第251話 話がまとまる

「つまり……」


 と俺は話をまとめるために続ける。


「咲耶に何かしてもらって、体が楽になった。原因不明の気鬱のようなものに苦しんできたのに、今はそれが一切ない。それで、近しい人に同じような症状の人がいるから、その何かを出来るなら、その人にもしてほしい。ただ、普通にそう話したのでは変な人間だと思われるから、とりあえず、芸能事務所の話をして、気を引き、その人に引き合わせたかった……と、そういうことですか?」


 俺の言葉に梔子さんは頷いて、


「ええ、だいたいそんな感じね。普通、貴女たちくらいの子だったら、芸能事務所のスカウトには割と好意的についてきてくれるものだから。それに、引き起こしてもらってその子の顔を初めて見たんだけど、そうしたら凄い美少女だったから……これなら売れる、ともちょっと思ったわ……ただ、色々安易に考えていたのも事実ね。それについては申し訳なかったと思う。ごめんなさい……」


 そう言った。

 まぁ、実際周囲の人々を見るに間違ってはいない。

 これは気術士であっても同年代は似たようなものだ。

 美人や美男子に夢中になってしまうのは、別に気術士でも変わらないからな。

 俺や咲耶はそういう意味では変わっている方ではある。

 まぁ俺は今更、若いアイドルにどうこう思えないし、咲耶はそもそも人の顔に興味がないっぽいしな。

 龍輝は常識程度のことは知っているようだが。

 人それぞれだ。


「そんなにホイホイついて行くんですか? 危なくないですか?」


「正直不用心だとは思うけど……うちは別に悪徳商売とかしてる訳じゃないからね。真っ当な事務所よ」


「口ではなんとでも言えますよね」


「本当よ! って、それこそ口だけに聞こえるかもしれないけど……」


 言いながら、まぁ嘘はついていないなと分かる。

 真気の気配を見れば、その人の心のうちはある程度推し量ることは可能だからだ。

 気術士相手だと制御されているから簡単ではないが、一般人相手なら真気制御なんてまず出来ないからほとんど間違えることはない。

 咲耶は俺よりも正確に真気を見ることができるため、たどり着いた結論も同じようだ。

 視線を合わせて、頷く。

 だから俺は言った。


「すみません、いじめ過ぎましたね。別に俺たちはそこまで貴女を疑ってはいませんよ」


「え、そうなの?」


「ええ、謝ってくれましたし、ある程度ちゃんとした人のようですし……」


「ありがとう。でも……流石にさっきの話は信じられない、わよね……」


「それについてなんですが、咲耶……この子が何をしたのかは分かりませんけど、それで気が済むのでしたら協力してもいいんじゃないかなと」


「ほ、本当!?」


 バッ、と距離を詰めてきて、そう尋ねる梔子さんに、俺は、


「まぁ俺はそう思うってだけですが……咲耶はどうだ?」


 そう尋ねる。

 尋ねると言っても視線でツーカーというか、もう結論が決まっているのもわかっていたが。

 咲耶は言う。


「ええ、私も同じです。特に何か出来るとも思えませんが……出来る協力はしましょう。ただし」


「ただし……?」


「今日は遊びに来たんです。別の日でもよければ、という条件がつきます。梔子さんのお知り合いというのは、今日明日にでも死にかねない、というほどならまた話は違いますが……」


「それについては、今のところはそういう感じじゃないわね。日のよって違うの。ここ一週間くらいは、ちょっと気分が悪いくらいで」


「でしたら、また後日。名刺の電話番号にご連絡差し上げればいいですよね?」


「ええ、そうね。いつでも出るから、お願いします」


「承知しました」

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