第383話 暇な人
そんな感じで紫乃や古老の様々な質問に答え続けた俺たちだった。
最後に紫乃は、
「……本日知ったことは、絶対にここのメンバー以外には漏らしません」
と言った。
しかし、重蔵は、
「椛殿や蘭殿には言って構わんぞ。それに、大天狗と戦う時には必然的に本気を出さねばならん。わしは当然だが、武尊もな。だから前線に立つだろう主要な術士には、武尊の実力は理解しておいてもらいたい」
そう言った。
基本的にはそのためにここでわざわざ見せびらかすように戦ったわけだからな。
紫乃たちからしてみれば、決して外には漏らせない秘密を見せられたような感覚だったかもしれないが、そしてそれは一部正しいのだが、漏らしてほしくない相手は西園寺と南雲だけだ。
まぁ奴らに直接伝えずとも、ある程度広がってしまえば、全国に広がる四大家の情報網に引っかかってしまうから、ある程度の注意は必要だが。
「なるほど……ですが、ここにいる古老たちが知っていればその辺りはなんとかなるかと」
紫乃が後ろの古老たちに振り返ってから、言う。
「そうなのか?」
「ここにいる皆は、土御門でも長く前線に立ち、また様々な武術や呪術の師範として活動してきた者たちです。つまり、土御門では表向きの地位はそれほどではないとはいえ、実際に逆らえる者は極めて少数です。それこそ、大お祖母様とお母様くらいなもので……」
「師と弟子の仁義か」
「そのようなものです。また、土御門は京都の他の家との人材交流も盛んですから。各家に弟子は大勢います。ですから、武尊さまを舐めるような言動が見られるようなことがあれば……彼らが自ずと対応しますので、当日はご安心ください」
紫乃がそう言った後、背後の古老たちは目をぎらりと輝かせて頷く。
……意外に恐ろしい集団だったな。
まぁ実力については、俺と重蔵の戦いを見て、解釈できる時点で分かり切ってはいたが、人との繋がりという意味でも重要な立場にいる集団とまでは思っていなかった。
どちらかと言えば、椛手飼いの影の実力者たち、というような感覚だったからな。
そして、その日の
*****
次の日。
忙しく土御門家の物たちや、北御門からやってきた者、それに東雲家の兄さん方が走り回る中、俺はダラダラとしていた。
別に何もしたくないとか、サボってるというわけではない。
ただそれぞれの指揮系統とかについては俺は知らないからな。
北御門のそれについてはそれなりに知ってはいるものの、そちらについては咲耶と龍輝が仕切るべきだし、俺がしゃしゃり出るのもあれだ。
だから当日まで俺は半ば暇人なのだが……。
「た、大変です! 紫乃さま!」
と、廊下を土御門の術師が走って行くのがふと見える。
一体何があったのか。
暇が故の野次馬根性ではないが、ちょっと気になったので追いかける。
そしてその術師が紫乃を見つけると、彼女に向かって言った。
「紫乃さま! 街中に妖魔どもが……!!」
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