第297話 術具の正体
結果として、咲耶のクラスにおいては《幸福のお守り》は完全に一掃された。
それどころか、自主的に《幸福のお守り》を提出までさせたらしい。
それでいて誰にも恨まれていないどころか、むしろ頼られているらしいので咲耶の人身掌握術はどうなっているのかと思う。
ちなみに、気術の類は一切使っていないそうだ。
まぁ気術を使えばそれくらいの思考誘導はやろうと思えば出来てしまうからな……。
「それで、《幸福のお守り》を調べてなんか分かったの?」
次の日、また生徒会室に来ると、会長からそう言われた。
俺はそれに頷いて答える。
「ええ、大まかなことは」
「大まか? そんなに複雑な術具だったの? って、術具の構造を調べられない私が言ってもあれなんだけど」
「あぁ、そういうことじゃなくて……この《幸福のお守り》自体については、ほぼ完璧に分かったんですよ」
問題はそこにはないのだ。
俺の言葉に会長は首を傾げる。
「どういうこと?」
「まず、この《幸福のお守り》なんですけど、これ自体は大した力がないと言っていたじゃないですか」
「ええ、せいぜい壊しにくい、真気を吸収する、くらいでね。あとは……もしかしたら何か不運を招くかもしれない? そんなところでしょうという話だったわね」
「そうです。ただ、実際にはこれは、これだけで効果を発揮するものじゃなく、これをアンテナとして、どこかから力を送ってくるような機能がありました」
「アンテナ……遠隔で力を? そうするとどうなるの」
「まず、不運を招く機能が強化されます」
「……危険ね」
「そう危険なんですけど、これの巧妙なところは、持ってる本人は不運にならないということなんですよね」
「じゃあ誰が不運に?」
「周りにいる人です」
「え?」
「たとえば、俺がこれを持っている時に力が送られてきて、これの機能が強化されると……会長や咲耶が不運に見舞われます。ですけど、持ってる本人には全くそんなことが起こらない」
「なんでそんな効果を? 意味があるとは思えないわ」
「ところが、意味があるんです。不運に陥らせることで、縁を繋ぎ、そしてその相手から真気を効率よく吸収するんですよ、これ」
「あぁ、そのために真気を吸収する力があったというわけ。でもそのあとは?」
「俺だったらこれに真気をどこかに送り出す機能をつける……んですけど、実際にはついてませんでしたね。だから多分どこかのタイミングでこれを回収するつもりなんだと思います」
「回収……どうやって持ってる人を判別するのかしら?」
「それなんですが、俺にはちょっと分からなかったので、詳しい人に相談したんです。そうしたら分かりました」
「それは?」
「GPS発信機のような機能があるということです」
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