第261話 報告と許可
「……芸能事務所で働きたいから休んでも単位をくれ? ええと、どういうことなのか詳しく話してほしいのだけど……」
その日はとりあえず帰宅していいということで戻った俺たちは、その足で学校に向かった。
そしてそのまま理事長室の扉を叩き、美智に許可を取らねばということでやってきた。
首を傾げる美智にかいつまんで事情を話すと……。
「なるほど。そういうこと……それなら構わないわよ。生徒でも気術士としての仕事がある場合には早退や欠席をしたとしても出席扱いになることにしてあるから。正式な依頼というわけではないみたいだけど、その問題はおそらく普通の人間には解決できなさそうだものね」
そう言った。
「そんな制度があるのですか?」
俺がそう尋ねると、美智は頷いて答える。
「ええ。そもそも、ここは気術士にとっては気術士として一人前になるための
「それは知りませんでした……」
「高森家は武尊に家の仕事のために学校を抜け出してきて欲しい、なんて言わないものね。手が足りてる、というわけではないでしょうけど、本人の好きにさせたいということなのでしょうね」
……というより、俺が好き勝手やりすぎて所在を掴めないのだろうな。
家に戻ってくると父上も母上も結構急いで帰ってきたり、素材などの補充を頼んできたりするし。
書き置きなんかも溜まっている時もあるし。
仙界に行ってる時なんか数週間いなかったりすることもザラだ。
家族には迷惑をかけているなと改めて感じざるを得ない……でもその代わり色々素材を提供しているし、仕事を手伝う時もあるので悪いことばかりじゃないはずだ……多分。
「そういえば、お祖母様。今回の依頼ですと、どうしても私の名前や顔が広く出てしまうことがあるかと思いますが……その辺りの扱いはどうなのでしょう?」
これは咲耶の質問だな。
見習いとはいえ女優についてまわるわけだから、テレビに見切れる可能性は捨てきれない。
気術士はどちらかといえば裏社会の人間になってくるから、顔などを出してしまうことは問題あるか、という確認なわけだ。
これに美智は、
「それは別に構わないわよ? やりたいんだったらアイドルになってもいいし……」
とあっけらかんと答える。
「いいのですか? お祖母様は顔も姿もあまり世間に出されないので、てっきり私は……」
「私の場合は目立つのが好きではないからね。でも気術士の中にはそれこそ、表社会で名前を知られている人間も結構いるもの。それが芸能界でのことであっても問題ないわ。ただし、気術士としての仕事をしっかりやることが条件になるけれどね。将来、咲耶は北御門を継ぐのだから」
「それはもちろんです。今回のことはあくまでも一時的な話ですから、生業にするつもりなどありませんし……」
「なら、全く問題ないでしょう。二人とも、頑張ってきて」
「はい」
「わかりました」
俺たちが頷くと、美智は微笑み、それから、
「話は少し変わるけど……」
と切り出した。
「なんですか?」
「ここのところ、邪術士の動きが活発なのは知っているわね?」
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