第294話 結果

 《壊れた歯車》を壊滅後、尋問やら書類などの資料の精査やらを一週間ほどする羽目になった。

 その間はもちろん、学校は休んでいたが、仕事だ。

 しかも、高校の理事長な美智なわけで、何の問題もなく公休が認められている。

 ちなみに同じクラスの一般生徒たちは、俺や咲耶の不在には気づかないように認識阻害がなされている。

 思考誘導に近い技術であるが、思想そのものを変えるとかそういう感じではないため一応、問題はない。

 それでも使い方次第ではかなり危険な技術なのだが、それを言い始めると一般人にとっては気術が超危険技術だから今更な話だな。

 まぁ気術士関係については別に法律が存在するわけでもなし、慣習とかそれなりに力のある家や団体が掟を他の気術士たちに順守させるくらいのことしかやりようがない。

 結果、そこからあぶれた、もしくはそもそもそういう縛られ方をしたくないと考える気術士たちが邪術士に落ちるわけで、彼らにもそれなりの理はある。

 結局勢力争いなんだよな。

 邪術士の方が強ければ、彼らこそがスタンダードになるだけの話だ。


「あまり情報は得られないかも、と思いましたが、思いの外いろいろなことが分かりましたね」


 咲耶がそう言ったので、俺は頷く。


「あぁ。《闇天会》についてはそこまで詳しいことは分からなかったが……大まかな組織としての概要は分かったな。最高幹部会である《闇天衆》が組織の頭で、そこに収まるのは有力な邪術士組織のトップたち。直属の部隊や兵隊は多くを持たない……」


「《闇天会》に所属する具体的な組織名や個人の名前などの名簿は見つかりませんでしたが、《壊れた歯車》と関連する邪術士組織の名称はかなり大量に分かりましたから、今後、邪術士組織の壊滅及び情報収集は進むでしょう。向こうも黙って見ていることはないでしょうし、そういう中で、《闇天会》との接触が出てくるかもしれません」


「そうだろうな。俺としてはあの鬼の男のようなのには出来る限り会いたくないが……」


 あいつは強そうだった。

 それに、気術士の盲点をつくような知識を色々と持ってそうだった。

 まぁそういう盲点を持ってしまっている俺に問題があるわけで、もっと修行しろという話なのだが。

 通常の妖魔や気術士相手にするような考えが強過ぎたな。

 裏技的なのに俺は弱いのだろう。

 その辺りの知識は……秋月あたりに色々聞いてみるかな。

 あいつは、西洋にしか存在しない炎霊をまさに裏技的手法で日本に連れてきて存在させるということまでやっていたやつだ。

 結局、出力的問題で俺にとっては無意味な攻撃に終わったが、面白い発想のやり方であり、そしてそれを実現させている時点でかなりの研究をしたのは間違いない。

 他にも色々と聞いてみれば、面白い知識がそれなりに出てくるだろう。

 場合によってはあいつに俺も色々教えてやってもいい。

 秋月家のお取りつぶしに関して、西園寺を恨んでいるらしいし、気持ち的にも共感が出来るから悪くないな。

 俺に不得意な技術について代わりに研究してもらってもいいし。

 本当に拾い物だったな、と思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る