第387話 処理
京都駅に辿り着くと、確かに周囲に一般人の姿は全くなく、異様な雰囲気に満ちていた。
本来なら走っているはずの車すらなく、路肩に止まっているものだけだ。
そんな中、術師たちが集まっている部分があり、俺たちはそこに近づく
「……皆! 大丈夫!?」
紫乃がそう叫んだのは、彼女の視線の先にあるもののゆえだ。
二十人ほどの呪術師が、大きな妖魔を取り囲んでいる。
もちろん、ただ囲んでいるわけではなく、全員が手を掲げて、必死で真気を振り絞りながら結界術を使用していた。
妖魔の動きを封じているのだ。
それでいて、妖魔がみじろぎをするたび、バチバチと結界が音を立てて少しずつ壊れかけている。
力が足りていないのだろう。
紫乃はすぐにその結界術に加わり、強化をした
それによって少し楽になったらしい術師が膝をついて息を吐いて言う。
「し、紫乃様……来ていただけたのですか」
「ええ。大量の妖魔が出現しているって……それに、何体かはかなり強力なものだって聞いたわ。こいつがそのうちの一体ね?」
「その通りです……倒そうにも、傷ひとつつけられず、仕方なく分家当主の方達が来るまで封じておくしかなくて……」
「よくやったわ。でも、分家当主たちはどこに……」
「他にいる妖魔と戦っているはずです。まずは一体ずつ、確実に削っていこうということで」
「確かにそれがいいでしょうね。これと同じクラスのがいるのならば……」
二人がそんなことを話している中に、俺は近づき、言う。
「なぁ、紫乃」
「……武尊様。なんでしょうか?」
「いや、話しているところ悪いが、こいつ倒していいか?」
「えっ……で、ですけど、かなり強力な……」
「まぁそれは分かるけどな。というか、こいつも天狗か。あの大天狗の眷属か何かかね? それにしてもこいつも格が高そうだが……いい素材にはなりそうだ。霊石もいいのを持ってそうだし。倒したらもらっていいか?」
俺と紫乃のそんな話を聞いていた術師が、
「き、貴様、紫乃様になんという口を……それにこれを倒すだと? お前程度の術師が敵うはずが……」
と言ってくるが、これは仕方がない。
けれど、紫乃がしっかりと正す。
「いいのです。この方は北御門から来られたお客様なので……それに、強力な術士なのですよ……でも、本当に勝てるのですか?」
「あぁ、このくらいなら問題ないな。ただ、結界越しに倒してもいいんだが、そうすると結界が壊れるときにみんなにノックバックが行くから、まず外してくれるとありがたいんだが。流石にそこまでコントロールは効かない」
「ですが、結界を外したら逃げてしまうのでは……」
「一撃だ」
「え?」
「一撃で終わらせるから心配ない」
俺はそう言って、刀を取り出す。
《虚空庫》の中にある一本で、美智からもらったものだ。
温羅がくれたものも大量にあるのだが、あの辺りは使うと被害がやばそうなので、この程度の妖魔には使えない。
刀に真気を通し、構える。
「……さぁ、結界を解いてくれ」
「……わかりました。みんな、一、二の……三!!」
その瞬間、結界が消滅し、天狗が自由になる。
しかし、その天狗が空に飛び上がることはなかった。
何せ、そうしようとした瞬間に、その首はすでに落ちていたのだから。
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