第353話 若返りの理由
椛の話を聞きながら、なるほど、と思うと同時にそういうことなら若返りが出来る人物は限定されるのか、と思った。
仙気は確かに不老長命を実現することが出来る力だ。
厳密にいうなら仙核を形成することが出来れば、結果的にそういうことになるというのに近い。
自然との同化が可能になることから、老化ということが起こらなくなるからだ。
それを考えると……やはり椛の若返りは、仙気を元々持っていたがゆえ、というのは納得が出来る。
しかし……。
「椛様が仙気を持っていることは理解したのですが、蘭様も椛様と同様に仙気を?」
その問題がある。
まぁ様々な実践をするのが呪術師の常、ということであるのならば、蘭も同じようなことをしていても納得はあるか。
そんなことを考えつつの質問に椛は答える。
「いや、あの子の仙気は、おそらく私から流れたものだろうね。私の子に、そして孫であるあの子に、ということさ」
「仙気は親から子に受け継がれるのですか……?」
「それはよく分からない。ただ、そう考えた方が理解できるからね。それに私の子が生まれた時も、蘭が生まれた時も、仙気が僅かに宿っていることは感じられたよ。二人とも、私のように仙気を感じ取れはしないようだが……それくらい僅かだったようだね」
「なるほど……ん? そうなると紫乃にも……?」
「いや、あの子には全く仙気はないみたいだ。多分、蘭から流れるほどの量がなかったんだと思うよ。私から蘭までで、もう何十分の一になっているようだしね」
確かに、言われて改めて観察してみるに、椛には僅かに仙気が感じられる。
蘭からは何も感じないほどだったが、それでも椛には感じられる程度はあったということなのだろう。
そして紫乃にはゼロ、と。
このことを前提に若返りについて考えてみると、何か朧げながらに納得できるところがあるな。
「そうですか……紫乃に若返りが生じなかったのは、それが故、と考えるとこの現象の理由も理解できますね」
「仙気の量が問題なんだろうね。私が一番多く持っているから、最も若返ったわけだ。蘭はそういう意味だとちょうどいいくらいの量だったのかもね。ま、それでもどういう風に作用してこうなったのかまでは分からないが」
「そうですね……他の、仙気を全く持っていない人物に試せば、はっきりしますが」
それで若返ることなく、真気の器だけ少し大きくなり、身体の状態が回復する、で終われば推測の正しさがある程度証明される。
一人ではなく複数人にやった方がいいだろうが。
これには椛も頷いて、
「やった方がいいだろうね。結果、問題なければ真気の譲渡も予定通りやってもらえると大変ありがたい。もしも誰も彼も若返るようなら、色々と考えなければならなくなるだろう」
「それは……そうですね」
そして最後に、椛は忠告するように言った。
「もう言われてるかもしれないが、若返りの力など、誰もが欲しがるものだ。そんなことができるということなど、公言してはならないよ、武尊様。私も蘭もこの件については口を噤むことを誓おう」
「ありがたく……」
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