第280話 戦闘
「……そうだな、興味は湧いた」
《闇天会》に、電波を利用した新しい邪術系の技術、それに放送局に広く手を出していること……。
いずれも結構なものだな。
流石に俺一人の手にあまる。
人海戦術が必要な問題だ。
『では、《壊れた歯車》に所属を? そうしていただけるなら、総帥への渡りはつけてやれますが……』
本当に人材不足なのか何なのか、リクルートに死ぬほど熱心な上に手厚い。
いくら邪術士組織だからって、そうそうトップに会わせられないだろうに、そうしてくれるとまで行っているのだから。
邪術士側じゃなきゃ、結構気のいいやつだったんじゃないか、こいつ。
そんな気すらする。
けれど……。
「……悪いな。俺は邪術士にはならないよ」
そろそろ抜ける情報も底をついてきたようだしな。
そもそも、ベラベラ喋ってはいるものの、肝心な部分については加入を確約しないと話さないあたり、それなりの危機管理意識はありそうだ。
これ以上は無理だと考えるべきだな。
『……そうですか。非常に残念です……本当に』
真実残念そうなその声色に、俺も少しばかり共感を覚えて言う。
「俺も残念だよ。あんたはそっち側じゃなけりゃ、いい付き合いができたかもしれない」
『私もそう思いますよ……しかし、もはや敵味方。仕方ありません……決着をつけさせてもらいましょう!!』
そう叫んだ直後、男の気配が増大した。
今まで術具で隠されていた男の真気が、その隠蔽を解いたからだ。
これは……意外に悪くないな。
結構な大きさ、密度を持っている。
なるほど、これならかなり厳重に隠蔽しなければ簡単に気術士であるとバレてしまうだろうな。
そして自信がある理由も理解できた。
これだけの力があるのなら、一般的な高校生気術士どころか、婆娑羅会でも中堅くらいまでなら普通に相手を出来る。
人手不足という割には、いい人材が揃ってはいそうだ……。
「望むところだ」
そして、男からの攻撃が再開された。
今までの全方向からの短刀射出はむしろ手加減に近かったらしい。
今度は周囲に炎の玉が出現し、俺に放たれる。
『
屋内で炎系の術を使うのは制御の面でも中々に難しいが、これは十分に使いこなしているな……。
威力も申し分ない。
数も相当なものだ……。
だが、俺はもっと強力な使い手を知っている。
「
大量の水を呼び出し、それを踊り狂うように暴れ回る炎の玉へとぶつけると、じゅっ、と音を立てて消えていく。
それを見て、男は、
『なっ……貴方は……』
と声色を変えた。
「どうした? これで終わりか?」
煽るようにそう言うが、男は、
『いえ、まだまだですよ……ですが、少しばかり貴方を見誤っていたようですね。これは、簡単に御せるような相手ではなさそうだ……』
「手加減してくれていいんだぞ? 俺はしないけどな」
とか言いながら、殺すつもりもないので出力的には手を抜くが。
捕まえて情報をもっと抜きたい。
もしくは、マーキングして泳がせるか……まぁ倒してから考えればいい。
『手加減できない相手だと言うことがよく分かりました。本気で行きますよ……《来たれ、炎霊!!》」
「……む、これは……」
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