第359話 策

「……いや、呪術にもしっかりとそういったものがあるよ。というか、むしろ気術よりも妖気に関する術は豊富だね」


 椛がそう答える。

 これには咲耶が感心したように嘆息し、


「そうなのですか?」


 と尋ねた。

 椛は少し目を瞑ってから、言う。


「あぁ。呪術は気術よりも一歩、闇に踏み込んで術を扱う。リスクについても多めに取る。そして妖魔に対する態度も、あくまでも苛烈な気術士より、むしろ融和的だ。つまりは、妖気を断つというより、利用しようという方向に流れることも多いのさ」


「妖気を利用、ですか」


「あぁ。我々は真気を利用して様々な現象を起こしてるんだ。妖気を使ってそれを実現していけないことはないだろう? そもそも聖獣というのは結局のところ、妖魔さ。彼らに力を借りることがあるのなら、その辺の人間に敵対的な妖魔を捕まえて、電池よろしく使ったりしても問題ないと思わないかい?」


 この椛の話について、俺は合理的な話だな、と思う。

 けれども一般的な気術士であれば、そうは考えないだろう。

 妖魔とはあくまでも滅ぼさなければならないもの。

 その力も含めて、全てこの世から消し去るべきだと考える。

 聖獣についてすらも、この原則に忠実な連中は滅ぼすべきだと主張するからな。

 そういう意味では現代の気術士は割と柔軟になってきてはいるのだが、呪術師に比べると皆、過激よりと言えるというわけだ。

 咲耶はこの点どうかというと……。


「……確かに、その通りですね」


 そう答えた。

 これに椛は少し眉を上げて、


「はて、気術士にしては意外な答えだね」


 と言った。

 咲耶は、


「私は……気術士としてはおそらく、異端寄りですから、一般的な気術士の意見とは言えませんが……」


 そう言う。


「北御門の後継が、またどうして」


「それは……まぁ、色々あるのです」


 咲耶は言葉を濁すが、俺の方に視線を向けたので、椛にも意味が理解できたようだ。


「なるほど、そういう影響か……いや。だったら話が早いね。ま、そういうわけで、呪術師は妖気についての扱いは割と詳しいわけさ。だからその力を減衰する術も、多い。あんたの意見は非常に参考になったよ、咲耶殿」


「いえ……」


 それから椛は、龍輝にも尋ねる。


「あんたはどうだい、龍輝殿」


「私としては、まず北御門の応援をうまく使われた方がいいのではないかと」


「あぁ、そういえば来るって話だったね。あんたたち以外にも」


「私たちはあくまでも、先遣隊ですから。おそらくは、それなりの戦力を送ってくるはずです。北御門の十八番である結界術も最近はかなり発展していますので、京都に対する被害も最低限に抑えることも出来るかもしれません」


「そうか……封印術系も強いからね、北御門は。そういう意味でも期待できるか……」


「加えて東雲家の方々もいらっしゃるかと」


「東雲が? あの脳筋たちがきてくれるのかい」


 これは離してなかったことだが、重蔵は京都の話を聞いた時に行きたいみたいなことを言っていたからな。

 俺たちが出発する時にも、間に合えば行くという話をしていた。

 今の封印の状況から見るに、十分到着に間に合うのではないだろうか。


 ******


後書きです。

少し遅れて申し訳ないです。

すっかり予約投稿忘れてました。

ついでですが、星が7000を超えてました。

いつもありがとうございます!

どうぞこれからもよろしくお願いします。

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