第344話 若返りの秘術
まぁとりあえず、出来ることはしようか。
俺としては大妖の封印が解けて戦うのが最終的な目標ではあるのだが、それを可能な限り後回しに出来るというのなら、それならそれでも構わない。
温羅の話によれば、奴と同格の存在は複数いるのは確実なわけで、他がどこに封じられているのかを探す時間にも当てられる。
というか、大体当てはあるかな。
大妖が封じられている、と言われている土地はそれなりに有名だ。
京都とて同じである。
ただ、厳密に詳しい場所は外部には公開されていないから、現地の術士たちの協力を得る必要があるが。
京都においては土御門家が助力を求めているわけで、封印地を教えてもらうことはおそらく出来るはずだ。
もし今回、封印の維持が成功して、その後何かあったとしても、現地にすぐに駆けつけることが可能なのであれば、それでいいのだ。
そこまで考えて、俺は言う。
もちろん、咲耶の方をチラチラ見ながらだが。
あくまでもこの交渉というか、話し合いの北御門側の代表は咲耶だからな。
俺は分家の人間。
許嫁であっても、立場が違う。
「そうですね……私が何をするかは北御門が最終的に決めることですが、少なくとも真気の譲渡は可能です」
これについては咲耶も、
「元々それについて提案するためにここに来たわけですから、そのことについては問題なく、ご協力させていただきたいと考えています」
と認める。
それに対して蘭は、
「この若返りの秘術は施していただけへんのどすか?」
と尋ねてくる。
当然の疑問だが、これについては俺も断言できないところなので正直に言う。
「先ほども申し上げましたが、蘭様のその状態は、私にとっても予想外のことでした。どのような仕組みによって若返ったのか、それがまだ分かりませんので、同じことをしたところで、他の方にそのような効果があるのかは……」
「確かに道理どすなぁ。ほんでもおんなじことしてほしい言うたらどうどす?」
これには咲耶が答える。
「危険性が全くない、とは言えないものを、ギリギリのところで封印を維持されている方に施すのは少しばかりまずい、と考えます」
「それでどないかなっても、土御門としては北御門に責任を問うことはあらへんのどすけど」
「それでもです。責任の有無ではなく、京都に住む方々の安寧のために」
確かに、それでまずいことになって、封印の解放が早まったりしたらそれでどれだけの数の一般市民が死傷するのか。
そのための引き金を消極的にでも引くことになるのはまずいな。
これには流石に蘭も一理あると認めたのか、
「少しばかり前のめりになりすぎたなぁ。京都の外の方から京都のこと言われるとは思わしまへんどした。若返りについては、無理に、とは言うのんはやめときまひょ。どすけど、真気の譲渡はぜひおたのもうします」
「それはもちろん」
「ちなみにどすけど、一日あたり、どの程度の人数に施せるのん」
ここからは事務的な話だな。
この辺りについては咲耶では正確に答えられないので、俺が口をひらく。
「そうですね……蘭様ほどの真気量でしたら、一日に十人くらいは問題ありません。紫乃様くらいでしたら、百人でも大丈夫です」
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