第298話 方策
詳しい人とは誰か、と言ったらそれはもちろん、《壊れた歯車》の人間だった秋月京だ。
あいつはあれ以来、北御門家の技術系職員兼裏の実働部隊の一人として働いているが、極めて有能で重宝している。
俺が連れてきた関係で、結構色々と相談することもある。
特に今回のような、邪術を使った術具についてはあいつの独擅場であり、惜しげもなく情報提供してくれるので本当に拾い物だったと思う。
俺は結局、機械系はいまだに弱くて、見てもイマイチわからないことが多い。
だからあいつから気術と機械の融合について教わっているのだ。
今回の《幸運のお守り》については、中に非常に小さなものであるが、機械的なものがあり、これはと思って秋月に相談した結果、それがGPS発信機に似たもの、というかそれと同じような機能を、気術と機械との融合により実現しているものだということがわかった。
米粒ほどの大きさで、普通ならそんなサイズはまだ無理だろうが、気術を使えば可能だ。
特に空間系の気術は上手く使えば大きさというか、物理的な体積について考えなければならない問題のいくつかを無視することが可能だ。
それを実際に実現しているのが、邪術士たち……つまり、今回の《幸運のお守り》には、奴らが関わっている可能性が高い。
「GPS発信機……じゃあ本当にこれを取りに来るのね」
会長が机の上においてある箱の中に無造作に投げ込まれている、数十の《幸運のお守り》を見ながらそう呟いた。
つい先日までは五、六個しか在庫はなかったが、咲耶の呼びかけにより大量に集まったのだ。
これでも一部だというのだから、相当蔓延していると考えるべきだろう。
そもそも、少し調べてみると、うちの学校の人間だけでなく、普通に生活している一般人たちにも広がりつつあるようだし。
小さいとはいえ、これだけの術具を大量生産し、大量配布することができるのはそれなりの規模を持つ組織だけだ。
そしてそういう集団であれば、いくらでも人を出せると考えるべきでだろう。
回収要因も言わずもがなだ。
だから俺は頷いて答える。
「間違いなくそうなるでしょう」
「でもここは、気術士の養成学校よ。しかも、気術士なら知らぬ者がいない有名なところ。理事には四大家が名前を連ねてる。まさかここに直接来るなんてことは……」
「四大家と一戦交えるつもりだったら中々難しいでしょうけど、忍び込んでお守りだけ持っていくだけならば、それほど難しいことではないと考える可能性が高いです。邪術士はその性質上、隠密系に強いですから」
「一般的な気術士はそれほど身を隠す必要がないから、隠密には長けていない、か。でも妖魔もそういうのには長けてるから看破系は十分……」
「前線に出る気術士ならそうでしょうけど、所詮ここは学校ですからね。生徒には難しいでしょうし、先生方もそれほど数がいるというわけではないので……」
「どうしたらいいと思う?」
「色々方法はあると思いますよ。一番簡単なのは、四大家、特に理事長に相談して人を出してもらうことでしょうが……」
「……そうね、それが無難ね」
「おや、自分たちの、生徒会の手でなんとかしようとか言わないのですか?」
成績にこだわってる節がある会長なので、そう言うような気がしていた。
しかし会長は首を横に振って、
「まずい大事にしなければならないのは、生徒の安全だからね。相談した上で、少し警護に参加・協力させてもらえないか、くらいのことを言うくらいにしておくわ」
「懸命な判断だと思いますよ、会長」
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