第313話 発明
「いやはや、ほら、入って入って」
慌ただしい様子でそう勧めてきたのは、白衣を身に纏った邪術士……
その後ろから、私──北御門咲耶はその部屋に入る。
武尊さまと共に入った巨大なフロア、その中にはいくつかの区切られた区画があり、そこには完全に密閉された部屋が複数存在した。
ここまで来る道すがら、紅花から聞く限り、白衣組は主にそういった部屋で作業していることが多く、そしてなぜ密閉された部屋で行うかといえば、そこから何かが漏れ出すと危険だからだ、という話だった。
もしもの時は部屋ごと消し飛ばすのだという。
しかも中にいる研究員丸ごと、というのだから覚悟の決まり具体にはある種の尊敬が湧いた。
邪術士と言っても、その辺りはやはり気術士と近い思考をしているのだなという親近感もあった。
「失礼します……あの、私、あまり仕事の内容をまだ聞いていなくて……」
紅花に話しかけられたのは、フロアをなんとなくふらついている時だった。
「見かけない顔だが……?」
と聞かれた時には、これは倒すしかないか、と思ったのだが、すぐに、
「あぁ、そういえば新人が来ると聞いていた。君のことかい!?」
と言ってきて、いくつかの質問をしてきた。
どれも気術に関する専門的かつ難解なものだったが、普段から武尊さまや龍輝と術具作りを研究してきたことから、比較的答えやすいものばかりだった。
全ての答えを聞いた紅花は、
「おぉ、まさか私とここまで対等に話せるとは……これは期待の新人が入ってきたものだね! よし、君は僕の助手としてまず手伝ってもらおう、名前は?」
と言ってきた。
流石に本名を答えるわけにはいかなかったから、
「……
と答えておいた。
適当な偽名だ。
それからこの部屋に案内されたわけだが……。
「おっと、仕事内容だったね。まぁ私たち白衣組はツナギ組の奴らよりも自由度が高い。しばらくいくつかの研究室を見学しつつ、好きに過ごして、研究したいことや手伝いたいことを見つけるのが定番だよ」
「そうなのですか……紅花さまは、どのような研究を?」
「僕かい? 僕は妖魔に関する研究全般が専門でね。最近だと《半妖魔化剤》に力を入れているよ。あれは僕の発明なんだが、まだまだ安定してなくてね……一定以下の力しか持たない気術士が摂取すると暴走してしまうのがネックなんだ……今はそれを改善しようと色々頑張っているところで……って、あぁごめん。知ってるかい? 《半妖魔化剤》」
「いえ……名前から察するに、人を半分妖魔にするというものなのは推測できますが……」
「まぁそのままだもんね。そしてまさにその通りの代物さ。だが、古くからある妖魔化とは違って、そうなっても人に戻れるのがいいところでね。ほら、昔から邪術士の中に妖魔化して手をつけられなくなって、気術士に討伐された、みたいなのよく聞くだろ? あれって妖魔になったら中身が変容して人でいられなくなるからなんだが、そこから着想を得て、中身を変えずに妖魔の
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