第273話 調査
そういうわけで、美智への報告をするとすぐに対策を取ると言ってくれた。
具体的には選抜された人員をスタジオや関連設備に送るとの話だった。
芸能関係というか、テレビ局関連設備にそんなことできるのか、と思ったが、次にスタジオに行ったら早速、美智から派遣された気術士の集団に出会した。
「今日はスタジオ内設備等の点検があるそうで、この方々の姿を見かけると思いますが、そういうことなので不審者ではないですから、安心しておいてください」
アシスタントプロデューサーと思しき人が演者にそう言って回っていて、この方々、の顔を見るとそのうちの一人にうちの父上と母上がいるのを発見する。
あ、という表情を向こうもしたが、すぐに無表情に戻った。
美智が誰を派遣する、という点について聞いた俺に少し楽しそうにしていたが、なるほどこういうことか、と納得した。
休憩時間に弁当を食べるべくスタジオ内をウロウロしていると、
「……おっと!」
と、腕を掴まれて引き込まれる。
避けることも出来たが、知っている気配というか、真気だったのでそうする必要はないと分かっていた。
普通に相対して話そうと思っていたが、向こうからするとちょっと引っ込める場所で、という感覚だったのだろう。
「……武尊。美智様から指示を受けたが、ここを調査しているというのはお前だったのか」
と、そこにいる人物は言った。
誰かといえば、父上である。
格好はスーツ姿だな。
さっき見た十人ほどのメンツのうち、父上と母上以外は作業着姿だったので、変装の一種なのが分かる。
まぁスーツくらい社会人なら変装というほどのこともなく普通に着るが。
父上と母上が仕事している時、大体がスーツ姿だしな。
「父上。お疲れ様です……俺は調査というほどじゃなくて、たまたま居合わせただけに近いですが……」
何となく声をかけられて、何となく調べていたら偶然行き着いた。
その程度だ。
「あぁ、経緯も聞いてはいたんだが、お前だということだけ伏せられててな。美智様の悪戯心もちょっと問題だな……」
「実務に問題がなければという判断なのでしょう。こうして現場で会えたわけですし」
「まぁそれもそうか……それで、何か新たに分かったことなどあるか?」
「特にはないですね……邪気が集まっている二人については、俺と咲耶が付いてますから、父上たちにはスタジオ内にあるだろう《
「いや、気術士の仕事など大抵がそんなものだからな。派手な戦いはむしろ少ない。お前や咲耶様が所属する婆娑羅会ではむしろそういった仕事を主体に受けているようだが、あそこは血の気が多いところだしな……」
「そうはいっても、週に一度くらいは妖魔との戦いがあるでしょう」
しかも通常の気術士には手に負えないレベルの妖魔、中級以上のようまだ。
だが父上は余裕のある表情で、
「その程度だから気楽なものさ。ま、話は分かった。《呪》の方は我々に任せておくといい。系列の他の施設も他の班が調査しているゆえな。地道にやるしかないが、こういうことは得意だ」
「ありがとうございます」
「あぁ、お前も《呪》の中心になっているだろう二人についてはしっかりと守っておいてくれ。お前と咲耶様なら心配なかろうが、もしものこともあるからな」
「肝に銘じます」
そして、父上は《呪》を探しに行ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます