第332話 京都へ向かう
「呪術師協会に助力ねぇ……受け入れてくれるもんかね?」
龍輝が新幹線の座席で駅弁を食べながらそう言った。
「大丈夫じゃないか? っていうか、美智様が直接向こうに連絡入れてくれてるんだし、行って断られるみたいなことはないだろ」
龍輝の隣の席に座る俺も同じように食事しながら答える。
それにしても、大妖退治に行くのに普通に新幹線で向かっているのはなんか変な感じだ。
じゃあ他に何で行くのかと言われると困るけれど。
澪の背中に乗っていくとかもあるが、呪術師協会は同じ気術士組織とはいえ、四大家と仲がいいというわけではないからな。
むしろ関東関西でのバチバチ感がここにもある。
かといって今の時代、ドンパチやるような間柄でもないが。
歴史上ではぶつかったことも何度かあったとは言うが、だいたい痛み分けで終わっている。
ただ、今直接ぶつかればおそらく四大家の方が勝つだろうな。
なんと言っても、東京が首都になったことで四大家はそれまでとは比較にならないほどに栄えたから。
江戸時代からも差は広がっていたというが……具体的にどの程度だったのかはもはや歴史書の中の出来事なのでなんとも言えないところだが。
「お祖母様のお話によると、向こうの感触も悪くないようだったようですよ」
咲耶がそう呟いたので、俺は尋ねる。
「そうなのか? あんまり四大家と呪術師協会は仲がよくないイメージしかないんだが」
「仲は確かに良くはないのですが、今の時代、喧嘩しても仕方がないのはお互いわかっていますからね。それでも縄張り意識みたいなものはしっかり残っているので……それだけに、四大家が呪術師協会の窮状に支援を申し出たことは驚きと喜びをもって迎えられたらしいです。それほどに状況は切迫しているということかもしれませんが……」
「そういうことなら、向こうにいって宿に困るということはなさそうで安心したよ」
「困っても宿くらいなんとでもなりますよ。うちの系列のホテルだって普通にあるんですから」
軽く言ったが、確かにそれは事実だ。
北御門家は一般企業も普通に経営しているので、全国的に展開しているホテルグループもしっかりある。
ただ、その土地の術士と対立していると、流石に安心して眠れないだろう。
たとえ襲いかかってきたとしても跳ね除ける自信があったとしてもだ。
「まぁ……ともかくだ。俺たちを今回、泊めてくれるのは確か、
「ええ、平安から続くと言われる呪術師の名家ですね。北御門とも関係があると言われていますが……その辺りの歴史ははっきりとは残っていません。しかし名前が似ていることから考えても、おそらくは本当のことなのでしょう」
「それもあって受け入れてくれたのかもしれないな」
俺がそう言うと、龍輝が、
「そのこと自体はありがたい話だが、新幹線でのんびり向かっても大丈夫なのかね? 封印が解ける間近なんだろう?」
と現実的な意見を言った。
「まぁな……ただ、今日明日解けるって話でもないようだからな。猶予は一月もないらしいが、まぁそのくらいだ」
「一月か……長いのか短いのか。いや、確実に解けるっていうなら、準備するにも短いか? 解けたら倒すしかないもんな。封印でもいいが……そんな強力な封印術を使える現代の術師なんてそうそういねぇ」
「そういうことだ」
俺たちがそんな風に話をしていると、ガラガラと車内販売車が通りがかり、
「む、お姉さん! そのポテチを三つ! あとお茶もくれ!」
と今まで黙って一心不乱に駅弁を三つ食べていた澪がそう言った。
「……なんて気楽なやつなんだ」
龍輝が思わずそう呟く。
そう思わずにはいられなかったのだろう。
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