第367話 予言
「では、永遠の若返りの実現は今のお前には難しいと言うことか」
重蔵が顎に手を当てながら尋ねる。
十五歳がするには貫禄のある仕草だが、やはり慣れているからか似合っているな。
俺はそんな彼に答える。
「時間をかければ無理ではない。たとえば、お前に仙気を注ぐ、ということを数日に一回やり続ければな」
「なぜそれで可能になる?」
「お前であれば、そのうち仙気を感じ取れるようになるだろうからな。そして、そうなれば、仙人でなくとも、仙気を僅かにでも操ることが可能になるはずだ。そうなれば、あとはこっちのものだ。そのまま仙気を自らのものとし、自らの真気と同化させれば、蘭や椛と同じ状態になる。そこでさっきの術を施せば、永遠の若返りとなるだろう」
理論的にはそれで可能だ。
しかし、これが誰にでも出来る手法かと言われると微妙だな。
少なくとも、相当な才能が必要になる。
重蔵なら出来る可能性は高い。
また、景子や慎司でも出来るだろう。
あとは咲耶や龍輝か。
最後に俺の妹の美智。
この辺りのレベルの才能がないと、難しい。
重蔵は俺の言葉に頷いて、
「やろうとしたら、どれくらいの期間がかかると思う?」
と尋ねる。
俺は答えた。
「それはお前の才能次第だが……十年では厳しいだろうな。二十年はかからないと思う」
これは割と客観的な感覚だ。
本来、仙気を感じ取るのは難しい。
仙界に赴き、仙人の補助を得ればまた違うが。
あの世界は仙気が豊富だからだ。
本来、自然の気である仙気であるが、あの世界には強大な仙人が大量に住んでいる。
それが故に仙気の気配が強いのだ。
だからあそこで修行するなら、重蔵でももっとずっと早く仙気を感じ取れるようになるだろう。
だが、この世界ではな……。
「十年以上、二十年未満か……ふむ。それならばまだ死なないな。挑戦してみる価値はありそうだ」
「永遠の若返りを望むのか?」
「というより、仙界に連れてってくれるかもしれないのだろう? そこに剣仙がいるのであれば、稽古をつけてもらいたくてな……そのためには永い命が必要だろうと言うだけだ。絶対に死にたくないとか、不老不死になりたいとか、そういう欲からではないぞ」
「だろうな。ま、挑戦するなら応援するよ。流石に数日に一回、四大家の当主を訪ねるというのも難しそうだが……」
なんとかするしかないか?
うーん。
そう思っていると、
「いや。お前は今回のこれで、それなりに名前が知れ渡ると思うがな」
「若返りでか? 言いふらす気はあまり無いんだが」
「そっちではない。大天狗の討伐だよ。お前はあれを直接倒すつもりだろう。いや、わしにその気がないというわけではないが、どうなるかは分からないと思っている。だが、お前にはそういった不安は感じないのでな」
「あぁ、そっちか。確かに……どうなんだろうな。仮に俺が勲功一番を持っていったとしても、ここは呪術師協会のナワバリだ。別に手柄を思い切り主張する気はないし、なんなら呪術師協会が主導して倒したと発表してもらって構わないと考えているんだが」
あまり注目されすぎても面倒臭いと言うのもある。
しかし重蔵は首を横に振って答えた。
「それは無理というものだ。まぁ、一般の術士に対してはそれで通すかもしれないが、ある程度以上の家のものなら、正確な情報を得るだろう。お前の名前を知らぬ名家の当主は、おそらく一人もいなくなる。予言しておくぞ」
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