第296話 解決法
「没収ですか……危険な術具とはいえ、他人のものを没収してたら揉めませんか?」
俺が尋ねると、会長も難しい顔で答える。
「揉めるわよ。でも、だからと言って持たせておくのもまずいでしょう?」
「それはそうでしょうけど……」
「だから本来、一番いいのは、術具としての機能の破壊、とかなんでしょうけど……これ丈夫なのよね」
「そうなんですか?」
「ちょっと見てて」
そう言って会長は懐からもう一つ、《幸福のお守り》を取り出して、机の上に置いた。
そして、真気を練り込み、バチバチとした紫色の雷を手元に生み出す。
「……はぁっ!!」
その雷は《幸福のお守り》に命中し……そして消えてしまった。
《幸福のお守り》に特に変化はない。
雷状のものをぶつけたのだから、焦げるとかそういうことがあっても良さそうに思えるが、今、会長が使ったのは真気や妖気などを払う《気祓い》と呼ばれる術だ。
浄化とは違って完全消滅させるわけではなく、それに近い効果を、その場の気を乱すことで実現するもので、難易度は低い。
ただデメリットとして、大量の気には効果がないし、気を乱してもすぐに元通りになってしまったりする可能性が高い。
やはり妖気などを払うには、浄化が一番なのだった。
けれど、こういった人工的に作られた道具の部分的破壊には重宝する。
術具はなんだかんだ言って、複雑な構成の道具だからな。
一度でもバランスを崩せば、元通りに戻ることはまず、ない。
ちゃんと修理しない限りは、だ。
だから今ので《幸福のお守り》も壊れた……はずなのだが。
「……ほら、見て」
会長が手渡してきた《幸福のお守り》を見ると、
「……おや、これは壊れていませんね。むしろ……真気に満ちている?」
「そうなのよ。これ、当てられた真気を分解、吸収してしまうみたいなの。だからこれくらいじゃ壊せなくてね。もちろん、普通に気術使って燃やしたり破壊すれば壊れるわよ。でもそれじゃあ結局、没収して壊すしかないってことにしかならないから……」
「なるほど、そういうことでしたか……」
確かにこれは面倒臭いな。
《幸福のお守り》なんて呼ばれているのだから、生徒会が没収しようとしたところでみんな素直に差し出すわけがない。
それどころか渡したら帰ってこないとわかっていれば、隠される可能性が高いだろう。
別にお守りなんだし、そもそも見える場所に持っておく必要もない。
そうなってしまうとまずい。
気術で払おうにも、《気祓い》は通用しないし、どうやっても物理的に手に入れるしかないとなれば……。
「思った以上に方法が浮かびませんね」
「そうなのよ……せいぜい、アナウンスするくらいね」
「どういう?」
「《幸福のお守り》の持ち込みは禁止です、とか?」
「誰も聞きませんね……」
「そうよね……」
二人でため息を吐いたところで、咲耶が、
「うちのクラスの生徒には、私から言っておきましょう」
と言った。
「なんて言うの?」
会長の質問に咲耶は答える。
「それとなく、《幸福のお守り》の評判を下げるようなことを」
「たとえば?」
「……それは、内緒です。ですが私が言えば確実に聞くでしょう。それくらいの立場が、私にはあります」
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