか、受け入れると決めたにも関わらず怖いところがあるのだろう。
生まれてこの方、ずっと秘密にしてきたことだし、その気持ちは分かる。
まぁ、そんなに不安にさせるような話でもないし、さっさと言ってしまった方が良さそうだ。
「あぁ、俺の秘密についてだな。ずっと俺が隠し事をしてきたことは、咲耶も気づいてたって言ってたよな。龍輝はどうだ?」
とりあえずそこからかなと思って尋ねる。
龍輝は、少し苦笑して、
「まぁ、なんとなくはな。そもそも……お前は異常だ。何がと言われると困るけど、その実力もそうだけど、それ以上に一体何を考えているか分からないところがあった。あぁ、別にだから不気味に思ってたとかじゃないぜ? そうじゃなくて……なんていうかな、何が目的で生きてるのかわからなかったっていうかさ。俺なら時雨家の当主として立派に力をつけるため、とか、そういう分かりやすい目的がお前からは感じられなかったんだ。でも、何かを目指しているようには見えたけど……それが何なのかさっぱりでさ」
そう言った。
意外に、というかやはりというべきか、龍輝は人をしっかり見ている。
俺たち三人の中では、最も陽キャに見える性質をしている龍輝であるが、内面で言うと意外にそうでもない。
客観的に物事を見て考えるタイプなのだよな。
「なるほど、お前にはそう見えてたか……」
「間違ってるか?」
「いや、当たらずとも遠からずというか。いや、ほぼ当たりかな。そのものじゃないけど、俺の持つ秘密に大きく関わってくる話だ」
「うーん? 想像がつかねぇな。なんだか楽しみになってきたぜ……」
「おい、茶化すなよ」
「って言ってもなぁ。お前が長年抱えてきた秘密だぜ? それを教えてくれるってんだから、面白そうだ。なぁ、咲耶?」
そこで咲耶に話を振れるのが龍輝の強いところだ。
今の咲耶の重苦しい雰囲気は、触れることすら拒絶するようなところが感じられるからな。
ただ、そんな龍輝の言葉に咲耶は呆れたような表情に変わり、
「龍輝……貴方はそうやっていつも……はぁ。まぁいいです。私が重く考えすぎなのかもしれません。肩から力を抜いて聞けと、そういうつもりでしょう?」
と意図を汲んで言った。
これに龍輝は笑い、
「さぁな。だが、焦らなくても武尊は話してくれるつもりなんだ。あんまり詰め寄ると話せるもんも話しにくくなるだろ」
「確かにそうかもしれません……武尊様、そういうことですので、世間話のようにお話いただければ」
「あぁ、そう言ってもらえると俺も気楽だよ……」
そして、俺は本題に話を進める。
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