第311話 妖魔の制御
その外側には様々な機械的設備があり、モニターが内部の存在の状態を表していることが分かる。
そう、内部。
鉄条網に囲まれた中には、一匹の妖魔がいた。
「……これは……
俺がそう言うと、硴水は笑って、
「おう、すげぇでけぇし、妖気の量も半端じゃねぇだろ」
そう言った。
彼の言う通り、そこにいる猿鬼は通常のものとは明確に違う存在だった。
普通の猿鬼は、ニホンザルをそのまま少し大きくして、額に角をつけ、目を真っ赤に染めたような見た目をしている。
当然、普通の猿などには存在しない妖気を帯びており、動きも素早く、爪や腕を自由自在に伸縮したりも出来るほどだ。
長い時を経た個体は火炎などを噴くこともあり、油断できる妖魔ではないと言われる。
また、猿系の妖魔は賢さも人間に近いところが多く、それこそ長寿の個体は人語を操ることすらある。
とはいえ、種族全体としては、妖魔の中でも下位に属するものに過ぎない。
強さも中の下か、下の上といったところだ。
それなのに、今、俺の前にいる個体は、とてもではないが猿とは言えない、筋骨隆々の体をしていた。
通常のものは細い枝のような手足をしているのだが、こいつはまるで丸太のようですらある。
そこには太い血管も見えて、はち切れんばかりだ。
明らかに普通の状態ではない。
「……どうしてあんな……」
俺の言葉に、硴水は言う。
「そりゃ、大量の真気を注入してあるからだな。合成妖魔と一口に言っても色々ある。一番わかりやすいのは、複数の妖魔をそのまま合成することだが、これは安定性が悪いし、失敗することも多い。だから他の方法で妖魔を強力にする方法が模索されてきたんだが、これはそのうちの一つで、最も手軽なものだ。真気を注入するっていうな」
「そうすると、どうなるのですか? 人間の場合、他人の真気を注いでやっても、器を超える部分は漏れ出てしまって強くなる、みたいな現象は起きないのが普通のはずですが……」
これは実は俺が言うのは白々しいところがある。
咲耶や龍輝に昔から俺はやっているが、その器の拡張まで行っているからだ。
ただ、一般的な気術士がそれをやろうとしても、まさに俺が言った通りになるから嘘というわけでもない。
硴水は言う。
「それは確かにそうだ。だから器の方に改造を加えてある。妖魔ってのは、そういう意味じゃ強くてよ……色々いじっても耐えるんだ。人間に同じことをすれば発狂もんだが、奴らはそんなことにはならねぇ。白衣組の奴らの話によりゃ、魂のあり方が違うとかなんとか……まぁ魂なんて、奴らも大して分かってないとは思うがな」
「しかし、あんな妖魔を生み出しては危険なのでは?」
「そこのところは、頭に術具を埋め込んであってな。簡単な指示なら聞かせられるようになってる。複雑なものはまだ無理だし、あまり強い痛みを与えると暴れ回ったりするのも止められねぇから不完全だが……妖魔をある程度制御することには成功してるんだぜ。すげぇだろ」
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