第230話 魔改造
「器が? うーん……」
言われて見てみると、確かに元々の限界真気量を百としたら、それが百二十くらいに上がっていた。
こんなことは今まで通常の気術士相手にやったことなかったので、そういうことが起こるのかと目から鱗である。
咲耶や龍輝に対しては、修行などで彼らの真気が尽きるたびに補充したりはしていたが、こんなことは特に起こっては……いや?
もしかしたら気づかないうちに起こっていたのかもしれないな。
考えてみれば二人の真気量はもはや同年代と比べると異常と言って良いくらいにはなっている。
あれは二人の元からの才能と言うより、小さい頃から俺が無理矢理器を広げ続けてきたからと言うのもあったのかも……?
だとすれば、なんか魔改造してきたみたいで申し訳ないというか……。
いや、別にいいか。
気術士にとって持てる真気量が多いなんて一つもデメリットが無いからな。
むしろいくらでも戦えるだけのスタミナがついたようなもんだ。
「僕は割と真気少ない方なんだけど……これくらいになれば、普通レベルにはなれたみたいでありがたいんだけどね……でも、こんなことしてくれていいのかな?」
そう言う淳君に俺は首を傾げて、
「っていうと?」
と尋ねると彼は言う。
「いや、何か秘術のようなものだったんじゃないかと……あれ、違うのかい?」
「あー……」
秘術か。
まぁ真気量を増やす方法は、そういうものに入ってくるよな、確かに……。
実際は力業に過ぎないのだが。
俺が加減が全く出来なかったというアホな理由で……。
でも言い訳としては淳君の推測を採用するのはいいか。
そうせずにこういうことが出来ると言いふらされて、頼まれまくっても困る。
面倒くさいという意味でな。
そこまで考えて俺は言う。
「……そんなところだな。だからあまり言いふらさないで欲しい。放っておくと君が危険そうだから、やむなく行っただけだから」
「もちろん、分かっているよ。大体言いふらしたりなんかしたら、僕の方もややこしくなりそうだし……」
「そうなのか?」
「そうさ。君はかなり真気量が多そうだから、大して気にしてないのかもしれないけど……僕くらいの気術士なら、どうやって真気量を増やすか常に色々試してるものさ。これは大人だって同じだ。もし両親や親族にだってこんなことが知られたら、どうにか君に渡りをつけてくれって懇願されてしまうよ」
「何人かくらいなら別にいいが、あまり沢山になるとな……」
「その何人かがまた言いふらして、際限なくなる可能性がある。やめておくのが賢明だろうね……僕も命を救ってくれた君にそんな目に遭って欲しくないから墓場まで持って行くとするよ」
「そうしてもらえるとありがたいな……そうだ、お礼にまた今度、真気量増やしてやるよ。今日やるとそれこそ器が破裂するかもしれないから、十分に馴染んだのを見計らって何度かやろう。どうせなら会長くらいになるまで」
「会長って……うちの高校最強じゃないか……」
「次代の最強になろうぜ」
「それを作れるとしたら君が高校最強になると思うけど……」
「そうか? 俺はそんなものになるつもりはないからな」
高校で最強になっても仕方ない。
なるなら気術士最強だな。
そんなことを考える俺に淳君はため息を吐いて、
「君って人が分かってきた気がするよ……なるほど君なら、今回のことも解決してしまいそうだ。それで……これからどうするつもりなのか聞かせて貰ってもいいかな? 被害者としても気術士としても、知りたいんだ」
そう言ったのだった。
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