第286話 提案
「ところで、京から得られた情報なのだけど」
美智が続けたので咲耶が尋ねる。
「ええ、各放送局施設に存在する《
これに美智は頷いて、
「それもある……けれど、それ以外にも色々教えてくれたのよ」
「それ以外……となると、邪術士たちそのもの、についてでしょうか?」
「その通りよ。ちなみに、放送局施設やタレントたちについては既に全て対応済みね。今後、電波を通じて邪術が国民にかけられる、ということはありえないからそれは安心して」
「良かったです……」
本当にそうだな。
実行されたらとんでもないことになっていたのは間違いない話だから。
それにしても、あの秋月は本当に協力的なのだな。
邪術士の情報など漏らしたら、それこそ口封じが山ほど来るだろうに。
ただ、流石に向こうも四大家に寝返っている、とはまだ考えていないかもしれない。
一応、あのスタジオには俺と奴が戦った痕跡が残っているし、また、秋月が死んだ、と思わせるために色々と痕跡を残しておいたから。
会社というか、事務所の方も勿論既に辞めている。
涼子という女優の迎えのマネージャーを呼んだ後、行方不明になっている、というのが表向きの奴の最後の足取りになる。
まぁ、そうそうバレないだろうとは思う。
絶対とは言い切れないけどな。
「それで、邪術士の情報とは?」
俺が尋ねると美智は答える。
「まず《闇天会》についてね。所属組織の名称、メンバーをいくつか」
「秋月はそれを知っていたのですか」
最近参加した、とは言っていたが、基本的に《闇天会》というのは邪術士組織でも本当にあるのかどうかすらはっきりとしないような組織だ。
何かしらの集まりがあるとしても、それこそそれぞれの参加組織の長だけ、とかそういう感じでやっているのでは無いかと思っていたが……。
「京はあれで幹部クラスだったようだから。いつも、とは言わないまでも、《壊れた歯車》の総帥がどうしても参加できないときなどは代理で参加していたとの事よ」
「そうなのですか……」
本当だとしたら随分と都合のいい人間を捕獲できたものだな、と思う。
幹部クラスなのは強さから考えると納得感はあるけどな。
「邪術士は人手不足と言ってたらしいけど、それも本当のようでね。特にそういった組織運営をまともにできる人材というのは少ないみたい。単純な強さという意味でなら結構な人材も多いようだけど……結果として京がそういった役割を《壊れた歯車》では担っていた、ということよ」
「だとすれば、あいつが抜けた穴は大きそうですね」
「多分ね……だから、攻めるなら今かもしれないわ」
「攻める?」
「ええ、邪術士組織《壊れた歯車》、そのアジトにね。場所については京が教えてくれたし」
「大丈夫なのでしょうか? 罠の可能性も……」
「京自信が嘘をついてないことは確認しているけど、それでも罠というか、すでに全て気づかれていて危険、と言う可能性はあるわね。でも、ここで攻めなければいつ攻めるのか、という話でもある」
「それは確かに……」
「基本的には四大家、北御門と東雲の合同で攻めるという話が進んでいるわ。そこで提案なんだけど、二人とも参加しないかしら?」
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